取材班による現地レポート

避難者のストレス軽減へ~「想定外」の経験を生かした訓練を実施

2019.07.06

西日本豪雨から間もなく1年となる6月16日、広島市立可部小学校(広島市安佐北区)を会場に、防災意識の再確認を目的とした避難訓練が行われた。可部学区防災連合主催。予想を上回る250人の参加に、防災への意識と関心の高さが伺えた避難訓練となった。

広島市では6月7日に「レベル4」の避難勧告が発令されたが、同学区での避難者はわずか9人。可部学区防災連合会の天野正美会長はあいさつの中で、「今回は幸いにも被害はありませんでしたが、天候を甘くみてはいけません。自分の命を他人任せにしないように、まずは避難場所など自分たちが住んでいる環境を把握してください」と訴えた。

昨年の西日本豪雨では、141人が同小体育館へ避難した。根の谷川の決壊と太田川の氾濫が予想されたため、急きょ避難場所を校舎2、3階の教室に変更。被災者は年代や家族構成など7タイプに分かれ、8つの教室を使って避難生活を送った。

これらの経験を踏まえ、今回の避難訓練では、被災者の属性をさらに細かく分類。ペット連れ、アレルギーや疾患のある人なども加えた10タイプの避難者の来所を想定し、それぞれの教室への避難訓練を実施した。

実際、昨年の災害時には、避難所で想定外のさまざまな対応に追われた。若い年代の避難者は、夜遅くまでテレビでの情報収集を希望した。ペット連れの避難者へは、急きょ別の教室を開放した。アレルギー疾患や、生活スタイルの異なる外国人などにも別室が必要となった…。

「避難者に安全かつストレスの少ない避難生活を送ってもらうため、これらの体験をその後の教訓とすることが重要となる。被災者となったからこそ、見えたものを活かした訓練ができる」

避難後の対応の重要さを痛切に感じているからこそ、自主防災会メンバーたちの、今回の避難訓練に懸ける思いは強かった。

避難した教室では、消防団の指導による簡易担架の作成が行われた。物干し竿、毛布、衣類といった、どの家庭にもあるアイテムで簡単に作ることができる。実際に作成を体験したり、完成した担架に乗ってみたり。いざという局面を意識しながら、参加者がしっかりと手を動かす姿が見られた。

防災士の川本勇二さんによる講話も行われた。災害は雨だけではないので、広い知識を持つことが重要と考え、将来想定されている南海トラフ地震の特徴や予想される被害などについても言及。「地震に対する備えは事前にできます。自分たちが住んでいる家屋の耐震性の確認や家具などの固定、避難場所の確認。そして地震発生時に重要となるとっさの判断。取るべき行動は何か、知っていないと動けませんよ」と説明。「防災に対する意識を高くもってほしい。『前回は大丈夫だったから今回も大丈夫』は通用しません」と締めくくった。

震度7まで体験できる起震車。

今回の避難訓練では地震も想定。可部学区初となる起震車が来場し、参加者たちは実際に揺れを体験した。

可部学区で想定される震度5強を体験した島田スミ子さん(72)は「思ったより揺れが大きくて驚きました。わが家には倒れやすい物がたくさんあることも分かって良かった。食器棚などの固定を考えたい」と、新たな気付きがあった様子。避難訓練や起震車体験に参加した栗原樹くん(15)は「ためになることをたくさん聞かせてもらいました。避難時の注意事項などを忘れずに、いざという時に生かしたい」と語った。

「昨年12月に学区内の土砂災害危険区域住民450人を対象におこなった意識調査で、危険区域の認識が非常に低いことが分かりました」と語る川本さん。住民の防災意識を高めるために、定期的に避難訓練を行う必要性を感じている。今回の避難訓練では、昨年の避難所運営を体験したからこそ分かる「次の段階」を想定した。タイプ別に分かれての避難ではさまざまな問題が露見したが、それを知ることが防災組織の訓練になったという。「住民一人一人が、雨に対して敏感になってほしい。避難して何もなければそれでいい、近所の方々とコミュニケーションをとり、声を掛け合って自分の身を守ってほしいです」と語っていた。

雨や台風などによる風水害は地震とは異なり、未然に防ぐ判断力が鍵を握る。それは、逆に言えば「確かな判断力を身に付けておけば防げる被害」ということだ。そのためには自分の命は自分で守る「自助」を念頭に置いておかなければならない。それが、地域のコミュニティで力を合わせて助け合う「共助」と繋がっていく。

防災の意識をもっと高めるとともに、地域のコミュニティでできることを確認し、継続していくことが重要ではないだろうか。「とっさの時には、普段経験したことのある行動しかできないのが現実」と受け止め、訓練を通して経験を積み、地域の防災力アップへとつなげたい。

 

取材・文 みつぎまき(Shine five)
撮影 中野一行(f1.4 photographer office)

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