取材班による現地レポート

災害乗り越え、郷土芸能を守り抜く ~子ども神楽団のクラウドファンディング挑戦〜

2018.10.29

まずはこちらの動画をご覧いただきたい。

今年、設立40年を迎える大草神楽子ども研究クラブ。記念行事で神楽を披露するために、メンバーは練習に励んでいた。しかし、7月6日の西日本豪雨により、神楽の道具を保管していた倉庫は流され、練習場所の大草公民館は床上浸水。長く大切に使ってきた、高価な衣装や道具が泥に浸かり、使えなくなってしまった。

「今年の公演は無理か」という雰囲気の中、メンバーとその家族、関係者たちは「地域の伝統芸能を絶やしたくない」と奮闘。募金活動やさまざまな支援により、9月に何とか最低限の道具を揃え、神楽公演をスタートさせた。現在クラウドファンディングに挑戦し、募金活動を行いつつ、来年2月、40周年記念行事の開催を目指している。

「大草神楽子ども研究クラブ」設立前年の1978年、大草小学校(当時)の学習発表会で、児童たちが神楽を披露した。このことをきっかけに、「せっかく衣装や道具を揃えたのだから使おう」と、翌79年から同クラブの活動がスタートした。

大和町には、三原市無形民俗文化財である「大和の神楽 大草神楽保存会」があり、約250年前から伝わる豊田流備後神楽を受け継いでいる。大草神楽子ども研究クラブは、同保存会メンバーの指導を受け、大人と同じように、省略せず、妥協せず、きちんと正確に舞う。これがこのクラブの一番の特徴だ。そのぶん、練習も厳しい。子ども用にアレンジなどしていない舞いは、神楽ファンや神楽経験者、指導者たちから高く評価されている。毎年出場している広島東照宮子供神楽共演会では、「大人の真似ではない」「正しく教わっている」「肩に力が入らず見ていられる」と言われるそうだ。

現在、同クラブを指導するのは、広島県民俗無形文化財 豊栄神楽 福光社中 社人であり、大和の神楽 大草神楽保存会会員の金川顕二郎さん(41)。自身も大草神楽子ども研究クラブの元・団員。当時は小学5年生から入団が許可されていたが、金川さんは熱心さをかわれて特別に4年生で団員となった。「当時、私の周りには神楽好きな同級生が多く、卒団後も間を空けず神楽を舞う機会があったんです。そのまま保存会に入会して、子どもたちも指導しましたから、指導歴は25年以上になります」と振り返る。

「現在、団員は一人二役、三役をこなしている状況。興味を持った人は、見学だけでも来てほしい」と話す。連絡先☎090-2008-8905(金川)

金川さんは、22歳で豊栄神楽 福光社中にスカウトされた。神楽界では異例かつ、名誉なこと。保存会メンバーで当時の子ども研究クラブ指導員、故・谷本盛夫さんに送り出してもらうも、「子ども研究クラブの指導は頼む」と言われた金川さん。一週間後に谷本さんが事故で亡くなり「指導を続けることは、私の師匠の遺言になりました」と話す。違う会での指導を続けることを認めてくれた、福光社中の故・福光正明さんにも深く感謝する。

子どもたちの練習場、大草公民館

被災直後の倉庫の様子。衣装は色が抜けたり色移りしたりで、使えなくなってしまった。(画像提供:大草神楽子ども研究クラブ)

被災直後、団員や保護者たちは泥だらけになった公民館を掃除し、泥に浸かった衣装や道具などを乾かした。しかし、ほとんどが使用不可能。さらに団員2人は、災害後に神楽を続けることができなくなった。被災後、郷土芸能の復旧は何かと後回しになる。「1年休むか」「今年の公演はあきらめたほうがいいのでは」という声もあったが、金川さんは「休めば神楽は消滅する。絶対絶やしてはいけない」と、練習を再開した。「道具もない、衣装が揃うかどうか分からない。不安の中での練習は精神的にしんどかったと思います。子どもたちは、例年より心が成長したのではないでしょうか」と振り返る。

団員の保護者で後援会会長の貞守文子さんは「今までのご支援に深く感謝しています。皆さまのお気持ちに応えるために、子どもたちは一生懸命練習を重ねています」とお話された。

手前が貞守さん。保護者や地域の大人たちが裏方として支えている。

現在、同クラブのメンバーは10人。年長児から小学校6年生9人に、急きょ卒団した中学2年生が助っ人として加わり練習を重ねている。同クラブの窮地を知り、遠くは岩手や大分、浜田などの神楽団、地域の人などから寄付が寄せられた。公演に最低限必要な衣装や道具を揃えたが、一部は現在支払いを待ってもらっている状況だという。

公演先でも支援を求めて募金の樽を設置。

本郷八幡神社での奉納神楽(10月7日)。

左から貞守涼さん(小4)、花岡愛音さん(小3)、神垣佳音さん(小4)
「神様に良い舞いを捧げたい。見てくださる皆さんに喜んでもらえるよう頑張りたい」

左から岡田将希くん(小3)、部谷琉稀くん(小3)、平田光生くん(小5)
「太鼓を叩くのが好き」「大蛇が好き」「順序を間違えないよう集中して舞いたい」

部谷のどかさん(年長)
「手拍子頑張るよ」

花岡愛生くん(中・小6)
「先生に質問し練習を重ねました。皆さんからいただいたご支援は、良い神楽を舞うことでお返ししたい」
神垣龍杜くん(右・中2)
「大きな水害があってもあきらめず、大和の神楽を継承していきたいです」

神垣青杜くん(中央・小6)
「良い神楽だったと言われるよう頑張りたい」(画像提供:大草神楽子ども研究クラブ)

今まで幾度かの存続の危機を乗り越えてきた同クラブ。来年2月24日には、何としても40周年記念神楽公演を成功させたい。広島の伝統を受け継ぎたい。必要な衣装や道具を揃える費用の一部にしたいと、現在クラウドファンディングを立ち上げている。11月16日まで。

「西日本豪雨で浸水した「神楽」の衣装を新調し、伝統を後世に」
https://readyfor.jp/projects/ookusa-kagura

 

いまできること取材班
文章・門田聖子(ぶるぼん企画室)
撮影・堀行丈治(ぶるぼん企画室)

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