取材班による現地レポート

地域とボランティアの連携を振り返る~広島市南区

2019.02.27

平成30年7月豪雨災害から7カ月後の2月3日、南区役所別館(広島市南区)3・4階を会場に「西日本豪雨災害ボラセンふりかえりのつどい」が開かれた。南区災害ボランティアセンター 楠那サテライト、似島地区災害ボランティアセンターでの経験を、今後の災害時の対応に生かしてもらうことが目的だ。

実際に楠那サテライトの運営に関わった人たちの経験談から、私たちの「いまできること」「これからできること」を学びたい。

 

午前中のミニ・シンポジウムは、広島市南区社会福祉協議会の田畑健雄事務局長が進行役。パネリストとして比治山学区自主防災会所属の防災士である満島裕直さん、富士ソフト株式会社の前野光也さん、鳥取県倉吉市社会福祉協議会職員の西田ひろみさんの3人が登壇した。

 

田畑 楠那サテライトは、7月14日から8月27日まで開設し、期間中に40件の累積活動実績を残しました。この間、協力してくださったボランティアは、約1100人。7月22日には100人超の人が、その後は50人前後の人が駆け付けてくれました。この期間中、サテライト運営に関わってもらった3人からお話を聞きたいと思います。

広島市南区社会福祉協議会 田畑健雄事務局長

満島 私は東日本大震災の時、田畑さんと一緒に事務局の仕事をしたご縁で、今回もサテライト運営に関わりました。実は以前、丹那ハイツに住んでいたので、懐かしい思い出の場所でもありました。

前野 富士ソフトはIT企業で、システム開発を行っている会社です。全国に支店がありますが、広島市中区にも支店があり、広島市災害ボランティア本部に南区災害ボランティアセンターを紹介され、楠那サテライトに協力することにしました。楠那サテライトでは、受け付けと、Facebookの更新を担当しました。熊本の震災時は、弊社の社員が3カ月にわたって罹災証明書の発行をさせていただきました。その経験もあったので、今回も市役所に話はさせてもらったのですが、すでに支援が入っていましたので、今回はその業務には関わりませんでした。

西田 鳥取県倉吉市では、平成28年に地震がありました。かつてないことで、災害ボランティアセンターでは電話が鳴っても対応しきれない状況。そんなときに鳥取県社会福祉協議会をはじめ、中国ブロックの社会福祉協議会の人たちが手伝ってくださいました。その恩返しということで、楠那にてボランティアをさせていただきました。

会場の壁に貼られた、楠那サテライト開設当時の様子

田畑 具体的に、災害ボラセンでどのようなことを行ったのか教えてください。

西田 サテライトが立ち上がる前日に来て、楠那サテライト内のレイアウト、衛生面で気を付ける所のチェック、一日の流れ等をこちらの南区社協さんと一緒に作っていきました。

鳥取県倉吉市社会福祉協議会 西田ひろみさん

前野 公共Facebookの管理は初めてで、他のサイトを参考に「どういう情報がほしいのか」を考えながら発信していきました。例えば、 楠那サテライトまで行くのに、何番のバスに乗るのか、駐車場の場所はどこか、などです。

満島 今回も立ち上げから、社協さんのお手伝い・サポートという形で関わりました。社協職員さんは人数も限られていて、運営もボランティアが手伝わないとスムーズにいきません。それは4年前の土砂災害時も、東日本大震災時もそうでした。

田畑 満島さんにはサテライト立ち上げから助けていただき、前野さんには地理の分からない人のために、ボラセンまでの経路などの情報を発信してもらいました。なかなか気付けない事です。西田さんは経験があるので、受付からオリエンテーション、どう送り出したらいいか、というところまでお願いしました。皆様の協力で、運営できたと思っています。では、実際動いてみてどうでしたか?

満島 楠那は地域のコミュニティが素晴らしく、大人が子どもたちの顔をみんな知っているエリアです。学校の先生が土砂かきにきてくれ、子どもたちをボラセンに手伝いに連れてきてくれ、大人は子どもをしっかり受け止めている。大人と子どもの関係が良好な印象です。また、町内会の方たち、自主防災組織、民生委員との連携もうまくいっていて、周辺の企業さんや学校、企業、 社協との関係も良く「素晴らしい地域だな」と実感しました。わが町内会にも、生かしたいなと思いました。

比治山学区自主防災会 満島裕直さん(防災士)

西田 (九州北部豪雨災害時の)福岡県のボランティアでは、コマの1つのような動きでしたが、楠那では「一緒に作り上げる」形でした。滞在中、倉吉市に持って帰れるようなヒントをたくさんもらいました。

前野 冷たいおしぼりを子どもたちが作ったところを情報発信するなど、発信内容も考えました。被災した現場はひどい状況で、写真を撮っても、どこまで載せればいいか苦慮しました。しかし、発信することでボランティアさんの心をつなぎ、明日も楠那に来てもらえたらいいな、と思って続けていました。

 

田畑 では、良かったことと、感じた課題について教えてください。

前野 小学校の子どもたちが来て、サテライトの仕事を手伝ったり、鳥取県からスイカが届いたりしたことなどもPRし、外でのボランティア作業以外のことも発信したのは良かったです。反省点ですが、「情報共有ができていない」という話があって、どの家がどういう被害なのか、そこをうまく共有できたらもっと良かったかなと振り返っています。

富士ソフト株式会社 前野光也さん

満島 地域住民の団結が、災害時でも発揮されたと思います。反省点はたくさんありまして、被災者とボラセン、市役所との連携をもう少しよくすればよかったのかな?と。人とのつなぎの部分は丁寧に、サテライトの事情や行政の現状を分かってもらえるように接することが大事。サテライトと行政との関係を密にしていくことも大切だと思います。

西田 楠那の良いところは、地域が一つになっているところ。住民も役員も「そうしよう!」とすぐに行動に起こせるのがいいですね。また、ボランティアさんは、県外や他市から来る人より、楠那の人が多かったのです。これは当たり前ではない、素晴らしいことです。

 

田畑 何かあったとき、ボランティアセンターやサテライトの運営に携わろうと考えている人へメッセージを。

満島 できないことはできないと言うこと、安請け合いしないこと。ボランティア活動やサテライト運営は無償でやっていることを理解してもらい、被災者との良い関係を築くこと。そういうことも理解した上で運営に関わってもらえたら。

前野 サテライトの一日の活動を見ていたら、何かしらできることがあります。「支援がしたい」という気持ちがあれば、どなたでも役に立てることがあります。

西田 ボランティアセンター、サテライトの経費は、共同募金のお金が役立っています。ぜひ共同募金の啓発もしていただきたいですね。また、災害ボランティアはほとんどの人が初めてですから、周りの人に声をかけ、相談することも大切です。

会場内の展示はたくさんの人の注目を集めた

 

午後のミニ・シンポジウムでは、7月8日から8月31日まで開設された似島地区災害ボランティアセンターに関わった6人の発表があった。

会場ではミニ・シンポジウムの他に、共同募金コーナー、軽食や喫茶コーナー、プログラミング体験コーナーがもうけられた。雨天にもかかわらず、約200人が参加し、久しぶりの再会を喜ぶ声や、近況を報告する姿が見られた。災害を乗り越え、強くなった地域住民の絆は、今後の防災活動に生かされていく。

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

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