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「熊本地震におけるコミュニティ復興支援事業 報告会」レポート

2018.03.10

昨年5月から約半年間、「ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会」の支援を受け、熊本市・益城町・南阿蘇村の6つの団体が、「仮設住宅でのコミュニティ形成」と「住民参加の復興まちづくり」という2つの大きなテーマで活動をおこなってきた(5月のキックオフフォーラムの様子はこちら)。
その取り組みを経て、これからの復興へ向けて行政との連携のあり方や外部の専門家による復興への関わり方などを議論し、今後の官民による復興施策へのヒントにしようと、「熊本地震におけるコミュニティ復興支援事業 報告会」が11月末に熊本県立大学で開催された。

会場となった「熊本県立大学」中ホール。復興支援に取り組むNPO、自治体の職員などが集まった

会場には、6つの団体の活動報告も展示

「ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会」マネージャーの伊藤佐和さんの開会あいさつ。今回の支援に至った経緯や熊本地震の支援の継続が述べられた

前半のプログラムでは、熊本県立大学 環境共生学部 居住環境学科の柴田教授による「熊本地震における復興支援の課題と展望」と題した基調講演が実施された。 そこで柴田教授は、「熊本地震の復興の課題として、地区レベル、集落レベルのまちづくりの支援が圧倒的に不足している」と指摘。

その背景には、「行政の関心は復旧。支援団体は目の前の被災者の今。住民は自宅再建。大学は個別の研究課題と、関心の対象がそれぞれに違う」と述べ、熊本地震の特徴として、被災地のエリアが政令指定都市である熊本市から都市近郊農村の益城町、さらに過疎地である南阿蘇村にまたがり、各集落の特長や自治体の体力の違いがあることを挙げ、「集落の復興まちづくりは、地元の人だけでなく、支援者や専門家間の連携を図りながら、集落も支援者も外へ開くことが必要」と強調。

基調講演をおこなった熊本県立大学 柴田祐教授。熊本地震後は、学生らと共に集落の復興まちづくりの支援をおこなっている

後半のプログラムでは、「これからのコミュニティ復興支援に向けて」をテーマにパネルディスカッションがおこなわれ、支援活動に取り組んだ団体の代表者やアドバイザーらが登壇。活動を通じて感じた課題、これからの可能性について熱いトークを展開した。

「これからのコミュニティ復興支援に向けて」をテーマにしたディスカッション

加藤清正公が熊本城を築城した約400年前にできた城下町、新町古町地区で「くまもと新町古町復興プロジェクト」の事務局長を務める吉野徹朗さん。
地震後、町屋の存続を模索する中で、「今回の支援を通じ、石巻・京都・尾道など5か所の視察に行くことができ、町屋の保存に取り組む先進地の事例を学ぶことができました。町屋の再生には改修費はもちろん、今後の維持費も必要。古い建物を事業化していくことが重要だと感じました。新町古町地区の歴史やアイデンティティを大事にしながら、かつ新しいものを取り入れ、より良い復興を目指していきたい」。

「くまもと新町古町復興プロジェクト」の事務局長・吉野徹朗さん(写真右)

熊本県内で一番大きな仮設となる、テクノ仮設住宅で自治会長を務め、さらに「特定非営利活動法人 益城だいすきプロジェクト・きままに」の代表でもある吉村静代さん。
「今後は、仮設住宅から退所される人も出てくるなかで、個々にさまざまな問題が出てくるだろうと思います。そういったなかで、こころの支援が大事になってくるはず。これから私たちが自立に向けた一歩を踏み出すために、ボランティアの方に後押ししてもらえるような関係が築いていけたらと思います」。

「益城だいすきプロジェクト・きままに」代表・吉村静代さん(写真左)

南阿蘇村「神楽の里をもりあげ隊」のアドバイザーとして支援活動をサポートした「NPO法人 神戸まちづくり研究所」事務局長の浅見雅之さん。
「南阿蘇村の長野地区には世界に誇れる伝統芸能が存在しています。それが、岩戸神楽。秋の大祭に私もお邪魔しましたが、台風の影響で大雨が降るなか子どもからお年寄りまで大勢の方が集まり、にこにことお祭りを楽しんでいる姿に感動しました。今回私がアドバイザーとしてご提案したのは、これまで無料でやってきた神楽で少しは稼ごうということ。継続のためにお金をいただくことは決して悪いことではないですから。またこれからは、古き良きコミュニティではなく、新しい地縁社会が必要だと感じます。自分たちの課題を自分たちで解決できるような社会をつくっておかないといけません」。

「神戸まちづくり研究所」事務局長・浅見雅之さん

最後にパネルディスカッションのコーディネーターを務めた「一般財団法人ダイバーシティ研究所」代表理事の田村太郎さんからは、こんな話も。

「復興には、入り口があって出口はありません。終わりがないのが復興なんです。時間の経過とともに熊本地震への関心が薄れていくなかで、無理なく復興をめざしていくためにはどうすればいいのか。地域ごとに孤立するのではなく、つながることの大切さ。地域を越え、分野を越え、共有し合える関係をつくることが大事です」。

「ダイバーシティ研究所」代表理事・田村太郎さん

今年の4月で地震から2年を迎える熊本。地元ではまだ多くの人々が今も復興に向けて懸命に取り組んでいる。地元の支援活動を心に留め、「つながること」。そして、熊本地震の記憶を「忘れないこと」。それがきっと、復興の大きな後押しになる。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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