取材班による現地レポート

「ずっと海田で暮らしたい」~ボランティア人間塾開講

2019.05.30

平成30年7月豪雨で、死者2人(2019年5月末現在、関連死含む)という人的被害や、土砂災害に見舞われた広島県安芸郡海田町。発災から1年を目前に、海田町社会福祉協議会が「地域の困りごとに、自分のできることを、できる範囲で、自ら進んで行動しよう」と、全7回の連続講座「ボランティア人間塾」をスタートさせた。

5月18日に開講した、「ボランティア人間塾」。海田町社会福祉協議会主催で、海田町福祉センターの多目的ホールを会場に開催された。この日の来場者は230人余り。海田町民だけでなく、広島市や東広島市からも参加があった。準備した椅子や資料が足りなくなるほどの参加があり、ボランティアへの関心の高さがうかがわれた。

主催者を代表して、同協議会会長の山本昭さんからのあいさつではじまった。「近年の少子高齢化の進展、核家族に伴う希薄な人間関係などにより、福祉に対する地域住民のニーズが多様化しています。健康で安心して暮らせる地域づくりは、地域の皆さんの助け合いがなければ実現することができません。昨年7月には西日本豪雨災害があり、海田町も大変な被害に見舞われました。災害について学び、今後に生かしていただけたらと思います」

次に、事務局の大下政典さんから、ボランティア講座についてのオリエンテーションがあった。

「ボランティア人間塾の趣旨は、ボランティアする人を増やすことと、受講された人をボランティア活動につなげようというもの。そのため、皆さんに3つの要素をお伝えします。『ボランティアの魅力を知る』『自分にできるボランティアを探す』『一歩踏み出すきっかけになる』、この3つです。今年度全7回の講座を受講する中で、自分に合った何か、人のためになる何かを学べる講座となれば幸いです」

 

この日は、開講記念イベントとして、2つの講義があった。

海田郷土文化研究会の乗重さん(左)と百本さん(右)

最初に海田郷土文化研究会が「わが町の災害の記録」について発表を行った。同会は昭和62年(1987年)に発足し、現在13人の会員が海田東公民館を拠点に、海田町とその近隣を散策し、それぞれ各自が研究テーマを持って活動している。

古地図「奥海田村絵図」をもとに、地形や地質について説明。

大正12年(1923年)に起きた水害の、春日神社の惨状を示す写真。参道を直撃し、その後8年かかって本殿が再建されたという。「西日本豪雨でも、春日神社は再び被害に遭い、本殿以外は全て崩れ落ちました。前回より少し左に折れ、流れが変わったことが分かります」と説明。

過去の豪雨災害については、海田町史に水害の歴史が残っている。特に被害が大きかったのは延宝3年(1675年)、享保13年(1728年)。寛政8年(1796年)には「奥海田村などで溺死者が出る」とある。その後、明治40年(1908年)の大洪水、大正12年(1923年)、15年(1926年)の大水害、昭和20年(1945年)に枕崎台風に遭遇している。過去を振り返ると大きな被害はだいたい4カ所で起こっており、今回も同じような場所だった」との話に、熱心にメモを取る人が多かった。

「先祖から伝わっている写真や地図などの災害情報は、貴重な教訓になりますね」と話す百本さん。

続いて、海田町出身で、NHK広島放送局気象キャスターの勝丸恭子さんが「気象予報士がプロの目線で語る 災害への備え」と題し講演を行った。

最初に「自分の心の中にあるクセを知ってもらいたい」と語りかけた勝丸さん。「私は大丈夫」と思いがちな正常化の偏見を知ること、そして「大切なのは命を落とさないこと」と訴えた。

「地球温暖化が進む中、今まで以上に『自分の命を守る』ことが肝要。自分の命を人に預けないことが、大切な人の命を守ることにつながる。雨の様子、水の流れ方、臭い、防災メール、ニュースから情報を選択してほしい」との言葉に、参加者は真剣な面持ちでうなずいていた。

会場に向かっている時に中学生から「勝丸恭子さんですか?」と声を掛けられたエピソードも披露。最後に「間もなく来る梅雨時期に、一つでも心に残ったことがあればうれしい。大好きな海田で防災の輪が広がりますように」と締めくくった。

海田町在住の行成啓子さんは、友達に誘われて参加。「ガードレールの脇から泥水があふれて怖かった。逃げるかどうか迷った」と昨年の豪雨を振り返る。「自分の命を守ることが、周囲の人の命も守ると心に留め、いざというときは早い行動に移したい」と感想。

西川秀人さんは「海田郷土文化研究会、勝丸さん、どちらの話も聞いてみたくて参加した。海田町の過去の歴史を聞いて、春日神社を訪れてみたいと思った。ゲリラ豪雨は予想が付きにくいなど昨年7月豪雨の話から、いち早く逃げることが大切と改めて感じた」と話していた。

海田郷土文化研究会による、貴重な資料の展示もあった。

ボランティア人間塾は、来年2月まで6回開催される。「炊き出し&ボランティアセンター体験」(6/9)、「つながりづくりを知る講座」(6/28)など、多彩な内容を予定。1回でも参加可で、参加費(保険料込み)が必要な回もある。電話かファックスで申し込む。

申し込み・問い合わせ 海田町社会福祉協議会 TEL 082-820-0294 FAX 082-820-0293

いまできること取材班

取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

 

 

 

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