取材班による現地レポート

「て」を通じて、被災地と会話する

2019.04.03

2月末にあった坂町の平成ヶ浜仮設住宅集会所にての催し。

私をこの会に誘ってくれたのは、坂町や小屋浦ボランティアで何度かご一緒した望月貴子さんだった。彼女は神奈川県に住み仕事をしているが、2018年7月の豪雨災害以降ほぼ毎月のようにマッサージをしに通っている。

ボランティア活動を通じて兵庫県立大学院生たちとも顔なじみになっていたことから、彼ら主催の被災地支援の催しなどにスケジュールが合えば参加していた。

望月さんのハグモミを初めて見たのは、昨年小屋浦の保育園を取材した時のこと。 その日、園庭開放で息抜きをしに来ている親子に向け、彼女がハグモミの紹介をすることになり一緒に参加させて頂いた。

会場は保育園の遊戯室。まず「こんにちはー」と大きな声で挨拶。それから「絵本」のお話になぞらえて、子供達やお母さんたちにお互いの背中をさすったり、動いたりしてもらう。

皆、キャッキャっと笑う。何かがほぐれ、空気は確実に温かくなっていた。何人かのこどもに「見本になってねー」と呼びかけて家でも出来る簡単なテクニックをお母さん達に素早く伝える。

あっという間に時間は過ぎ、皆 充実した顔で帰っていった。

次に彼女は園の先生に声をかけ、その体を丁寧にほぐしていく。被災地では受け入れる側も緊張と疲労の連続。そのことをよく知っている彼女は、ボランティアセンターや避難所の運営に関わる人たちも時間があればほぐして回っていた。

そうした活動を継続する彼女に、その動機を聞いてみた。

「東日本大震災の時、職場から家に帰れなくなって。社内で炊き出しを手伝ったりしていたら深夜になっていました。眠れず起きていると、延々とTVで流されていた悲惨な光景が焼き付いてしまって」彼女は東日本大震災後、泥出しや農家の手伝いなどのボランティアから入り、その後キッズヨガやコミュニケーションタッチ「ハグモミ」、さらにマッサージを学び、被災地で活動するようになった。

今も東北、熊本、広島とゆるく継続的に訪れている。そして、被災地と呼ばれる場所の季節の花や空が、今、どんなに美しいか。人々がどれだけ懸命に生きているか。

そんな、もみほぐす「て」を通じて感じたことをFacebookで発信し続けている。

「何もできずにぬくぬくと日常を過ごしていることに、心が押しつぶされそうになってしまったんです。だから、私が出来ることをしているだけなんです。つながりができ、継続的にそして構えず、関われることがいいなあと思うんです」

仮設住宅にも沢山の顔なじみが、彼女にはいる。2月末にあった平成ヶ浜集会所の冬まつりで再会した彼女に「昼をまだ食べてないんじゃろ」といってお菓子を持ってきてくれたおじいさんがいたり、「また来てくれたんじゃねえ。前の時気持ちよかったけ、また来たんよ」という女性がいたり。

マッサージを受けた人は、こわばったこころやからだがゆるむからか、すぅと眠りについたり、言葉を吐き始めたり、涙を流したり。こころやからだが抱えた記憶や緊張は自分一人ではなかなかゆるめることは難しいのだろう。

名前が書き込まれた予約表のノートを見ながら丁寧に、一人一人マッサージをしていく。朝から休むことなく一人約20分ずつ。多い日には20人程、もみほぐすこともあるそう。

「疲れないのですか?」と聞いてみると「よく聞かれるんですが、触っている方が元気になります。確かに移動などの肉体的な疲れはありますが、こうして人の体をほぐすことで、逆に元気をもらっているんです」と教えてくれた。

スーパーマンなんて どこにもいない。彼女のFacebookには、疲労から声も出なくなる程の風邪をひいたことや、両親に作るお弁当や介護で疲れたということ、時には自分の弱さやいじわるな気持ちも包み隠さず発信されている。

そうして、彼女は考えるよりも先に淡々と、出来るペースで続けている。器用な訳でも、何か力を人一倍持っている訳でもなく、ただ自分の気持ちに正直に。

持続可能なボランティア活動を皆が模索する中、自分のすきなことや得意なことを生かして関わることは誰でも出来る。まずは気持ちに正直に、自分の気持ちに触れてみることをしてみてはいかがかと思う。

望月貴子さん/コミュニケーションタッチ「ハグモミ」

 

文と絵・沢田妙

一覧へ戻る