日本財団

在宅避難者調査からみえる被災地・益城町の現状

2016.06.09

ゴールデンウィーク明けの週末から、日本財団によっておこなわれた「益城町内の在宅避難者世帯の状況調査」。その結果の集計・分析が終わり、6月8日14時に熊本県庁にて、記者発表が行われた。在宅で避難生活をおくる人々の現状、今後予測される二次災害、支援のあり方の報告とともに、日本財団がこれから実施する取り組みが発表された。

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調査結果を報告する日本財団の青柳光昌氏(左)と、一般財団法人ダイバーシティ研究所の伊知地亮氏(右)。

「在宅避難者世帯の状況調査」とは

ゴールデンウィーク中、益城町では、長期化する避難生活での災害関連死などの被害拡大の防止、適切な物資提供や避難所運営の改善のため、避難所・避難者の状況調査が行われた。当初は、大規模の避難所を調査することで被災者の動向が把握できると考えられていたが、実際には大きな避難所に滞在することを選ばない人が多く、自宅や自宅近くの公民館など、小規模避難所が増加していたことが判明。益城町島田地区の避難所に指定されている飯野小学校では、避難者数44名に対し、240食分の配給がすべてなくなるといったことが起きていたのだ。この200名近い人たちはどこでどのように過ごしているのか?

避難所にいない被災者の生活実態を把握するために、一軒一軒民家を訪問し、家屋の被害状況や在宅避難生活での住環境、医療、食事などの生活環境などをヒアリングするローラー作戦を実施することが決まった。5月14日(土)を皮切りに3週末に渡る調査には、10代の大学生から仕事を定年退職した年配者まで、熊本や福岡を中心にのべ600名近い人たちが集結。

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オリエンテーションの様子。5月14-15日は49名、21-22日は123名、28-29日は412名と週を重ねるごとに多くの調査スタッフが集まった。

益城町22行政区のうち、特に被害の大きい13行政区を抽出し、倒壊率が高く、さらに布田川断層帯周辺にある地域を対象として、医療チームとともに調査は実施された。

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調査の対象となったのは、島田(下原・東無田・櫛島)、福富、惣領、馬水、安永、宮園、木山、寺迫(県道28号より南側に限定)、平田、田中、山間部地区(上陣・堂園・杉堂)。二人一組になって、一軒ずつ聞き取りをおこなった。

調査結果は益城町の被災者台帳のベースとなり、仮設住宅への移行、高齢者など要援護者の医療ニーズなど次なる支援を検討する材料として活かされる予定だ。なお、今回対象外となった地区には、地元の保健師が訪問し調査を継続する。

1,243世帯にのぼる在宅避難

今回の調査では、行政区世帯数6,580世帯のうち、2,686世帯に訪問。そのうち1,243世帯で3,195人が在宅避難生活を送っていることがわかった。

「避難所での集団生活はいや」「自宅の方が安心」という理由をはじめ、「農作業があるので離れられない」「農機具を盗まれないために」といった農家ならでは事情も、在宅避難生活世帯が増えている要因となっているようだ。また、4月中旬という外でも過ごしやすい季節に発災したというのも、車中泊や自宅敷地内での屋外生活が増えた理由のひとつ。益城町では震災直後から、役場職員の8割の人員が避難所運営に奔走し、食事の配給や段ボールベッドの導入などが比較的円滑に整備されていった。決して避難所運営の不具合だけでなく、農家など普段から自助力が高い人々が多いというのも、在宅避難生活が増えた理由といえるだろう。

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倒壊した建物のすぐとなりにテントを張って生活しているケースも多い。

全調査世帯の54%が、家屋の危険度「要注意」以上

在宅避難生活世帯1243件中、半数以上の671件(54%)が家屋の応急危険度判定(※1)が「要注意」以上であることがわかった。そのうち、危険度「要注意」以上の自宅をそのまま就寝場所としている世帯は半数近くの296世帯(44%)。庭先の農作業用の小屋や倉庫、車中、敷地内に設けられたテントやビニールハウスなどを含めると、375世帯(56%)と過半数をしめる。必ずしも安全が確保されていない状況のため、大雨による浸水や土砂くずれなど二次災害が発生した際に直接被害を被りやすく、このままの生活環境を続けるには不安もいっぱいだ。

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応急危険度判定が貼られた商店。外観以上に建物の中の被害は大きい傾向にある。

「要注意」家屋の6割に高齢者が

危険度「要注意」の自宅で避難を続ける世帯を細かくみてみると、6割近くの世帯に1人以上の65歳を超える高齢者がいることがわかった。ほかにも、乳幼児、要介護者、障がい者、妊産婦は88名いることが判明している。梅雨に入り、気温が上昇する中で、さまざまな感染症、熱中症、脱水症のリスクは高まり、さらに台風シーズンには、飛来物によるケガも懸念される。高齢者など要援護者がいる世帯にとって、住環境の危険に加え、健康面の不安や二次災害など、多くのリスクが高まるといえる。

調査エリアと重なる浸水想定エリア

今回の調査エリアは秋津川周辺にあたり、震災前から大雨などによる浸水想定エリアに指定されていた地域。地震の影響で、秋津川堤防が沈下し、広範囲での地盤沈下も起こっている。また、上陳・堂園・杉堂の山間部エリアは、地盤のゆるみによる土砂くずれも予測される。調査エリアは危険度「要注意」以上の家屋が全世帯の54%にのぼり、さらにそのうち56%は安全確保がむずかしい住居形態だ。高齢者などの要援護者がいる世帯も多い。二次災害に備え、避難・支援拠点の確保・整備が急務だ。

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秋津川沿いに積まれた土嚢。ミラーの高さから地盤沈下の様子がわかる。

?これからの支援と課題

今後、大雨などによる浸水被害や土砂くずれが予測される地域に対し、日本財団による二次災害・日常の被災者支援に備えた地域支援拠点の設置が決定している。20畳ほどの和室のプレハブ住宅には、炊事場、ユニットバス、エアコンなど、地区ごとに現状にあった設備が備えられる。島田地区、益城町総合体育館、平田・田中地区、山間部エリア(上陣・堂園・杉堂地区)の4カ所に、震災から2カ月後の6月14日前後に完成予定。公民館が全壊した地域もあり、臨時集会所として活用されるほか、仮設住宅が完成するまでのつなぎの避難所として、危険な在宅避難生活から一時的にでも安心して過ごせる空間を提供する。

倒壊した家屋の解体・補修の予定がないという人は、回答数853件のうち412件と半数近くにのぼる。また、一時的住居への転居を希望する人は回答数541件のうち121件。転居先としては、益城町内の仮設住宅や民間賃貸住宅を希望するひとがほとんどだ。そこには、益城町に住み続けたいという想いが表れている。しかしながら、路地に散乱したがれきの撤去もなかなか終わりが見えず、力を貸してくれるボランティアの数も減ってきている。まだまだ応援・支援が必要だ。

※1:大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定し、二次的災害を防止することを目的としたもの。赤(危険)、黄(要注意)、青(調査済)の紙が危険度に合わせて建物に貼られていく。

いまできること取材班
文章:廣木よしこ
撮影:長谷和仁

6月9日 2016

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