現地のいまを知る

力強く前へ進む、阿蘇市一の宮町・門前町

2016.08.05

阿蘇市一の宮町にある阿蘇神社。熊本地震により楼門と拝殿が倒壊し、神様を祀る三つの神殿も大きな被害を受けた(詳しくは7月14日の記事「阿蘇神社の再建への課題と、これから」参照)。

7月28日(木)、その阿蘇神社と界隈が、震災後いちばんの活気に包まれた。この日は、国指定重要無形民俗文化財「阿蘇の農耕祭事」で最大規模の「御田植神幸式(おたうえしんこうしき)、通称:御田祭(おんだまつり)」開催日。千年以上も絶やさず続けられている祭りで、神輿や“宇奈利(うなり)”と呼ばれる白装束の女性たちが、阿蘇神社を皮切りに、商店街や緑の田んぼの中をゆっくりと進んでいく。その厳かな姿をひと目見ようと、多くの観光客で賑わいを見せていたのだ。

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阿蘇神社から出発する“宇奈利(うなり)”と呼ばれる白装束の女性たち。頭上に抱えているのは、神様たちへの食事

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“宇奈利(うなり)”の後には神輿が続く

阿蘇神社のすぐ近く、多くの商店が軒を連ねる門前町で『みやがわ時計店』を営む宮川幸二さんは、その様子に目を細める。
「ここはいつも人通りが多い商店街です。地震後、4月25日に一斉に営業を再開しましたが、お客さんが少なくてGWも例年は車が渋滞するほどですが、今年は半分にも満たなかったと思います。最近、やっと増加傾向になり、今日は震災後いちばんの人出。本当に嬉しいですね」と微笑む。

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「門前町は様々な取り組みを行い、賑わいを創出してきました。商店街では、地元の人たちのために4月16日の朝から炊き出しを始めたのですが、その姿を見て、ここが“まちおこし”をできた理由を実感しましたね。本当に人が素晴らしい地域だと思います」と宮川さん

地震後、熊本では祭りやイベントの自粛が続いた。しかし、御田祭の開催については、自粛という意見は一切出なかったという。
御田祭は地元の誇りであり、元気につながるもの。この祭りをキッカケに復興していかないといけないという気持ちが地元のみんなにあったと思います。元気な姿を見せて、観光客に来ていただき、私たちは商売をしなければなりません。ここで生きていかないといけませんから」と宮川さんは力強く話してくれた。

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『みやがわ時計店』は、阿蘇神社のすぐ近く、門前町商店街の入口にある。「この商店街には、みんなで町全体を良くしていこうという団結力があります」と宮川さん。地域の復興に欠かせない力だ

この地域はこれまで、さまざまな災害に見舞われてきた。阿蘇山の噴火による火山灰、台風、平成24年の九州北部豪雨は、まだ記憶に新しい。その度に、地域の人たちは復興を遂げてきた
「この地域の人たちは自然災害では決してへこたれませんよ。カルデラの中で生活している(※1)なんて、阿蘇の人ぐらい(笑)。私たちは大自然の中で暮らしているのですから」と宮川さん。その表情に、悲壮感はいっさい見受けられなかった。

御田祭の参加者や商店街の人たちの元気に触れ、こちらの方が元気をもらっていたことに、商店街を後にしてから気付いた。熊本の観光地へ行くことが、被災地の支援につながることは間違いない。そして、支援ということを意識しすぎず、旅を、観光を、心から“楽しむ”ことも大切だと感じた。一過性ではく、長期的な支援を続けるためにも

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御田祭を見物しようと、たくさんの人が訪れていた

まだまだ夏休みは続く。そして、秋は阿蘇のベストシーズンのひとつでもある。行かない理由はない。

※1:カルデラとは、火山活動によって火山体に生じた凹地のこと。阿蘇カルデラは東西18km、南北25kmにおよび、世界でも有数の規模を誇る。阿蘇市はカルデラ内に位置しており、多くの人たちがその中で暮らしている。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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