現地のいまを知る

復興に創造力を。熊本を勇気づけるグッドデザイン

2017.11.15

熊本地震から1年半以上が経ったある日。クリエイティブの力で復興支援を続けてきた「ブルーシードバッグ」と「阿蘇神社復興支援」がグッドデザイン賞を受賞したという明るいニュースが飛び込んできた。

近年、デザインは色や形だけではなく、仕組みや関係性など目に見えない部分もその一部として捉えられ、価値を見直されていている。2つのプロジェクトにはどんな見えないデザインが潜んでいるのだろうか。グランドハイアット東京で行われた授賞式で、受賞した想いとこれまでの経緯について伺った。

以前、本サイトにコラムを寄稿いただいた、一般社団法人BRIDGE KUMAMOTOの代表理事の佐藤かつあきさんはデザイナーとして、ブルーシードバッグのプロジェクトをリードしてきた。

グッドデザイン賞は1957年にはじまった「総合的なデザインの推奨制度」で、認知度も含めて日本最大のデザインアワード。ブルーシードバッグは「BEST 100」にも入賞した。

「震災から1ヶ月も経たない時に、知り合いだった竹あかり演出家の三城賢士さんにクリエイティブの力を使って被災地支援ができないかと声をかけられました。それがBRIDGE KUMAMOTOのはじまりでしたね。」

BRIDGE KUMAMOTOは「寄付するクリエイティブエージェンシー」を銘打つクリエイティブチーム。2017年2月に法人化され、イベントや企業のデザインワークなど活動の幅を広げている。

団体を立ち上げた段階では、何をやるかは漠然としていたという。「せっかくデザイナーなんだからデザインの力で何か支援ができればなと考えていました。ただ、本当にそういうことが求められているのかという不安もあったんです。」

被災地の実情も手探りな中で、2016年6月に東京で開催したキックオフイベントが大きなきっかけになったという。「とても多くの方が集まってくださり、クリエイティブで支援するたくさんの具体的なアイデアが出ました。そこで、デザインでの支援もやっていいんだという自信が持てたと思います。」と佐藤さんは振り返る。

「プロジェクトを進めていく上で、参加してくれているメンバーには積極的に表に出るようにしてもらい、当事者意識と責任感を持ってもらえるように意識しています。」プロダクトのデザインはもちろんだが、こういったプロジェクトの進め方、モチベーションを保つこともグッドデザイン賞の受賞を支えている。

被災した建物の屋根を覆っていたブルーシートを再利用して作られたブルーシードバッグ。1つ3900円で販売され、売上の20%を寄付。これまでに100万円近くが復興支援団体へ届けられた。

「今回の受賞は熊本へのエールだと受け取っています。まだまだ県外の方が想いを寄せてくれているということがとてもうれしいですし、勇気をいただいています。震災前よりももっとパワーアップした街にするために、熊本にいる素晴らしいクリエイターたちと、新しいことをやっていきたいと思います。」

東日本大震災の5年後に起きた熊本地震では、SNSやスマートフォンの普及により、WEBサイト上での情報発信はより活発であった。中でも多くの関心を集めていた阿蘇神社の映像を制作した中島昌彦さんは、改めて映像の可能性を実感したと語る。

震災まで東京でテレビ番組制作の仕事をされていた阿蘇出身の中島さん。ご自身やご両親、そして祖父母も阿蘇神社で挙式をするなど、その縁は深い。

東京で働いていた中島さんは、お父さんから阿蘇の実家にゲストハウスを開業したいという相談を受け、震災の数日前に帰省して被災した。「阿蘇は震度6弱で、すごく揺れましたが、建物倒壊などはそれほどありませんでした、自宅も無事で。次の日に阿蘇神社が全壊していてるのを見た時は愕然としました。」

2016年6月に撮影した阿蘇神社の写真。すぐ隣の時計屋さんの時計がひとつも落ちていなかったというエピソードも手伝い、阿蘇神社が身代わりになってくれたと阿蘇の人たちは口を揃える。

「最初は自分のFacebookで状況を発信していましたが、この現状をちゃんと発信した方が関心も寄付も集まるのではと思い、数日後に阿蘇神社さんへ映像を作らせてもらえないか相談にいきました。阿蘇神社は約2300年歴史のある神社で、神事を守り抜くことがとにかく第一優先でした。SNSやホームページもなかったので、阿蘇神社の方々は情報発信をしていくことに躊躇されていました。話し合いを続けなんとか納得していただき、5月の連休明けに撮影を行い、5月下旬に最初の映像を公式Facebookで公開しました。」

最初の映像は瞬く間に全国に広がり、たくさんの応援メッセージが集まったという。「日本中から“がんばってくださいの嵐”をいただき、阿蘇神社に関わるものはみんな励まされました。映像はたくさんの情報を詰め込めるので、とても効果的だったと思います。」現場の状況やニーズがわかりづらいタイミングで、現状を細やかに映し出す映像の力は大きい。

「やっぱり震災は悲しい出来事ですから、風化は当たり前というか。前を向くことに夢中になり、震災のことを忘れられるのはいいことかなと思っています。観てくださる人も忙しいので、なるべく短めで勇気をもらえるような編集を心がけました。僕は現場にいて細かい情報もキャッチできるので、マスメディアのニュースの種になるものを発信していきたいなと思っています。」

映像制作のためにキヤノン、DJI JAPANなどの企業から機材を提供していただいているという。企業が被災地に対してできることはまだまだありそうだ。

「これから阿蘇神社は、約7年かけて復旧作業を進めていきます。今も宮大工さんの言葉を残しながら、復旧作業を撮りためています。長編のドキュメンタリー作品を視野に入れながら、映像を撮影・配信していければと思っています。

家や物が失われたとしても、人間のクリエイティビティは失われない。むしろ増大するとさえ、お二人の話を聞くと感じてしまう。佐藤さんも中島さんも、何か情報を発信するスキルのある人は、災害が起こった際にはどんどんやったほうがいいと口を揃える。災害時には情報もひとつのライフラインなのだ。これからも、お二人の勇気づけるクリエイティブに注目をしていきたい。

いまできること取材班
文章・撮影:柳瀬武彦

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