ARTISAN CLUB

新たな一歩を踏み出すキッカケに。被災者の笑顔が咲いた「最初の晩餐」

2016.06.22

益城町の中心部から、車で15分ほど走ったところに位置する東無田地区。家屋の倒壊率は高く、危険と隣り合わせの避難生活を続けている在宅避難者が数多い。

そんな地震の爪痕が深い地区に、6月14日(火)夕方、住民たちの楽しい笑い声がこだました。場所は東無田公民館。『最初の晩餐』と書かれた案内が貼ってある。熊本の大地と食文化を未来へ残すための活動を行っている料理人、生産者、有識者のグループ『アルチザンクラブ』と、熊本・福岡の料理人を中心とした有志が企画した出張レストランが開かれていた。

大人からお年寄りまで、幅広い年代の方々がテーブルを共に囲んだ

子どもからお年寄りまで、幅広い年代の方々がテーブルを共に囲んだ

この日のメニューが書かれたホワイトボード

この日のメニューが書かれたホワイトボード

16時頃には住民が集まり始め、スタートの17時30分には会場は満員に。
「この地域に暮らす住民は350人ぐらい。地区外や益城町外に避難した人もいるが、今日は150人ぐらいが来るみたい」と、住民のひとりが教えてくれた。

会場へと足を運ぶ住民たち

会場へと足を運ぶ住民たち

料理人たちが心を込めて作った料理、熊本市から応援に駆けつけたバーテンダーによる本格的なお酒、そしてたくさんのボランティアスタッフによるおもてなし。
「わぁー!」
会場のいたるところで歓声があがる。
こうやって地域の人たちとお酒を飲むのは、地震以降初めて。みんなニコニコしとっでしょ。ご飯を食べながら顔を会わせて話をすると、安心するし、元気になります。(企画してくれたみなさんには)感謝の気持ちでいっぱい」。そう言って、参加者のひとりは笑顔でビールを飲みほした。
実際に、会場では久しぶりの再会であることがうかがえる会話を多く耳にした。
「あら〜、元気にしとった?」
「家は大丈夫?」
「今はどこにおるとね?」
震災後は声をかけづらかったのか、自分たちのことで精一杯だったのか、近況やこれからのことを語り合う姿が印象に残っている。

真心こもった料理の数々が、食卓を彩った

野菜、肉、キノコ類など、食材のバランスも考えた料理の数々が並んでいた

スーツに身を包んだ熊本市内のバーテンダーがお酒も提供

スーツに身を包んだ熊本市内のバーテンダーがお酒も提供

腕によりをかけて作った料理がズラリと並んでいた

シェフたちが腕によりをかけて作った料理は、住民に大好評

この企画は、震災発生後に仲間たちと炊き出しを続けていた『アルチザンクラブ』代表で熊本市中央区のイタリア料理店『リストランテ・ミヤモト』のオーナーシェフ・宮本けんしんさんが、知人を通じて東無田地区を訪ねたことがキッカケだという。
「最初に訪れた時、被害の大きさに思わず涙が出ました。でも、出会った住民の方は非常に明るかったんです。“私たちは必ずもう一回、この地区に火を灯します”との言葉に感銘を受け、何かお手伝いさせてくださいとお願いしました。その時の会話の中で、ふっと出た言葉が『最初の晩餐』。まずは一度みんなで集まって、一緒にテーブルを囲む場を提供したいと思ったんです。ここで英気を養っていただき、復興の後押しになれば」と宮本さん。『最初の晩餐』という言葉には、新しいスタートの場にしてほしいとの願いが込められていた

イタリアの星付きレストランで修業後、地元である熊本に店を構えた宮本さん。自然と食文化への造詣が深く、阿蘇地域の「世界農業遺産」認定にも大きく貢献。なお、この日の肉は福岡の料理人と、岩手の生産者からの支援によるものだという

イタリアの星付きレストランで修業後、地元である熊本に店を構えた宮本さん。自然と食文化への造詣が深く、阿蘇地域の『世界農業遺産』認定にも大きく貢献。この日の肉は福岡の料理人と、岩手の生産者からの支援によるものだという

閉店まで笑顔があふれた『最初の晩餐』。そこには驚くほどの活気があった。みんなで食事をする、お酒を飲む。そんな普通のことが、被災地ではままならないのが現状である。日常を実感できる場所が、いま被災地には必要だと実感したこの日、東無田地区には、確かに復興の火が灯っていた

福岡から駆けつけた「九州イタリア料理協会」会長で「ダ フチガミ」オーナーシェフ・渕上誠剛さん(左)。「九州イタリア料理協会」は震災後、熊本市内と益城町で炊き出しを7回ほど行い、合計3000名近くの被災者に食事を提供

福岡から駆けつけた『九州イタリア料理協会』会長で『ダ フチガミ』オーナーシェフ・渕上誠剛さん(右)。『九州イタリア料理協会』は震災後、熊本市内と益城町で炊き出しを7回ほど行い、合計3000名近くの被災者に食事を提供してきた

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

6月22日 2016

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