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「仮設住宅でのコミュニティ形成」と「住民参加の復興まちづくり」を考える、新たなプログラムが始動

2017.06.27

地震から一年が経ち、復旧復興が少しずつ進んでいるなか、まだ多くの課題も残されている。そのなかで、今後重要となる「仮設住宅でのコミュニティ形成」と「住民参加の復興まちづくり」という2つのテーマについて、あらたに復興支援事業がスタートすることになった。
事業スタートに先駆けておこなわれた「熊本地震におけるコミュニティ復興支援事業 キックオフフォーラム」を取材した。

日本財団主催でおこなわれたキックオフフォーラム

冒頭、日本財団災害復興支援センター熊本本部(※1)のセンター長・梅谷さんから、「もともと少子化という問題を抱えているなかで、地震後のまちづくりをおこなって行かなければいけません。今回、ジョンソン・エンド・ジョンソン様の寄付金により、同事業を実施することになりました。我々日本財団としても今後のコミュニティ復興支援事業をサポートしていきたい」とあいさつ。

日本財団災害復興支援センター熊本本部 センター長の梅谷佳明さん

続いて、ジョンソン・エンド・ジョンソンを代表して、社会貢献委員会マネージャーの伊藤さんから、寄付金は社員からの「熊本のために何かしたい」との声をきっかけに集まったものであることが伝えられた。さらに、社員の善意に加え、会社からの寄付金も加わったことで、その使い道を日本財団へ相談。今回の事業が実現することになったそうだ。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社会貢献委員会 マネージャーの伊藤佐和さん

これまで被災地では、外部のNPO団体などによる災害支援活動が積極的に進められてきた。一年が過ぎ、今後は地元住民を中心にした復興のフェーズへと移っていく。その過程で、大事になってくる「仮設住宅でのコミュニティ形成」と「住民参加の復興まちづくり」のテーマ。
事業実施にあたり「中山間地型」の南阿蘇村、「郊外型」の益城町、「都市型」の熊本市と3つの地区から、6つの団体をモデルケースにあげ、そこに過去の被災地からアドバイザーがサポートに入り、今後11月まで活動をおこなっていく計画だ。

会場となった熊本市五福公民館には、地域住民や自治体、支援団体の関係者らがあつまった

ステージ上では、6つの団体の代表らが発表をおこなった

▼6つのモデル事業とは

(1)くまもと新町古町復興プロジェクト(熊本市)
熊本城と熊本駅、そして繁華街を結ぶエリアのほぼ中央に位置する「新町・古町地区」。加藤清正公が約400年前に熊本城を築城したときにできた城下町だが、地震によって歴史ある「町屋」などが大きな被害を受けた。これまで同プロジェクトでは、家財の搬出、ガレキ撤去など、公的ボランティアの手が行き届かないところをカバーしてきたが、町屋というこのエリアを象徴する建物をどう残していくか、その仕掛けと仕組みづくりを模索しながら、活動していく。

(2)東無田復興委員会(益城町)
昨年7月、益城町東無田地区の消防団やそのOBなど住民らの有志により結成された団体。この地区では、地震直後から地理的な条件により公的支援の手が届きにくかったため、人命救助、物資搬入、炊き出しなどの活動を住民らがおこなってきた。昨年11月から「災害スタディーツアー」を開催し、被災地見学などもおこなっている。今後さらに住民を巻き込み、「地域のいいところ探し」「新たな祭り」の仕掛けをおこなっていく。

(3)神楽の里をもりあげ隊(南阿蘇村)
2011年より地元有志による活動をスタート。300年以上の歴史をもつ「長野岩戸神楽」(国選択無形民俗文化財)が開催される「神楽殿」周辺は、年2回の例祭以外の活用がないことが課題だった。これまで過疎に向かう地域コミュニティの再生を目的に、コンサートやさまざまな整備をおこなってきているが、今回、地震後の施設修復などがあるなかで、神楽の伝統行事を守り継ぐこと、そして発展させていくことを目指している。

(4)NPO法人子育て応援おおきな木(益城町)
2011年設立。益城町で子育て支援活動をおこなっているNPO団体。地震後は、大規模な避難所だった益城町総合体育館内のトレーニングルームで、つどいの広場をスタートするなど、幅広く活動。今回の事業では、青空カフェ、防災食でクッキング、東北視察といった3つのプログラムを計画し、安心して子育てできる町を作り上げていくこと、そして心のケアと一体化した防災教育を提供していくことを目標に掲げている。

(5)益城だいすきプロジェクト・きままに(益城町)
「主役はわたしたち」の合言葉で活動を行っている住民主体の団体。避難所が開設された小学校での活動を経て、現在は県内でも最大規模となる「益城テクノ仮設団地」にて、住民の孤立化・孤独死の予防のための取り組みを模索しながら活動。その一環として、子どもから大人までがつどえる「ダム湖のみえるみんなのひろば」を整備。仮設といえども生活の場であることを大事にしながら、住民の声が届くコミュニティ形成をめざしていく。

(6)南阿蘇復興支援センター(南阿蘇村)
地震直後から南阿蘇村で支援活動をおこなってきたメンバーが中心になり、16年5月に設立。8月までは片付け作業などの復旧支援や相談活動、その後は仮設住宅の支援に切り替え、コミュニティ支援、音楽会、マッサージなどの支援を展開している。今後はコミュニティ麻雀など新しい取り組みに力をいれていく。

会場の様子

日本財団の橋本葉一さん。「今回のモデル事業の取り組みが、11月に予定している報告フォーラムまで続いていきます。活動を通して、団体通しのつながりや、いいところを共有していく動きになっていけば幸いです」

5月に実施された同キックオフフォーラムを経て、11月には報告フォーラムが予定されている。多様な被災者への配慮不足、情報・コミュニケーション不足による混乱が生じると、それが復興の遅れにつながっていく。 今後の活動を通して見えてくる成果。それが熊本のほかの地域、団体の活動へとつながっていくことが期待される。

※1…日本財団災害復興支援センター熊本本部の事務所は、今年5月末で閉所。現在、東京を拠点にし、熊本地震の支援を継続中である

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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