取材班による現地レポート

西日本豪雨からの復興を願って ~がんばろう呉 スペシャルコンサート2019

2020.01.31

平成30年7月豪雨から1年半、2度目の年越しを目前にした2019年12月17日。イルミネーションが輝く呉市内で、「がんばろう呉 スペシャルコンサート2019」が開催された。会場となった呉信用金庫ホールは、ほぼ満席。呉市内外の約1,400人が、素晴らしい演奏で満ちた時間を楽しんだ。大和コンサート実行委員会、呉市、海上自衛隊呉地方総監部によって共催された。

2011年9月、東日本大震災の被災地、東北を「音楽の力で応援しよう」と始まった「東日本大震災復興支援プロジェクト」。きっかけは、海上自衛隊と交流のある山本造船代表取締役の山本一洋さんが、当時の総務課長から震災の甚大な被害の映像を見せてもらう機会があったこと。あまりにひどい惨状に、「何とかせねば」と思った山本さんは立ち上がる。かつて「大和ミュージアム」内の戦艦大和の1/10模型制作に関わり、開館直後のコンサートも手掛けた経験があった山本さんは、急きょ呉市内の有志で「大和コンサート実行委員会」を結成。これまでのつながりをたどって、国内外の第一線で活躍する実力派アーティストを集めての「大和チャリティーコンサート」を行った。

以後も、ロックやポップスなどの著名なミュージシャンが呉市に集結し、2016年9月まで、全5回チャリティーコンサートが開催。コンサートの収益金は、義援金として寄付された。

その翌年の2017年に開催された「大和チャリティーコンサート2017 in KURE ~FINAL~」では、コンサートチケットの売上金の全てを復興義援金とし、熊本大震災で被害のあった熊本県や、東日本大震災からの復興が続く宮城県石巻市に届けた。

2018、2019年は「がんばろう呉 スペシャルコンサート」と銘打ち、同コンサートの広告協賛金から経費を除いた金額を、復興支援金として呉市に寄付している。

 

東日本大震災から続く支援の輪で、復興への活力を

(画像提供:海上自衛隊呉地方総監部)

コンサートに先立って、山本一洋実行委員長からあいさつの言葉が述べられた。

「私たち大和コンサート実行委員会は、2011年の東日本大震災を受け結成し、被災地支援をしてまいりました。2016、2017年は熊本大震災も合わせて支援してきました。被災地に出向くたびに、自然災害の怖さをいやというほど感じたものです。まさか、呉市で甚大な被害が起きようとは考えてもおりませんでした。未だ復興半ばですが、災害に強いまちへの復興が少しずつ進んでいるように思います。また、呉市には海上自衛隊呉地方隊の基地があり、常に緊急事態の即応体制を整えていただいており、呉市民として深く感謝しています。本日は、石田敬和呉音楽隊長の指揮のもと、東京音楽隊、横須賀音楽隊、佐世保音楽隊からも支援を賜り、ゲストには2011年から続けて出演していただいているBOROさんをお迎えしました。復興に向けての勇気と活力に満ち溢れるコンサートになるものと確信しております。どうぞ最後までお楽しみください」

続いて、新原芳明呉市長があいさつ。

「平成30年7月豪雨により、呉市は各地で大きな被害を受けました。被災後、海上自衛隊の皆さまに迅速に物資運搬支援や入浴、給水、洗濯支援などを行っていただき、呉市音楽隊の皆さまに市民を励ますためのコンサートを開催していただきました。今年も『がんばろう呉!スペシャルコンサート2019』に出演いただきますことに、心から感謝いたします。皆さんの明るく元気な演奏に、呉市が元気づけられるものと思います」

 

海自音楽隊&BOROの共演に万雷の拍手

プログラムは3部編成。呉出身のおだしずえさんの進行でスタートした。「雨が降ると思い出します。昨年7月の豪雨災害……。しかし、復興に向け力強く生きる人の姿に勇気をもらいました」と、来場者に語りかけた。

第1部は、軽快なコンサートマーチ。特に2曲目の「テイク・オフ」は、全日本吹奏楽コンクールの課題曲になった曲で、聞いたことのある人が多いようだった。「新しい出発」を意味する、壮大で元気の出る演奏が、来場者の気持ちを盛り上げる。
4曲目の「シーガル」は、呉市を意味する呉浦の風景をイメージした曲。東洋一の軍港へと発展した呉のまちの人々が偲ばれた。

第2部は、シンガーソングライター・BOROさんのスペシャルステージ。BOROさんは2011年より呉市チャリティーコンサートに参加していて、登場を待ちわびるファンも多い。

第3部は「サンタが町にやってくる」「宇宙戦艦ヤマト」「コスモス」といった、誰もが一度は耳にしたことがある曲が演奏された。

会場に設置された義援箱には、来場者から義援金が寄せられた。

スペシャルコンサートチャリティーTシャツ、けん玉、ラバーバンドなどが販売された。経費を引いた売り上げは、復興支援金として呉市に寄付された。

「整理券が当選してうれしかった」と話すのは、呉市から来場した70代男性。「呉音楽隊の演奏は、呉市民の誇り。今日は最後のアンコールまで楽しみたい。私の家の周囲は被災はしなかったが、一度は元気をなくした呉市民が、音楽で活気付くのは素晴らしいこと。来年以降も演奏を聞くために応募し続けます」と笑顔。

祖母、母親、高校生、中学生の4人で参加した丹羽ファミリー。「高校では吹奏楽部に所属していて、大学でも続けたいと思っています。ピアノは細やかで繊細、打楽器はリズミカルで、迫力ある演奏に引き込まれました。お金を払ってでも聞きたいくらいのコンサートが開催されることは、呉市民にとって光栄なことです。わが家は被災しませんでしたが、災害直後はひどい渋滞やJR呉線の寸断などで通学に3〜4時間かかることもありました。災害のないまちであることを願っています」と高校生が、そして中学生は「家族全員音楽が好きで、私も吹奏楽部で打楽器を担当しています。音楽は、聴くだけで元気をもらいます。今日の演奏は、全体的に迫力があり、中でもテンポが素晴らしいと思いながら聴いていました。主催してくださったことに感謝したいです」と話してくれた。

 

災害に負けない呉市に 今後も支援と協力を

今回のスペシャルコンサートを振り返り、山本さんは「これだけの回数を重ねてこられたのは、実行委員会のメンバー間の友情、また、たくさんのボランティアの皆さんのおかげです。皆さんの一生懸命な頑張りがあって実現できたことと感謝の気持ちでいっぱいです。コンサートは今回で一区切りつけましたが、私自身、得るものが多かった。これからも『災害に強いまちづくり』に向けて、協力してまいりたい」と話していた。

大和コンサート実行委員会メンバーや、実行委員長の山本さんの「がんばろう 呉」の気持ちは、来場者の心へ届き、復興の力へ変わっていったに違いない。コンサート終了後、師走の呉に、家路へ向かう人たちの笑顔が、そう物語っていた。

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

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