現地のいまを知る

人、地域の「架け橋」をつくり続ける。2人の若者が見すえる明日

2016.06.28

JR鹿児島本線の上熊本駅近くに、ボランティアの拠点となっている施設がある。『崇城大学ボランティアビレッジ、ゴールデンウィークに全国からたくさんのボランティアが訪れることを想定し、5月3日にオープンした。

施設内にはテントサイト、車中泊のためのカーサイト、コミュニティスペース、支援物資の倉庫があり、企業の出張オフィスとなっているプレハブ住宅も軒を連ねている。

施設内にはテントサイト、車中泊のためのカーサイト、コミュニティスペース、支援物資の倉庫があり、企業の出張オフィスとなっているプレハブ住宅も軒を連ねている

立ち上げたのは、一般社団法人『チーム熊本。代表理事を務めるのは、株式会社『ちかけんプロダクツ(通称:ちかけん)の共同代表でもある三城賢士(けんし)さんと池田親生(ちかお)さんの2人だ。

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三城賢士さん(上)と池田親生さん(下)に、崇城大学ボランティアビレッジ内の『ちかけん』出張オフィスで話を聞いた。

三城賢士さん(上)と池田親生さん(下)に、崇城大学ボランティアビレッジ内の『ちかけん』出張オフィスで話を聞いた

彼らは普段、「竹あかり」による地域づくりを生業としている。竹林整備により伐採される間伐材を活用し、さまざまな地域で竹あかりをつくるワークショップを開催。地域を照らすあかりを、地域の人たちでつくり出すというプロジェクトだ。その活動が架け橋となり、今では日本各地に「現地スタッフ」と呼べる仲間たちがいるのだという。

「僕たちは大学生時代に“ボランティアで祭りをやる”という活動からスタートしました。地域に行って、竹あかりをやって、それ以外のお手伝いもしてきたことが被災地支援の活動につながっています。ボランティアというより、地域づくりの視点でやっているので、特別なことをしている意識はありません」と池田さんは心持ちを語る。

『ちかけん』を立ち上げてすぐ、新潟県中越沖地震が発生した時も、被災地で竹あかりを行ったという。東日本大震災の時は、熊本から支援物資を直接トラックで届けるなど活動を展開。被災地での竹あかりは、現在も定期的に続けている。
「今年も3月11日に、宮城県山元町で竹あかりによる慰霊祭をお手伝いしました。事前に全国15ヶ所ぐらいでワークショップを行い、その時に作った作品も山元町へ贈り、竹あかりは全部で600個にもなりました」と三城さん。

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宮城県山元町で灯した「竹あかり」。

宮城県山元町で灯した「竹あかり」

全国で地域づくりを行ってきた経験を活かし、2人は熊本地震発生の翌日から、すぐに行動を起こした。まずは『チーム熊本』を発足。「炊き出しチーム」「物資配送チーム」などセクションを設け、熊本の大学生たちをそれぞれのリーダーに任命。支援物資の収集&配送、ウェブサイトやSNSでの情報発信、「物資を送りたい人」「物資を必要としている人」それぞれ専用の受付携帯電話番号を用意してスムーズな受け渡しの流れを確立するなど、圧倒的な行動力で被災者のニーズに応え続けた。

ボランティアビレッジ内の巨大なテントが支援物資の集積場所に

ボランティアビレッジ内の巨大なテントが、支援物資の集積場所に。ちなみにこのテントは、国連の食糧支援機関『WFP』の支援によって建てられた

「でも、すべての支援活動が最初からうまくいったワケではありません。行動しながら考え、改善した部分も多いんですよ」と池田さんは振り返ります。
行動しながら、考える。それは、簡単なようで、実はとても難しい。時間をかけて準備万端でスタートした方が、安全である。しかし、一分一秒でも早い支援を求めている被災者にとっては、その準備時間さえ歯がゆい。スピード感のある支援をするためにも、支援する側が「考えること」「自立すること」が大事だと2人は口をそろえる。

「やりたいコトがある人、僕たちに連絡ください。一緒にやりましょう!」

「やりたいコトがある人、僕たちに連絡ください。一緒にやりましょう!」

“何をしたらいいのか、分からない”という状態から抜け出してほしい。ここのボランティアビレッジに来れば、いまできることはあります。来ることができない人は、『チーム熊本』のホームページやフェイスブックを見て、現状を知ってください。他にも活動資金を支援していただいたり、東京などで開催されている熊本復興フェアで買物していただいたり。アンテナを張れば、できることはたくさん見つかるはずです」と池田さん。
その言葉を実践するように、彼らも常にアイデアを出し合い、支援内容はパワーアップしている。
例えば、『チーム熊本』では終礼の際に、各リーダーたちが課題や被災者からの要望を挙げ、解決するための方法を探っているという。先日は「家から動けず、食べ物に困っている人がいる」との報告があり、炊き出しを通常より多めにつくって、食事を宅配することに。「炊き出しチーム」と「物資配送チーム」がコラボし、新しい支援のカタチが誕生した。

取材した日もボランティアビレッジ内のコミュニティスペースでは、リーダーとボランティアスタッフたちによる打ち合わせが行われていた。

取材した日もボランティアビレッジ内のコミュニティスペースでは、リーダーとボランティアスタッフたちによる打ち合わせが行われていた

「必要としている人が周りにいる、そして応援してくれる人がいる。どっちが欠けても僕たちの活動はできません。そして、応援してくれる人たちは熊本だけでなく全国にいて、そのつながりを普段から築いていたことが財産だったと思います。『竹あかり』での地域づくりを通して、たくさんの人と地域に“架け橋”をかけてきました。実はいま、新しいプロジェクトも進行しています。その名も『Bridge KUMAMOTO』。最初は熊本のクリエーターと産業を支援するプロジェクトでしたが、今ではもっと広い意味を持ち、人と地域をつなぐプロジェクトになりつつあります。他にも、復興や支援につながるアイデアはまだまだあります!たくさんの人に興味を持っていただき、“自分もやりたい!”という人を巻き込んでいきたいですね」と三城さんは目を輝かせる。

『チーム熊本』『Bridge KUMAMOTO』のステッカー。

『チーム熊本』『Bridge KUMAMOTO』のステッカー

圧倒的な行動力とスピードで、2人の活動の幅は今日も広がり続けている。その動きに注目し、知恵で、力で、支援金で協力する。それはきっと、被災地と、被災地で力強く前を向く若者たちとの新しい「架け橋」を築く機会になるはずだ。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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