取材班による現地レポート

「同行避難」災害時に大切なペットを守るために【2】

2018.11.17

飼い主が行うペットの災害対策

災害発生時のペットの救護について、国は「同行避難」というを考えを提唱している。避難時にはぺットも一緒に連れて行くということだ。

大切なぺットも人と一緒に身の安全を確保しなければならない。そしてそれ以外にも、もしも動物だけが被災地に残されたら、健康を維持できない、過度な繁殖で公衆衛生や安全が守れないなど、様々なマイナスの影響も懸念される。こういった多くの観点から、ぺットは同行避難が原則とされる。

同行避難をスムーズに行うためには、普段からの意識と備えが大切だ。通常と大きく異なる環境に置かれても、飼い主もぺットも冷静に行動できるように、そして周囲の人たちも安全で快適に生活できるように、準備と訓練をしておきたい。

災害時に飼い主とぺットはどう行動すれば良いか、どんな備えが必要か、先ごろ行われた「松山市総合防災訓練」での様子を元に紹介しよう。

ぺットと一緒に行う避難訓練

20181028日、松山市が実施した防災と災害発生時の行動に関する訓練「松山市総合防災訓練」で、認定NPO法人えひめイヌ・ネコの会は、愛媛県獣医師会、松山市保健所とともにぺット同伴避難訓練を行った。

災害時にぺットを保護する一時預かりの演習、ぺットの怪我の応急処置など、実際に体験しながら災害時に役立つ知識を学べる多彩なプログラムで、多くの飼い主とぺットが参加した。

まず一時預かり所の受付演習では、飼い主がぺットの健康状態などのチェック書類に記入する間、ぺットたちも一緒に飼い主のそばで待機。受付後はぺットをケージの中に入れ、落ち着いて過ごせるかの訓練も行った。

おとなしく待っている犬もいれば、不安そうに吠える犬、小さく震えている犬もいる。避難所では狭いケージに入る時間が長く、飼い主が近くにいない環境に置かれるかもしれない。そんな状況をぺット自身が体験し、どんな状態になるか理解しておくことは、飼い主にとっても犬にとっても大切なことだ。

身元証明のマイクロチップ

続いて愛媛県獣医師会によるマイクロチップの説明が行われた。

▲ケースの中の小さな細長いカプセルのようなものがマイクロチップ

直径2mm、長さ12mmの小さなマイクロチップに個体識別番号が記録されており、リーダーを当てるとその番号が表示される。ぺットの首の皮膚下に専用注射器で挿入するのだが、獣医師が行うため安全で、実際に挿入体験をした犬を見ても痛みを感じている様子はなかった。吠えたりその後首を気にしたりする様子もない。

▲奥の人が手に持っているのがリーダー

マイクロチップを挿入していれば、ぺットの身元を確実に保証することができる。災害時には普段おとなしいぺットでも、パニックになって逃げ出してしまい、行方不明になることもある。マイクロチップは首輪などにつけた迷子札よりも体から離れてしまう心配が少なく、迷子になっても飼い主の元に戻ってくる可能性が高まる。リーダーは自治体や警察、全国の動物保護センターや保健所、動物病院に配備されており、迷子のぺットが誤って殺処分されてしまうような不幸を防止することもできる。世界的にも広く用いられている身元保証策だ。(詳細は動物病院・獣医師へ相談を)

ケガをしたぺットの応急処置

松山市保健所の獣医師より、ぺットの応急処置法が紹介された。

裸足で歩いているぺット達は、人よりも災害時に怪我をするリスクが高い。しかし、すぐに獣医師に診てもらえる環境にはないかもしれない。飼い主が方法を知っていればその場で応急処置ができる。

まず最初に、治療者の安全のためにぺットの口元を縛ることをすすめられた。ケガをしたぺットたちは気が立っていて敏感になっているので、治療時に牙をむくかもしれないからだ。この日は身近にあるものとしてネクタイを利用。安全で苦しくないように縛るので、この日体験した犬たちもとてもおとなしくしていた。

▲ネクタイで口元を縛る

怪我の処置は、小さな犬などの足にちょうど良い大きさの軍手の指を使って、靴下のように履かせてガムテープで補強。骨折にはアイスクリームの匙や割り箸とガムテープで添え木を作る方法も。

▲軍手の指とガムテープを使って犬の足の包帯代わりに

いずれも、治療専用の道具ではなく、身の回りにある代用品で対処できる。人への処置でも応用できる考え方だ。

ぺットのための非常持ち出し袋

会場ではぺットのための非常持ち出し品も展示された。人のための持ち出し袋と並べて、ぺットの品も避難時にすぐに携帯できるようにまとめておこう。

食べ物や水、薬、トイレ用品など人が必要とするのと同様の物の他、ワクチン接種や通院歴のある動物病院の情報などの健康管理記録、ぺットのおもちゃ、ぺットの写真も入れておくと良い。写真は、万が一ぺットとはぐれてしまった場合に探す手がかりにしたり、飼い主と一緒に写って入れば飼い主の特定にも役立つ。

ぺットの避難を考える

今回の豪雨災害では、避難の際にぺットを同行できなかった人が多いと聞く。えひめイヌ・ネコの会でも災害発生後すぐに現地にぺット用品を運んだが、避難所に動物の姿がほとんど無く、支援窓口にもぺットに関する支援依頼がなかなか来ず、何度も呼びかけを行ったという。

避難所で周囲に迷惑がかかってはいけない、あるいは人だけでも大変なのにぺットのことまで甘えられない、など遠慮する気持ちがあったようだ。

国も「同行避難」を提唱している。遠慮せずぺットは同行し、そして支援が必要なら声を上げよう。ただ、そうするためには、今回紹介したような訓練やしつけで飼い主とぺットが避難時の行動を身につけておくことが必要で、日頃から備えておかなければならないということも、しっかり意識しておこう。

避難訓練を体験して

今回は学校のグラウンドを使った大きな会場の一角にコーナーを設けて、人とぺットが集まり様々な体験や訓練が行われた。それぞれの内容も大変ためになるものだったが、それ以前に、たくさんの見知らぬ人や多くのぺットたちがいる環境に身を置くことも、ぺットと飼い主がともに体験しておくべき大切なことだと感じた。家の中や見慣れた散歩コースだけではなく、違った環境の中で過ごしたり、知らない人に体を触れれたりしても、過度に興奮したり怯えたりすることがないようにぺットを慣らしておくのも備えの一つだろう。

(えひめイヌ・ネコの会による冊子「人と犬・猫の防災」ダウンロード)

(いざという時、知っていると違う!えひめイヌ・ネコの会主催「ペット防災管理士育成講座」)

取材・撮影・文章 矢野智子

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