取材班による現地レポート

元アナウンサーが「絵本」をつくるプロジェクト 「犬の兄弟が見た災害、あの日の真備町」

2018.12.25

朗読グループ「おはなしのWA♪」

元山陽放送の女子アナウンサー6人が結成した朗読グループ「おはなしのWA♪」。東日本大震災後、チャリティーを目的とした活動を岡山県内で行った。幼稚園や保育園などでこれまで34回、定期的に音楽と読み聞かせを続けている。2013年から毎年開催しているイベント「3.11朗読と音楽と伝えたいこと」では、お話の読み聞かせだけでなくバイオリンの演奏などを交え、福島県飯館(いいたて)村で農業を続ける女性に毎年現状を伝えてもらっている。次回、第8回の開催は来年3月11日に予定。

兄弟犬「チョコとミルク」のエピソード

東日本大震災の支援活動を続けていく中で、地元岡山での豪雨災害が起こり、身近な人が被害に遭った。被災地へ物資を届けたり、子供たちのメンタルケアのイベントを開催したりしてきた。そのたび、多くの人から、被害にあった時の話を聞いた。その中に、今回の絵本づくりのきっかけになったエピソードがあった。

倉敷市真備町で被災した兄弟の犬がいた。ロングコートチワワの兄・チョコと弟・ミルクは大雨の夜、上下にわかれてゲージに入っていた。じわじわと水位が上がる中、上のゲージにいた兄は飼い主に鳴いて助けを求めた。弟の鼻先まで水がきていたが、間一髪、助けられる。飼い主と共に、屋根の上で7時間、救助を待つ。しかし、その後の避難所での生活など大きなストレスが原因で兄のチョコは命を落としてしまった。

このエピソードをヒントに、自分たちが見聞きした災害時に起こったことを、擬人化された兄弟犬を主人公とした絵本として後世に伝えられないかと考え、プロジェクトを立ち上げた。絵本作りの経験のないメンバーだったこともあり、このプロジェクトを多くの人に知ってもらい、応援してもらいながら進めることにした。絵本のストーリー、文章は同朗読グループで製作。そのための資金集めはクラウドファンディングを使うこととした。

災害から2カ月、スタート直後の反応

9月の初旬、プロジェクトをSNSなどで発信を始めた。また、チラシを製作し動物病院やペットショップへ発送しお願いした。しかし、「まだ避難所で過ごしている人もいる。被災者の生活もままならないのに、継承のための絵本製作は早くないか」という声もあった。思い悩むことも多かったが、「災害の残した傷跡、様々な経験を風化させたくない」と思いを強くしていった。「絵本」という形にして、多くの人たちに読み伝えていく。メンバーは多くの場面で諦めず伝え続けた。

被災者が、支援者になる

地元の新聞やラジオなどで紹介され、支援の輪が広がっていった。支援者の中には「私も愛犬と一緒に避難した。自宅は失いましたが、本当に多くの人に助けてもらった。感謝の気持ちを何かの形で返したい。絵本を完成させてほしい」というメッセージをくれた女性もいた。

 

被災したイラストレーター 氏峯真理さんとの出会い

ストーリーは着々と決まっていく中、イラストをお願いする人は決まらずいた。倉敷市真備町で自身も被災したイラストレーター氏峯(うじみね)真理さんとの出会いが大きくプロジェクトを進展させた。画材など大切なものを失った氏峯さんは、プロジェクトの趣旨に賛同し、イラストを手掛けることになった。

クラウドファンディングは第1目標額の355万円を突破し、1000冊の製作が決定した。第2目標405万も達成。引き続き、2018年12月末日まで支援募集中。完成は2019年7月7日を予定している。完成した絵本を朗読することがゴールではなく、後世に伝えていくことを目的とした活動は、まだ始まったばかりである。

Facebookページ
https://www.facebook.com/bdp20180707/

クラウドファンディングページ「Ready for」
https://readyfor.jp/projects/bdp20180707/

 

いまできること取材班
文章:榎本尚子
写真:松原龍之・朗読グループ「おはなしのWA♪」提供
編集:松原龍之

一覧へ戻る