取材班による現地レポート

誰かのために汗を流す人たちを、知ってほしい~災害ボランティアの写真を呉市で展示

2019.05.28

麦わら帽子とタオルの下の、汗だらけの笑顔。力いっぱい土のう袋を投げる姿。作業の合間の休憩時間……。被災地で活動するボランティアたちの姿を収めた写真が、広島県呉市で2日にわたって開催された「復興応援! 呉ご当地キャラ祭」で展示された。

写真をカメラに収めたのは、東京在住のフォトグラファー、神戸志保さん。この日東京から持ち込んだ写真を見つめながら「自分も同じく災害ボランティアをしながら汗を流し、同じ思いを共有させていただいたからこそ、切り取れた瞬間です」と振り返る。

もともとクルーズ客船のクルーだった神戸さん。カメラを持って世界中を航海するうちに、人物を撮る楽しさにはまった。帰国後、写真業界に転職。8年前に独立してからは、フリーランスフォトグラファーとして活動していた。

そんな中、遠く西日本で起こった豪雨災害。発災直後こそ、被害が大きい地域が繰り返し報道されたが、それもやがて東京にいる神戸さんの目に触れることはなくなった。

「報道されていない地域に、まだまだ困っている人たちがいる」そう思った神戸さんは、縁のあった広島県江田島市へボランティアに赴いた。

(神戸さん撮影)

「今回の豪雨災害は、とても広範囲に広がっており、メディアで報道されているところは限られています。被害が大きい場所と全くない場所の差が激しい。その分、被災地と被災していない地との温度差も今まで以上に激しい」神戸さんが江田島でボランティアに汗を流したときの感想だ。

高齢化が進む江田島は、被害が大きかったにもかかわらず報道があまりされず、ボランティアが不足していた。社会福祉協議会やボランティアセンターのスタッフも手一杯で、ボランティア募集などの発信ができていなかった。土砂撤去などの作業にあたっていた神戸さんは、そんな状況を見て、記録写真を撮ったり、発信を手伝ったりするようになる。

(神戸さん撮影)

(神戸さん撮影)

「まずは『災害ボランティアはハードルが高い』『大変そう、つらそう』と思われがちなところを解消したかったんです。なぜなら、私がそうだったから」と神戸さん。

自身も、初の災害ボランティアとしてこのハードルを乗り越えたからこそ、その思いを伝えたかった。そして、炎天下で実際に作業をしたからこそ、見えたこと、分かったことがあった。一緒に汗を流した人たちの笑顔や、被災された人の気遣い、お互いさまの優しさ、休憩時間に交わす言葉、いつの間にか仲良くなった仲間たち、広がっていくボランティアの輪。「経験がないと抱いてしまいがちな、災害ボランティアのネガティブなイメージを、写真で払拭したい!」

神戸さんの写真による積極的な発信のおかげで、江田島には海外や全国からたくさんのボランティアが訪れるようになった。

(神戸さん撮影)

「被災地で笑顔の写真を撮ることを、良く思わない人もいるのは事実。撮影許可をいただいてはいますが、葛藤もありました」と振り返る神戸さん。シャッターを押すときはいつも「一番大切なのは被災者さんの気持ち」ということを忘れなかった。

発災から時間が経つと、人の記憶や関心は薄れていく。しかし、ボランティアはまだまだ足りない。被災地のことを忘れてほしくない、この状況を知ってほしい。そんな思いが「見た人の心を動かす一枚」につながっていった。

神戸さんは、江田島で3週間、その後8月には呉市安浦町で、ボランティアと写真撮影を続けた。

(神戸さん撮影)

今年1月、東京で写真展を開催する話が持ち上がる。そのとき、神戸さんは「誰かのためにこんなにも一所懸命に汗を流している人たちがいることを、たくさんの人に知ってほしくて写真を撮った。でも、私ひとりでは到底撮りきれないし、発信しきれない」と思った。

「ボランティアの皆さんの写真をもっと共有できたなら、各地で頑張っていた人たちをもっと知ってもらえるのではないか。つながるきっかけを作れるのではないか。一人一人、支援の形は違えど『困った時はおたがいさま』の意識が広がれば、これから起きるであろう災害にも強くなれるのではないか」

そう思った神戸さんは、SNSを介し、ボランティア中に撮った写真を募集。1月26日、西日本豪雨写真展&交流会「ボラ写展」でこれらも一緒に展示することを思いつく。全国から寄せられた写真は500枚以上になり、全てを印刷して来場者の方達と一緒に展示。イベント中に一つの作品として完成させた。写真展開催には、全国からさまざまな支援、協力を得た。中でも写真のプリントを引き受けてくれた企業の協力は、フォトグラファーとして、とてもうれしい協力だったそうだ。

多くの人が足を運んだ写真展は大成功に終わる。

(神戸さん提供)

(神戸さん提供)

(神戸さん提供)

*協賛(敬称略・五十音順)朝日印刷工業株式会社|エム・ビー・エス株式会社 金子製菓株式会社|呉海自カレー事業者部会 三興建設株式会社|株式会社ジャスト|株式会社制服のフジ 株式会社中元本店|ピッツェリアアルチェントロ 株式会社プレスク *協力 セイブザヒロシマ|東京ボランティア・市民活動センター 株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー *後援 江田島市社会福祉協議会 ピースボート災害ボランティアセンター *Special Thanks 西日本豪雨災害地元復興支援団体 One’s home

 

同時に、神戸さんが始めたことがある。

「ボラ写PROJECT」の立ち上げだ。

「ボラ写」=ボランティアの方を撮影した写真、またはボランティアをしながら撮影すること、または撮影したものと定義し、ボラ写を通じて災害に対する関心を高めるためのプロジェクトを発足させたのだ。写真展やイベントを開催することで、人との交流を生み、そこから災害に対する関心を持つきっかけとしたい……。

そして、ボラ写PROJECTとして最初の大きな活動が、今回の「復興応援! 呉ご当地キャラ祭」での写真展となった。

テーブルに置いたノートには、次々に励ましや感謝のメッセージが寄せられた。

全国からご当地キャラが集い、ステージやショップがにぎわう中、神戸さんの写真に足を止める人たちも多かった。募金箱にそっと寄付金を入れる人、「忘れてはいけない、見ておかないとね」と写真に見入る親子、「伝えてくれてうれしい」と言ってくれた人、共にボランティアで汗を流した人たちとの久々の再会……。

「災害が起きたとき、半年後、一年後……。その時々で、私たちができることは変わっていきます。今、何ができるのかということを常に考えていきたい」と話す神戸さん。また災害が起きたら、被災地に駆け付けたいと思っている。

「私にできることは、写真を通じ、災害を忘れないよう関心を持ってもらうこと。そして、有事の際には、全国にいるカメラマンが、困っている人たちのために写真を撮りに行く組織が作れたらと思っています」

災害時に、一人一人ができることで助け合う。
フォトグラファーの神戸さんは、写真を通じて、これからも「いまできること」を続けていく。
それはシンプルで、自然体で、無理がなく、でも、とても大切なことだ。

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

 

 

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