取材班による現地レポート

毎月キャンドルに火を灯す 真備町が日々、復興へと向かうために

2019.05.23

「いまできること」は何か

2018年8月13日の夜、倉敷市真備支所の前に約300個のキャンドルが並んだ。浮き上がった文字は、「がんばろう真備」。まだ全国から数百人単位のボランティアが訪れていたこの時期に、キャンドルを計画したのは「真備復興希望プロジェクト」。真備町で自らも被災し、当時、真っ黒に日焼けしていた平野将さんが、当時の話を聞かせてくれた。

気付いた瞬間だった。

平野さんは当初、「子どもたちの喜ぶ顔が見たい。子どもたちの笑顔は真備町を元気にする」と花火大会を計画した。これには旧友との再開があった。平野さんの家は、高梁川からも小田川からも近い川辺エリアにある。2階まで浸水し、泥かきや家具の搬出など炎天下の中、毎日クタクタになりながら作業を続けていた。ある日、車にたくさんの氷を載せて、中学校時代の同級生・小川慎也さんがやって来た。中学校を卒業して以来の再会だった。小川さんは自分のお家も被災していたが、地元の友達を回っていたという。平野さんは小川さんの姿を見て、地域が元気になれることを自分もやろうと思い始めるようになる。

「一人も取り残さない」

何ができるだろうかと相談を持ちかけた一人に、東日本大震災の翌年から倉敷で「3・11くらやみキャンドルプロジェクト」の活動していた友人がいた。キャンドルには人の心を浄化してくれる力がある。灯りの前で人は皆、分け隔てがなく、被災者も支援者も、行政も民間もみんなが同じ時間を過ごせる。何より真備町で亡くなった51名に対する哀悼のキャンドルとし、最後の最後まで一人残さず復興へ向けて歩めるようにと願いを込めて始めることにした。

続けていることで、見えてくるもの

毎月7日に同じ場所、同じ時間に火を灯す。発災から1年を目の前に、少しずつだが変化を感じる。半袖だった服装も長袖になり、冬にはぜんざいを振る舞った。多くの企業ともご縁を頂いた。地元の商工会の応援、寄付金を届けてくれた人、クラウドファンディングで支援してくれた人、当日この場所に来られない多くの人の思いが集まってきた。マスコミ各社の報道も有り難かった。カメラの数が少なくなると、少しずつ真備町の人たち、真備町にずっと寄り添って来た支援者たちが訪れるようになってきた。ここで手を合わせる時間を持つこと、1カ月に一度、再開できることで少しずつ笑顔も増えてきた。

今年の夏への不安

「実は多くの悩みを抱えている。悩みというより不安と言ったほうがいいかもしれない。町全体がイライラしている時期もあった。夏に向けての不安もあった。今年の雨への不安から真備町に帰れないでいる人もいる。4月に真備支所が再開したとき、共に真備町を復興へ向かおうとしてくれていると思え、胸を熱くした」と平野さん。

キャンドルに思いをのせて

4月21日、倉敷駅前商店街で行われた「三斎市」でブースを出した。運営のためのチャリティー募金と合わせて、キャンドルを入れる紙コップへ「真備町へのメッセージ」を書いてもらった。100人を超える人たちのメッセージと共にキャンドルを灯すことができた。

復興を一歩づつ

もうすぐ1年を迎える。当初、計画した「花火大会」は現在延期中。誰もが前向きに、花火を見て笑顔になれる時期が来るまで待っている。毎月、キャンドルの火を灯し、共に過ごす時間を大切にしている。少しずつだけど歩みを止めない、「復興」を地域と一緒に進んでいきたいと平野さんは願ってキャンドルに火を灯している。

いまできること取材班
文章:松原龍之
撮影:水子貴皓・松原龍之

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