現地のいまを知る

阿蘇へ観光客を呼び戻したい―。1枚のTシャツに込められた、でっかい地元愛

2016.07.16

例年であれば、この時季の阿蘇は、国内外から多くの観光客が訪れ、エリア全体が活気に満ちあふれているころ。深い緑に覆われた山々は、ドライブするだけで、気持ちがすっきりと晴れやかになり、その自然の雄大さに心いやされる魅力を秘めている。それが、すっかり影をひそめてしまったのは、熊本地震の影響にほかならない。その阿蘇で、「観光客を呼び戻したい」と、オリジナルのTシャツづくりに励んでいる男性を阿蘇市乙姫に訪ねた。

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熊本市内からミルクロードを経由し、阿蘇市乙姫へ向かう途中の外輪山の景色。茶色に見える山肌が、地震の影響で土砂崩れした箇所

取材に向かったこの日、私たちを迎えてくれた田添賢(さとる)さん。「阿蘇チャリティTシャツ」の仕掛け人であり、デザインや企画まで一人で担当した人物だ。彼は、Tシャツの売り上げを地元・阿蘇市へ義援金として贈る一方、阿蘇市や熊本市内の飲食店などと協力し、Tシャツを購入した人が、それを着てお店や施設を利用すると、“チャリT割”という特典が利用できる、新たな取り組みを展開中だ。これは、Tシャツの販売期間が終了した後も継続されるので、夏休みのお出かけにうれしいニュース!

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阿蘇チャリティTシャツを自らデザインし、阿蘇を元気にするため奮闘中の田添賢さん。阿蘇神社近くの印刷所に協力を依頼し、念願のTシャツが完成

Tシャツを作ろうと思ったきっかけは、熊本地震のあと、観光客が激減した地元を復活させたいという思いから。「自分にできることはなんだろう、と考えたとき、頭にうかんだのが、このTシャツづくりでした」。大学時代にデザインを学んだ経験から、車中泊を続けながら、図柄を考案。そこに、阿蘇の力強さや、やさしさを表現したという。背中に大きく描かれたハートのなかには、「赤牛」「ジオパーク」「大観峰」「パン君」など、阿蘇にちなんだ名前とともに、「家族」「愛」「魂」といった言葉もならべられた。「自分の子どもや、友人たちにも広く呼びかけて、一つひとつ大事に集めた言葉で、ハートの形をデザインしました」。

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予約販売のTシャツは、キッズ用(100cm~)と、大人用があり、カラーは、黒と白の2色展開。1枚2500円~2900円(発送希望の場合は、送料別途)。奥さまの愛さんが手に持つのは、同デザインのステッカー(2枚入り・1000円)※価格はすべて税込み

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地元への愛がたっぷりつまったこのTシャツが、阿蘇復興への希望のかけはしだ

田添さんの動きは、Tシャツを販売して、義援金を集めるということだけにとどまらなかった。「デザインを考えているときから、阿蘇へ、そして熊本へ、観光客を呼び戻す仕掛けをなにか作りたいと考えていましたね」。そして、その思いどおり、Tシャツを購入してくれた人へ、飲食代割引などの特典を用意してくれるところを探し、その思いに賛同しれくれた飲食店や施設と一緒になり、“チャリティ割”で地元を盛り上げようと奮闘中だ。
Tシャツづくりをはじめた当初は、「義援金目的の詐欺まがいでは」と言われたこともあったそうだが、計画を中断することはなく、思いをしっかりと形にした。「被災を乗り越え、がんばっている阿蘇へ、またたくさんの人の笑顔がもどってきたらうれしいですからね!」と話す田添さんのまなざしは、まっすぐ前だけを向いている。
4月下旬、個人のフェイスブックだけで販売告知をはじめてから、徐々に話題が広がり、いまでは販売枚数1500枚を超えたそうだ(販売枚数は7月15日時点)。一人の思いからスタートした復興Tシャツが、たくさんの人のこころを動かし、阿蘇の大きな大地に、少しずつ元気を呼び戻している。

※阿蘇チャリティTシャツについて詳しくは、公式ホームページや、公式フェイスブックで確認を。<販売期間は、7月末までの予定>

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Tシャツは、公式ホームページなどでの予約販売のほか、田添さんのご実家が営む、阿蘇市乙姫にある郷土料理のお店『ひめ路』でも直接購入が可能

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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