現地のいまを知る

阿蘇神社の再建への課題と、これから

2016.07.14

熊本地震の発生直後、全国ニュースでも大々的に取り上げられた、阿蘇市一の宮町にある「阿蘇神社」の楼門(国の重要文化財)倒壊の衝撃的な一報。約2300年の歴史を持つとされ、阿蘇市民はもちろん、県内外からも多くの観光客が訪れる阿蘇神社の変わり果てた姿に、多くの人が悲痛な思いを感じたことだろう。地震発生から約2カ月後の6月中旬、「いまできることの」の取材班が現地を訪れ、被害の状況と課題、そしてこれからの話をうかがった。

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「阿蘇神社」と刻まれた看板もろとも崩落した楼門

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熊本地震発生前の楼門の姿

お話をうかがったのは、阿蘇神社の権祢宜・池浦秀隆さん。4月16日未明に菊池郡内の自宅で被災し、翌17日にやっとの思いで神社までたどり着いたそうだ。「ここへ来るまでの道路は遮断され、身動きがとれませんでしたね。途中、通行止めの道をぬけ、大分経由で神社まできました」。熊本地方を襲った、最大震度7(阿蘇神社がある阿蘇市一の宮は、震度6弱)の本震直後の混乱が伝わってきた。

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被害状況をていねいに説明してくれた権祢宜の池浦秀隆さん

阿蘇神社は、重要文化財である「楼門」と、保存建造物である「拝殿・翼廊」が全壊する被害を被った。3つの建物にわかれた「神殿」は、倒壊こそまぬがれたものの、すべてに損壊の傷跡があり、神社内の斎館、お札所など、あちこちに地震の爪痕が残されている。
池浦さんによると、「問題は、重要文化財である楼門は、国の補助事業である災害復旧の対象になり、修復の予算がおりますが、拝殿など多くの倒壊・破損部分が、自費での修復が必要になります。ですが、すぐに着工というわけにもいかず、災害廃棄物の撤去の問題、費用負担のこと、地盤調査や改良の有無など、これから解決しなければいけない課題が山積みです。それをきちんと調べて、クリアにした上でないと、修復に着手できないですね」と、深刻な現状を話してくれた。

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全壊した姿が痛々しい拝殿

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心配そうに建物を眺める参拝客の姿も

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国の復旧支援の対象にならない箇所がいたる所に

阿蘇神社がある一の宮町は、神社の脇からにぎやかな商店街が続き、観光シーズンであるゴールデンウィークから秋にかけては、国内をはじめ、海外からも多くの観光客が訪れる、いわば阿蘇観光の人気スポットだ。地域の被害は、そこまで大きなものではなかったそうだが、地震直後から観光客の姿は激減。商店街はこの日も人影がまばらだった。そんな中、明るいニュースだったのが、来る7月28日(木)・29日(金)に開催が決定した「御田植神幸式」(通称、おんだ祭)の話題だ。「このお祭りには地域の人も大勢参加しますし、今年は例年以上に、特別なものになると思いますね。ぜひ多くの方に、足を運んでもらって盛り上げていただければ」と池浦さんも感慨深げ。

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阿蘇神社の脇にある「門前町商店街」。元気に営業しているお店が多いものの、観光客の人影はまだまばら。神社の被害状況から比べると、地域全体の被害が少なかったことから、「神社の神さまがお守りしてくれた」と感謝の言葉も聞かれた

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地震後、参拝客を受け入れていたテントの横に、仮の拝殿が完成予定

地震直後から、神社本来の機能を損なわないようにと、拝殿の横にテントを張り、参拝客の受け入れに対応してきたそうだが、7月中旬に、待望となる屋根付きの仮の拝殿が完成する見込みだ。今後の再建にむけては、ホームページ内に建築物修復のための奉賛口座(募金)の窓口が案内され、同時に、公式フェイスブックでも復旧までの道のりを配信中だ。阿蘇神社が一日も早く、元の堂々とした姿を取り戻し、阿蘇全体が元気になることを願って、私たちにできる支援を続けていきたい。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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