日本IBM、サノフィ株式会社

企業がいまできること① 災害支援担当者が考えるこれからの動き

2016.06.03

東日本大震災のとき、社員派遣など復興支援に携わった企業やNPO、中間支援団体などを中心に「CVN」というネットワークが発足。今回、熊本地震の被災地を視察に訪れた「日本アイ・ビー・エム株式会社」と「サノフィ株式会社」も、このネットワークに加盟している企業だ。災害発生時の復興支援を積極的に行っている2社の災害支援担当者お二人に、話をうかがった。

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ボランティア支援による人手の確保が、早急の課題

―被災地を視察してみて、率直な感想は?

IBM小川さん 熊本地震発生からひと月以上が経ちますが、ボランティアの人出がまだ相当数、必要だと感じましたね。ただ問題なのは、熊本という地に、関東など遠方から、どれだけ多くの人を送り込めるのか、というところ。IBMとして、たとえばグループ会社に協力を要請するなど、うまく考えないといけないと感じます。あとはタイミングの問題。熊本市災害ボランティアセンターでは、今後閉鎖の動きがあるように聞きました。会社組織で体制を作るとなると、当然、時間が必要になってきます。それをどうするかですよね。

―ある程度長い時間軸の中で支援していくのも、企業の役割なのでしょうね。

IBM小川さん また今回、被災地を見て、企業人としてというより、日本人としてこれはどうにかしなければ、と切に感じました。東京では、いま報道の数もあきらかに少なくなってきています。熊本地震への関心が薄れるまえに、現地の状況を見た私たちが、ボランティアや、企業支援の必要性を伝えていかなくてはいけないな、と。

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日本アイ・ビー・エム株式会社の小川愛さん

サノフィ本山さん 実際、現地を歩いてみて、局所的な被災地が点在していると感じました。その地域にボランティアが入り、支援やサポートをしていくことが重要ですよね。先ほど目にした木山地区(益城町)は、ほぼ壊滅に近い印象を受けました。ガレキなどほぼ手つかずで、今後は被災者宅へ出向き、必要なものを取り出したり、ガレキの撤去をしたりといったフェーズが始まると考えられます。ボランティアセンターが主導で動いている城南・富合地区は、撤去作業が進んでいる印象もありましたが、それ以外の地域で人出が必要なところは、まだまだあるでしょうね。確実に人出のニーズはある。ただ一つ、IBMの小川さんも言われたように、企業から人を送り込むとなると、体制を整えるのに時間が必要です。災害支援の窓口となるボランティアセンターには、ぜひとも長期的に稼働していただきたいと思います。

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サノフィ株式会社の本山聡平さん(右)と、熊本県健康福祉部 健康福祉政策課 福祉のまちづくり室 室長の木村忠治さん(左)。「ボランティアの形はさまざまです。観光や旅行とセットになったボランティア・ツーリズムという考えもありますし、熊本に遊びにきていただくだけでも十分。長い目で、支援していただけると、うれしいですね」と木村室長

“社員教育の場”としての企業支援の価値

―今後、支援に向けての動きは?

IBM小川さん まず会社へ帰ってから、西日本地区の支店長や支社長へ報告をあげたいと考えています。そして、私もそうだし、他の社員もそうですが、熊本を訪れた人間が、社員間で情報をシェアしたり、「うちの社員にはこんなことができるんじゃないか」と、自由に投稿し合ったりするような、社内ソーシャルができたばかりなんですね。社員が自主的に動ける仕掛けを、ちょうどやり始めたところなので、東京の私が見てきたものを、他県に住む社員が見て、応えてくれることがあるかもしれないと期待しています。ぜひ、そこにも働きかけていきたいですね。また、福岡に理科の実験教室などの教育プログラムを行うチームあるので、避難所にいて子どもから手が離せない母親たちの現状とニーズを伝えたい。

―全国に拠点があると、支援の幅も広がりますね。

IBM小川さん はい。東京にいながら遠隔でできることがあれば、積極的にやっていきたいと思います。東日本大震災のときもそうでしたが、フェーズは時間の経過とともに変化していきます。いまは、ガレキ撤去や、壊れた屋根瓦の修復などの動きですが、復興の流れとともにフェーズは変わっていくでしょう。だからこそ、被災地の状況を見極めながら、対応していくことが必要です。弊社にはITに強い社員がたくさんいますので、それを積極的に支援に活かしていけたらと思います。

―なるほど。本山さんが考えているこれからの動きは?

サノフィ本山さん 弊社としては、ボランティアの人材を出したい考えです。そのためには、まず会社へ提案し、承認をもらった上で、社内で人を募り、7月から9月にかけて、毎月被災地へ人を送り込めればと。今回の視察を通して気がかりなのは、やはりこれから梅雨に入った場合の避難所での生活環境の問題です。5月でこれだけ暑いのですから、本格的な夏に向けて健康面での対策は何かしら必要になるでしょうね。われわれ製薬会社としては、夏の猛暑を想定した、健康面・体調面でのサポートを考えていきたいです。

―自社の事業が支援になるということは、社員のモチベーションにもつながりそうですね。

サノフィ本山さん 弊社では、国内のアクションとして、東日本大震災以降、災害支援に取り組むようになりました。ボランティアをやるということは、じつは教育的な効果もあって、普段は違う部署にいる社員同士が、短期間といえど同じ釜の飯をたべ、作業を通して横のつながりができ、普段とは違ったリーダーシップを発揮する社員もでてきます。そういう意味では、人材発掘にもつながるし、社員教育の場にも最適なんですよね。会社と社員が一緒になって“いいことをやっているんだ”という認識は、連帯感を生み、会社愛を育むことにもつながります。日本は災害があるのが当たり前の国ですから。ボランティアをプロフェッショナル(NGO)ばかりに任せるのではなく、一人ひとりができることを考え、企業としても積極的に取り組んでいくべきだと感じます。

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1階部分にあった車ごと押しつぶされた家(益城町)

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写真やメモをとりながら、熱心に視察するお二人

―視察を終えて

熊本地震発生以降、震度1以上の地震回数が1600回を超えた被災地(5月30日時点)。いまだ余震が続くなか、被災地の住民は、次いつ来るか分からない、地震の恐怖におびえ、心のストレスや生活再建への不安を抱えています。今回、被災地の中で最も被害が大きかった益城町へ足を運びました。震度7を二度にわたって経験した町の風景は、ほかの地域とは全く異なるものでした。目を覆いたくなるほどのガレキの山。つぶれたまま献花がそえられた家。疲れきった住民の顔…。普通の日常とは、あまりにもかけ離れた世界に、言葉を失いました。益城町以外の地域でも、報道では取り上げられない被災地のいまを目の当たりにし、ボランティアスタッフをはじめ、企業や行政などの多くの支援が必要なのだと感じました。

この熊本地震で、熊本市に住むわたし自身も被災者になりました。住まいと車を同時に失い、避難所生活を送る中で、多くの支援に助けられました。日本中、そして世界へ、支援の輪が広がっていることを報道などで知り、それが未来への希望につながりました。「熊本へ思いを寄せること」、この思いやりの心は、大きな力となって、被災地を支えます。

今後、視察に同行した企業2社からも支援に向けた動きが始まるようです。熊本地震からひと月半。被災地に、一刻も早い日常の安らぎが訪れるためにも、復旧・復興へ向けた、多くの支援の手が差しのべられることを願ってやみません。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

6月3日 2016

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