取材班による現地レポート

体験と課題の共有が、助け合いを深化させる~誰も取り残さない災害支援

2020.03.09

ボランティア交流サミットの分科会として行われたパネルディスカッション「誰も取り残さない災害支援」。障害者や子ども、外国人など、SOSを出しづらい人たちを、どうケアしていくか。登壇者3人が参加者と体験談を共有しながら、災害支援や日頃の関係づくりのあり方を探っていった。

登壇したのは障害者生活支援センター・てごーす事務局次長の畑俊彦さん、三原アレルギーの会ひだまり副代表の矢島恵子さん、タイから広島大学に留学中のグリット・コモルシルクルさん。それぞれが経験した西日本豪雨災害の体験を語った。

減災や助けあいの鍵は、相互理解とコミュニケーション

東日本大震災では、岩手県沿岸部を中心に、障害者や子どもたちへの支援を行っていた畑さん。西日本豪雨災害では、被災した障害者一人ひとりを訪ねて回ったり、街頭で支援を訴えたりした。「障害者だけに特化する話ではないと思うが、身体、知的、精神、視覚、聴覚など、障害によってさまざまな段階の支援が必要と感じます。これからも問題提起をしていきたい」と決意を述べた。

近隣との接点や日頃のコミュニケーションについて質問されると、「近所の居酒屋、たばこ屋、スーパーなどで『何かあったらお願いします』と努めて言っています」と日常のつき合いの大切さを強調していた。

子ども2人が食物アレルギーを持っている矢島さん。副代表を務めるひだまりでは、食物アレルギーを持つ子どもやその家族と情報を共有してきた。豪雨災害時に一部地域が「陸の孤島」となった三原市。その地域に住む母親の体験談を語ってくれた。

道路が通行止めになり、病院へのルートがなくなった。万一の時、エピペン(アドレナリン自己注射薬)一つで子どもの命をつなぐことができるのかという大きな不安を抱えた。交通が復旧して物資が回ってきても、アレルギーに対応していない市販の食品は食べられない。もらった食べ物でショック症状がでるかもしれないと思うと、避難所にも行けないという家庭が多いという。

「普段の備えを大切にすると同時に、学校や地域、避難所などに、一人でもアレルギーのある子どもたちのことを分かってくれる人がいるように、理解してもらえるように、私たちも発信していきたい」と語った。

グリットさんは、大学に入学して3カ月後に被災を経験した。7月6日の夜は大雨で自宅に戻れず、友人宅で過ごしたという。災害後も各所で土砂崩れがあり、どこにも行けない状況。日本語が十分に理解できないため、何かの手伝いをしたくても手段も分からなかった。「呉市のボランティアセンターに4時間かけて行った留学生もいると知りました。自分が災害ボランティアのことを知らなかったのがとても残念です」と振り返った。

タイでは自然災害を経験したことがなかったグリットさん。「災害の多い日本では、留学生も防災の基本的な知識が必要」と課題を挙げ、「日本人向けだけでなく、留学生にも向けたボランティア情報がほしい」と語った。

地域防災の当事者として、体験や課題の共有が必要

参加者の災害体験では、「防災教室のアンケートで『要介護の父親がいるので逃げられない』という回答があった。認識はしているものの、どう取り組めばいいのか悩んでいる」「避難所に通りすがりのブラジル人3人が助けを求めてきた。地域の人も不慣れながら受け入れて、皆と同じ環境で過ごしてもらった。3日目には感謝の言葉をもらって、その後は彼らも避難所の運営を手伝ってくれた」と発表があった。

畑さんは「自分から声を上げられる当事者ばかりではないので、平常時から近所の人同士つながっておく必要があります。外国人だけでなく障害者のためにも難しい表記は避けて、簡単な日本語や英語で発信してほしい」と提言。矢島さんは「自分から訴えていくこと、発信することが大切。日常生活で支援してくれる人を大切にしたい」。グリットさんは「災害が起きた時どうすればいいか、この経験を生かしていきたい」と抱負を語った。

ファシリテーターを務めた広島県ユニセフ協会事務局長の高田和美さんは「これをきっかけに、一人一人が『どんなことができるか』を考えるきっかけになればうれしいです」とディスカッションを締めくくった。

廿日市市から参加した本多誠一さんは「地域には外国人も高齢者も多い。さまざまな視点、考え方を知ることができたので、今後の地域づくりに生かしたい」。

府中市の防災士、佐藤房子さんは「障害者や外国人、アレルギーを持つ人たちを弱者ととらえるだけでは何もできない。視点を共有し一緒に行動していきたい」と感想を述べた。

参加者が災害体験、避難体験を共有する中で、改めて情報共有やコミュニケーションの重要性が見えてきた。誰かの困りごとを自分のこととして考えられる土壌が、着実に広がっている。

 

いまできること取材班
取材・文・写真/堀行丈治(ぶるぼん企画室)

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