現地のいまを知る

企業のチカラを、被災地・熊本に。②「日本メドトロニック株式会社」のボランティア活動

2016.06.30

6月17日(金)から19日(日)の3日間、益城町へボランティアに訪れていたのは、医療機器の製造販売を行う「日本メドトロニック株式会社」の社員たち。東京本社をはじめ、福岡・熊本支社から総勢22名が集まっていた。取材に訪れたこの日は、あいにく気温30度超えの猛暑日。立っているだけで、じわじわと汗がにじみ出るのを感じた。

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東京、福岡、熊本から集まったメドトロニックの社員たち

顔を赤らめ、汗だくになりながら、活動をおこなう社員たちの表情は、一様にけわしく見えた。ボランティアチームの代表である宮内薫子さんに話をうかがうと、「ここへ来る途中、車内から見た益城町の光景は、地震から二ヶ月経ったとは思えないほどでした。右を見ても左を見ても、住宅が押しつぶされたまま。自分の目の高さに見えた部分が、その家の2階だと気付いたとき、この惨状は現地に来ないと分からなかった」とぽつり。この日の参加者の7割が、東京の本社から。テレビを通してみた光景と、現地の様子はまるっきり違って見えたそうだ。

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力仕事が必要な場面も多々

メドトロニックのボランティア月間である6月に熊本入り

この日、メドトロニックの社員たちが活動をおこなったのは、熊本地震で壊滅的被害を受けた益城町木山地区の腰尾文人さん(68歳)宅。本震の際に家が全壊し、車通りの多い県道28号の道路上に倒れ込んでいたものを、通行のさまたげにならないよう、重機を使って敷地の方へ押し戻している状態だった。そのため、建物の瓦や木材に交じって、家財道具などがもみくちゃの状態で残されており、仕分けをするのに困難を要する現場であることがうかがえた。

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家屋が全壊し、多くの人手が必要とされる益城町の被災者宅

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洋服なども倒壊した建物の中に残されたまま

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見つけ出されたなかには、思い出の写真も

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屋根瓦は、細かく砕くのが鉄則

益城町でボランティア活動を行ったメドトロニックでは、会社のミッションの一つに“社会貢献”を掲げており、6月をボランティア月間と定めているそうだ。毎年、1000人以上の社員が活動に参加するなかで、東日本大震災の復興支援も継続的に行っていたとき、4月に熊本地震が発生。「われわれに何かできることはないか」と、社内で熊本の物産展を企画し、募金活動を行ったそうだ。そして今回、現地でのボランティア活動にも名乗りをあげた。この動きについて宮内さんは、「企業として現地に来ることは、人手を出せるという点で大きなメリットがあると感じます。でも受け入れてくれる活動の場を確保するのがむずかしい。わたしたちは、日本財団さんの力を借り、活動の場を紹介してもらいました」。

もう一つ。ボランティアのメリットは、「社員同士のコミュニケーションの場になると感じます。入社間もない新人社員にとっては、先輩たちに自分を売り込む場にもなるし、全国から社員が集まり、顔をそろえることで新たな交流がはかれたり、社員同士の固いキズナが生まれるきっかけにもなる」(宮内さん)。

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ボランティアスタッフのまとめ役として、本社から来ていた宮内薫子さん

被災者宅の支援では、20?30分おきに社員同士、声を掛け合いながら、休憩をはさみ、水分補給が行われた。ケガ防止であるとはいえ、長袖でいるのが過酷なのか、袖まくりをしたり、半袖になったりする社員もいた。それほど、炎天下での作業は過酷だ。体力を奪われるなかで、倒壊した家からでるものを必要なものと、そうでないものに仕分け、さらに処分するものを、瓦や、木材など、種類別に分類。体力と同時に、細かさと根気が求められた。

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瓦、衣類、木材など、種類別に分けられていく

今後の支援について話をうかがうと、「当社には、熊本支社がありますので、今後も引き続き、活動をおこなっていくことになると思います。会社のミッションに、社会貢献活動を掲げてもいますし、企業としてできることに取り組んでいきたいですね」(宮内さん)。

ボランティア参加者の声

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熊本から参加の入江さん。「今回の活動とは別に、熊本支社の仲間と4回ほど宇城の方でボランティアに参加しました。益城町の現状をみると、まだまだ人手が必要ですよね。専門的な技術が必要なこともあるので、そういった場面では建設関係の人が必要ですが、単純に人数が必要なところもあるように感じました」

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東京から参加の濵田さん。「仕事で南九州に来ることがあり、鹿児島へ行く途中に熊本の被災状況を目にしていました。でも、個人ではどうしていいか分からなかった。今回参加してみて、倒れている現場に足を踏み入れ、そこに家があったと考えただけで、言葉を失いましたね。自発的に『何かをしたい』と思っている人がいるなら、ボランティアとしてぜひ現地に足を運んでほしい」

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北九州から参加の宮西さん。「二ヶ月が過ぎ、報道自体が減りましたが、現地の人たちは家も倒壊したまま、生活ができない状態にあるように感じます。ボランティアの数は、まだ必要。倒壊した場所では、ケガをしないような格好や催行品(※1)の準備も大切だと思いました」

メドトロニックでは、6月のボランティア月間に活動した人に“mission in motion”と書かれたTシャツを配布しているそうだ。益城町で活動した社員たちが一様にブルーのTシャツを身につけ作業している姿は、チームの連帯感を感じられる場面だった。青空の下、力を合わせ、もくもくと作業に取り組む社員たちの表情には、会社のミッションを遂行するという強い意思と、被災地への温かな思いがあふれていた。

企業として、被災地支援をどういうカタチで行っていくのかを考えることは、復旧・復興への大きな足掛かりとなるはずだ。それを動かすのは、もしかすると「わが社でボランティアへいきましょう!」という社員のひと言かもしれない。企業を動かすチカラが、社員一人ひとりにあるととするならば、“いまできること”は、きっと誰にでもあるはずだ。

※1:基本催行品は、弁当、水、スポーツドリンク、塩アメ、雨具、作業用ゴム手袋、防塵マスクなど、基本服装は、長袖、長ズボン、帽子やヘルメット、長靴または厚底のスニーカーなどがボランティア参加の基本となっている。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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