取材班による現地レポート

昨夏のボランティア拠点で、市民の心つなぐイベント~呉JCが復興祈念フェス開催

2019.10.30

汗ばむくらいの秋晴れの10月5日、公益社団法人 呉青年会議所(呉JC)が主催し「西日本豪雨災害復興祈念酒まつり Reborn Fes 2019」が開催された。日本酒ブースの他、呉のグルメ、ワークショップなどで盛り上がった。

広島県内でも、甚大な被害があった呉市。平成30年7月豪雨では、25人の尊い命が失われ、うち12人は天応地区の住民だった(2019年9月10日現在)。

会場の呉ポートピアパーク(呉市天応)は、普段は、親子連れが思い切り遊べる公園として、市内外の多くの人に愛されている。しかし、豪雨後、撤去された土砂が積まれ、一時期災害ボランティアセンター 天応サテライトが設置されるなど、住民には忘れられない場所となった。

「Reborn Fes」には、徐々に復興が進む呉市や天応地区がさらに活気ある姿を取り戻せるように、また、「天応地区」「復興」「呉市民」をリボンのように結ぼうという願いを込めている。

 

主催の呉JCは、1952年に創設され、メンバーは現在67人。「呉WAVE創造委員会」「First Step委員会」など6つの委員会で組織されている。2019年度のスローガン「To Be With‼」の下、「明るい豊かな社会の実現」を目指して、さまざまな活動に取り組んでいる団体だ。

イベントは、呉JC 井本成一理事長のあいさつでスタートした。

「Reborn Fesが、多くの人の協力で開催できたことに感謝いたします。呉のまちは、昨年の豪雨災害で大きなダメージを受けました。ここ呉ポートピアの駐車場に、昨年の今頃、災害による土砂がたくさん積んであったことは記憶にあることと思います。今、呉はまさに復旧期から復興期に向かっています。まちの復興には、市民一人一人が『我々が呉を作っていく』という気概を持って生活していくことが大切。その気持ちが、復興につながっていくと考えます。今日、この会場に来られた人が、『呉はこんなに元気になっているんだな』と思ってもらえたら幸いです。多くの酒蔵の日本酒を味わって、呉のグルメを楽しんで、ワークショップを巡って、1日楽しんで帰ってください」

会場で用意されていたのは、太い竹に酒を注ぎ、火で加熱して燗をつける「笹酒」。毎年、天応の成人式で、新成人がこの笹酒を振舞っており、Reborn FesではJCメンバーによって振る舞われた。

海を望む特等席でビールと日本酒を楽しんでいた女性二人組。

「ここから見える島、江田島から来ました。西日本豪雨災害では断水が続き、自衛隊の入浴支援を利用したことを思い出します」

「今日の目当てはグルメと日本酒。楽しいイベントで盛り上がるのは良いことだと思います」

神奈川県から1カ月前に転勤してきた男性は、「呉が被害にあったことは聞いていましたが、想像より早く復興しているのではと思いました。呉やその周辺にこんなにたくさんの酒蔵があることにびっくり。前売りチケットを購入していますが、足りないから買い足すかも」と笑顔。

仕事仲間だという男性は、昨年の豪雨でバイク等が水没した経験を振り返り「災害時にはとにかく早めの避難を忘れないでほしい」と力を込めた。

井本理事長(左)と、内冨竜也呉WAVE創造委員長

呉JC井本理事長が語るReborn Fesの開催

──開催に至るまではどのような経緯があったのでしょうか?
呉JC井本理事長:
復旧期から復興期へと移行している今、通常の生活を取り戻している人もおられます。そんな中で、呉JCとして何ができるかを考えました。
お祭りを開催し、参加する人が増える、呉のまち中で単発的に小さいお祭りが増えていったらどうだろうか、と。日頃、まちに対して、受け身がちな人が多いですよね。楽しみを待つ側ではなく、自分たちが楽しいことを仕掛けていくような、そんな人を増やしていきたいと思ったのです。
呉WAVE創造委員会がどういう事業を展開していくかを考え、今年2月くらいから企画がスタートしました。西条の酒まつりは有名ですが、呉でも酒まつりをしてはどうか、という話から、呉とその周辺の11の酒蔵が協力してくれました。天応地区に伝わる笹酒の振舞いも行い、そこから「竹」というモチーフを連想。竹で作るアーケード、ドームも制作しました。また、発信力があり、興味のあることに積極的である女性に参加していただきたいと思い、パン祭りやワークショップなどをイベントに盛り込み、家族や友人同士などたくさんの方に楽しみながら復興について感じていただけるイベントにいたしました。

酒造会社のブースのほか、ご当地グルメや雑貨販売などもにぎわった

──昨年の豪雨災害後、呉JCではどのような活動をしていたのですか
呉JC井本理事長:
呉市ボランティアセンターのセンター長は、直前理事長の明神政之さんでした。JCメンバーも積極的に土砂かきなどの作業をしたり、まちの中のニーズを探り社協と連携しマッチングを行ったりと、ボラセン運営に関わりました。今年9月3日には、全国のJCの中でも珍しい「災害ボランティア活動の協力に関する協定」を呉市、呉市社会福祉協議会と結んでいます。これは、呉市社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを設置した場合に、呉市、呉市社会福祉協議会、呉青年会議所の三者が相互に協力し、センターの運営や災害ボランティア活動への支援を行っていくことを目的としています。私は、いざというとき、顔が見えない間柄では、ホットラインがつながらないと考えます。今回の協定により、互いに顔を合わせ、面識ができることで、早い対応につながると思います。

2018年7月10日開設時の、くれ災害ボランティアセンター(呉JCフェイスブックページより)

被災地での復旧支援活動(呉JCフェイスブックページより)

──協定を結んだことで、より災害に対しての意識が高まりましたか?
呉JC井本理事長:呉JCは民間の組織なので、行政ができないことを担いたい。いろんな会社の特色や、いろんなプロの力を生かしたいですね。逆に我々は、何かに特化したりもしません。オールマイティな団体です。そういった強味を生かし駆け抜けた1年半だったと思います。
「復興」というキーワードは、呉市民をまとめるキーワード。復旧から復興へ、復興の起点となると考えます。フェスはたくさん開催されているが、「元気になる材料」という位置づけで臨みました。今日のReborn Fesをきっかけに、今後も小さなコミュニティができていけばいい。次のイベントもご期待ください。

──1月から呉WAVE創造委員会の委員長を務めている内冨竜也さんに、今日までを振り返ってもらった。
内冨竜也呉WAVE創造委員長:何をどう伝えたら、共感してもらえ、復興につながっていけるだろうかと考えました。「復興」というキーワードは誰もが心の中で思っていることなので、その先をみんなで作り上げていきたいなと思いました。Reborn Fesでは、広島市内や呉市からワークショップを開催してもらっています。11の酒蔵の日本酒の他、呉のご当地グルメも用意しました。舞台を盛り上げてくださるミュージシャン、アーティストさんには、我々の思いに賛同した人に来てもらって実現しました。11月には「KURE CENTRAL PARK CRAFT GARDEN ~Reborn Fes2」を開催予定です。ぜひご参加ください。

ステージイベントや遊具などもあり、家族での来場も多かった

晴天の下、日本酒とご当地グルメを楽しむひととき。呉JCのメンバーが心を一つに仕掛けた「西日本豪雨災害復興祈念酒まつり Reborn Fes」には、台風による延期にも関わらず1200人を超える人の来場があった。決して派手ではない、有名人が来たわけでもない、来年度開催の予定もない。それでも、この日の盛り上がりは、呉市の復興へ向けた次へのステップにつながっていくに違いない。

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

一覧へ戻る