取材班による現地レポート

試行錯誤して辿り着いた「自分だからできること」〜巻寿司ワークショップで復興支援

2019.01.31

ボランティアには色々な形がある。
災害から半年以上が過ぎ、どういう形の支援が求められているのか、何ができるのか、思いあぐねている人がいるかもしれない。
もしかしたら、そんな人たちにとってヒントになるかもしれない事例を一つご紹介したい。

東日本大震災から温めてきたボランティア活動への想い

1月15日、広島市立矢野西小学校で復興支援活動の一環として飾り巻き寿司のワークショップが開催された。
講師として東京から来広したのは、江戸東京野菜コンシェルジュの資格も持ち、JSIA認定飾り巻き寿司1級インストラクターとして巻寿司教室など主宰している八幡名子(やはた めいこ)さんだ。

八幡さんは災害直後の7月25日にも単身で来広し、広島県安芸郡海田町の土砂出しのボランティア活動に参加。その後8月には家族4人で再び広島を訪れ、広島市安芸区と呉市天応でも活動した。それが人生で初めて経験したボランティア活動だった。

八幡さんは西日本豪雨災害で初めてボランティア活動を経験した(写真提供:八幡さん)

東日本大震災が起きた時も「何かしなくては」と思っていた。
「でも当時は子どももまだ小さく、現地でのボランティア活動は参加できませんでした」

テレビ製作会社に勤めたこともある八幡さんは、震災後に制作された東日本大震災のドキュメンタリー映画の仕事に関わるなどしたが、現地で活動ができなかったことが「少し心に引っかかっていた」。

西日本豪雨災害が起きたとき、「今度こそ」という思いがあった。
不安もあったというが、「行ってみると「自分でもできることがあるんだな」と思えた」と八幡さん。

東京に帰り、ボランティアに参加したことを友人に話したところ、「せっかくだから報告会をしよう」ということになり、20数名の友人知人が集まる中、写真を見せながら活動について話をした。
その集まった人の中に、一般社団法人RQ災害教育センターの八木和美さんがいた。

「自分の得意を活かしたボランティア活動をすればいい」

八幡さん(写真左)と開会の挨拶をする八木さん(写真右)

八木さんは東日本大震災をきっかけにボランティア活動を始め、その後組織された一般社団法人RQ災害教育センターで事務局長を務める。

東日本大震災以降も、平成26年8月豪雨、平成27年9月関東・東北豪雨、熊本地震でそれぞれRQ支援団体を設立、今回の平成30年7月豪雨でも『RQ広島』として長期間、被災地に入り活動を続けていた。

「私も広島で活動しているのよ」
八木さんにそう声をかけられた八幡さんは、7月と8月のボランティア活動でそれなりの意義を感じつつも、自身の中で少し悶々としていた思いを伝えてみた。

ボランティアセンターを通しての活動では活動時間や活動内容に条件や制限があること、
自分が思うような活動ができなかったこと……。

「ボランティアでできることは土砂出しだけではないのよ。自分の得意を活かした活動をしてみたら?」

目からウロコが落ちるとはまさにこのこと。
八幡さんがライフワークとして伝統野菜を活かした巻寿司作りのワークショップをしていることを伝えると、八木さんはRQ広島の拠点を置いていた広島市安芸区矢野町在住の北野さんに声をかけた。

次々とつながっていく、人と支援の想い

復興カフェで活動する北野さん(写真提供:北野さん)

北野さん(写真)は災害後、“旅商人 拓”こと横山拓さんを中心とする『災害臨時NPOチーム旅商人』の活動の一つ、復興カフェを手伝ったことをきっかけに、八木さんと交流を深めていた。
(参考記事;いまできること/旅商人 拓の矢野滞在記

八木さんから「復興支援の一つとして巻寿司ワークショップをやりたいという人がいる」と、相談を受けた北野さんは、自身の子どもが通う矢野西小学校のPTA役員の中川さんに相談した。

ちょうど毎年1月に開催するPTA講演会という行事を巻寿司ワークショップにしたらいいのではということでトントン拍子に話は進み、1月15日に矢野西小学校PTA講演会として「復興支援飾り巻寿司ワークショップ」を開催することになった。

八幡さんの活動をサポートする仲間が集結

株式会社あじかんの菅原さん(左)と加地さん(右)。 PTA役員の泉さん(左)と中川さん(右)。

たくさんの協力者が当日も応援スタッフとして駆けつけた

すし飯、海苔、広島菜の漬物など使用する食材のほとんどは、八幡さんが巻寿司大使として参加するMAKIZUSHI倶楽部というコミュニティの運営元の株式会社あじかんが、無償で提供を申し出てくれた。

開催当日も株式会社あじかんの社員をはじめ、RQ災害教育センター八木さん、MAKIZUSHI倶楽部運営をサポートする株式会社ハーストーリィプラスの社員などたくさんの協力者の姿があった。

そんな周囲の人々に対し、「私の思いつきにこんなたくさんの人が関わってくれてありがたいという気持ちしかない」と八幡さんは感謝の気持ちを伝えた。

愛らしい花の飾り巻き寿司が笑顔を運ぶ

準備万端に整った矢野西小学校の家庭科室に、小学1年生〜6年生の保護者が続々集まった。
参加者は45人。

いよいよワークショップがスタート。
八幡さんのデモンストレーションを見ながら、参加者は飾り巻寿司のパーツを作っていく。
小さな子どもも笑顔で飾り巻寿司作りに励んだ。

小さな子ども連れの参加者も多く、乳児はおんぶひもで熟睡、幼児はママと一緒に巻寿司作りを楽しんだ。

完成した飾り巻き寿司をカットすると、切り口から花の図柄が現れた。
会場は「わあ!」という歓声と笑顔に包まれた。

参加者からは、
「生きることにつながる『食』においては手間を惜しまず、大切に丁寧に取り組んでいこうと考えさせられました」
といった感想も聞かれた。

災害以降、町内の行事が全て中止になるなど、町全体に『楽しいことをしてはいけない』という空気を感じていたという北野さんは、
「久しぶりにみんなで笑いながら楽しく参加することができて、それがとても嬉しかった」と教えてくれた。

最後に、PTA役員の中川さんが「八幡先生を始め、たくさんの方々にご協力いただき、このような会を開催することができました。本当にありがとうございました」と挨拶をして会を締めくくった。

「まだまだ大変な想いを抱えた方もいらっしゃる中で、私たちを受け入れて下さったことにまず感謝の気持ちでいっぱい」と語る八幡さん。

切った時に柄が出るのが醍醐味という飾り巻き寿司には色々な図案があるが、今回巻いた図柄はオリジナルの「お花巻き」。
「みんなで作ったお花の飾り巻き寿司が一輪の花となって心の片隅にでも咲いてくれたら……」という願いを込めてこの図柄を選んだ。

北野さんの言葉にもあったように、被災地に誰が言ったともなく流れる「楽しいことはいけない」という空気。
そういう空気を変える役目を外部の者は担っているのかもしれない。

「ボランティアは風」と聞いたことがある。
外から吹き込む風が、被災地の空気を変える。訪れること、それも大切なボランティアだと。
八幡さんの活動を取材してそんな話を思い出した。

<関連サイト>
MAKIZUSHI倶楽部
RQ広島
いまできること取材班
文・写真 イソナガアキコ

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