現地のいまを知る

夏休み最後の日。福岡大学の学生ボランティアが、益城町の仮設住宅で活動

2016.09.23

震災から5カ月ほどが過ぎた9月13日。益城町の大型仮設住宅「テクノ仮設団地」に福岡大学商学部の飛田努准教授のゼミに所属している学生たちの姿があった。
この日、団地内のD地区でボランティア活動をおこなった学生たち。そのきっかけは、「熊本でボランティア活動がしたい」と学生自らが声をあげ、実現したものだった。飛田先生が率いるゼミの合宿の一環として行われたこの日の活動を取材した。

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飛田ゼミに所属する2・3年生のほぼ全員が参加。その数、総勢32名

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テクノ仮設団地のD・E地区には、益城町木山地区の住民らが入居

「熊本でボランティア活動がしたい」と声をあげたのは、飛田ゼミの一員である福岡大学3年生、宇都宮彩希さんだ。彼女は、春と夏に行われているゼミ合宿の行き先や内容、予算管理などを任されている合宿担当のひとり。ではなぜ、合宿の目的地に熊本を選んだのか、そのいきさつを尋ねてみると、地震直後の葛藤が見えてきた。「福岡のお隣である熊本で大きな地震が起きたとき、同じ九州に住む人間として何かしなければ、という思いがすぐにわきました。大学では支援物資を集める動きがありましたが、わたし個人としてはボランティアへ行きたいと思ったんです。だけど、地震直後、現地が混乱しているなか、一人で行って動くことが、はたして正しいのだろうか…。ずいぶん悩みました」。

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作業の前には、被災者の方へ明るくあいさつをし、にこやかに作業を行っていた宇都宮彩希さん

結局、個人で行くことを断念。考え抜いた末に、所属するゼミの夏合宿のメニューにボランティア活動を入れられないか、と飛田先生へ相談をもちかける。「9月頃になると、きっとボランティアの数が減るだろうな、と。そうなると支援のニーズがあるにも関わらず、ボランティアが足りないのではと考えました」と宇都宮さん。この思いがきっかけとなり、実現した今回の活動は総勢32名のゼミメンバーが参加。午前中に益城町を視察したあと、テクノ仮設団地へ移動し、住民らが暮らす住宅の玄関部分の木材に、防腐・防蟻対策用の液体を塗る作業をおこなうことに。

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飛田先生も学生らの作業をサポート。心配された天候も回復し、順調に予定の作業が進んだ

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男女一人ずつがペアを組み、希望のあったお宅を訪問し作業

引率の飛田先生へ話をうかがうと、「学業が本分である大学生にとって、ゼミの学生らが被災地でボランティア活動をおこなう意味を考えましたね」とぽつり。そんな中、学生の自発性、行動力、考えを無駄にしたくないという思い、またゼミで常日頃大事にしている「直面した物事に対し、自分事としてどうとらえるか、自分だったらどう行動するか」を実践する場としてきちんと形にしなければと、震災直後から現地ボランティアに携わっていた大学OGの山下なぎささんに連絡をとり、今回の活動に至ったそうだ。

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福岡大学商学部 准教授の飛田努先生

午前中に、このたびの地震で震度7を2度にわたり経験した益城町のいまを見て、午後からボランティア活動をおこなった学生たち。宇都宮さんは。「自分の目に映った益城町は、非現実の世界のようでした。だけど、そこに人々の暮らしがあるという現実。ゼミで飛田先生がいつもおっしゃっている“自分事として考える”の意味を改めて感じ、私たち学生だからできることがあるのでは、と感じました」と話す。ボランティアとして身体を動かし、被災地の人と話し、「明るく前向きな姿勢にわたしが元気をもらった」と話す彼女は、被災地の人たちに何かをしてあげたいという一方通行の思いよりも、一緒に復興へ向けて動いていきたいという思いが強いようだ。それは飛田先生も同じ。今後も継続的に学生らと被災地の人たちが“一緒にできること”を見つけていきたいと話してくれた。

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ボランティアに参加していた福岡大学2年生の安在英華さん。「熊本出身なので、地震後は帰郷のたびに支援物資を届ける活動をおこなっていました。学生なのでできることが限られ、申し訳ない気持ちにもなりましたが、今日は参加できてよかった。卒業後は、熊本のためにがんばりたいです!」

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福岡大学OGの山下なぎささん。「5月に日本財団さんのボランティア活動へ参加したのをきっかけに、いまも福岡と熊本を行き来しながら活動を続けています。今回は大学の後輩たちが来てくれるというのでサポートに入りましたが、作業をやっていくうちに、やるべきことが見えてきたのか、学生たちの行動が変わってきたように感じました。被災地の人と話もでき、とても良い勉強になったのではないでしょうか」

益城町テクノ仮設団地に入居中の吉村静代さんへインタビュー

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益城町の住民であり、長年、町おこしにも取り組んできた吉村静代さん

地震後、益城町の避難所のひとつだった益城中央小学校に多くの人が身を寄せる中、避難所の環境整備に率先して取り組んだのが、吉村静代さんだ。自らも被災者でありながら、「避難所を、楽しく、気持ちよく暮らせる場にするにはどうすればよいか」を実践。当時の話をうかがった。

―避難所にいたとき、自らが行動しようと思ったきっかけは?

吉村さん 避難所にはたくさんの人がいましたからね。見ず知らずの人たちと、どうコミュニケーションをとっていくのか、自分が避難所で楽しく過ごすためには、当然考えなければいけないことでした。誰かのために動いたわけではないんですよ(笑)。自分の頭で考え、こうしたらいいんじゃないか、ああしたらいいんじゃないか、と動き始めたとき、自然と「手伝いましょうか」という輪が広がっていったんです。

―そのときの思いとは?

吉村さん 避難所にいたのは、全員が被災者でしたから。同じ環境・立場だったからこそ、自然と助け合いの精神が生まれたと思います。避難所では“主役は、私たち”を合言葉に、全国で初の試みとなる、避難所内にコミュニティスペースや子どもたちの学習スペースを作るなどしました。食事の配膳、掃除などもボランティアの人に頼らず、自分たちで動き、つながり、心のうちを発散できるような環境にしていったんです。これからは、このテクノ仮設団地を楽しい場にするのがわたしの務め。周りの人たちを巻き込みながら、楽しくやっていきたいですね。

ボランティア活動を終えて

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ボランティア活動を終え、清々しい表情を見せていた飛田ゼミのメンバー

この日、ボランティア活動に参加した福岡大学・飛田ゼミの学生たちに話を聞くと、「学生だからできること」「同じ九州人だからできること」の思いが数多く聞かれた。未曽有の震災に際し、学生たち一人ひとりが、改めて自らの心に問いかけたその答え。ひとりの学生が話してくれた「行動したことですべてが始まった」の言葉の先にある、未来へとつながる種。はじまったばかりの支援の根っこが、これからぐんぐんと根を張り、成長し、そして社会へと広がっていくことを願いたい。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:坂本和代

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