現地のいまを知る

「自分の家」という気持ちが、快適で楽しい避難所づくりの原動力に

2016.09.13

益城町役場から東へ車で5分ほどの場所にある益城中央小学校。体育館は8月18日まで、避難所として使用されていた。
避難住民によってきちんと自主運営されている、お手本にしてほしいような避難所です。リーダーとなっているひとりの女性の存在が大きい」と支援団体の人に教えてもらい、7月下旬、取材へ向かった。

体育館へ入ってすぐ、これまで見てきた避難所との違いに驚いた。玄関には靴や備品がキレイに並べられ、受付が設けられている。そのテーブルの上には花が飾られていた

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整理整頓された玄関

さらに中へ入ると、ズラリと並んだ段ボールベッドの仕切りカーテンは、ほとんどが開けられたまま。全体がよく見通せる。一角には子どもたち用のスペースや、お茶や食事ができるスペースもあった

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仕事などで外出している人が多かったが、段ボールベッドのカーテンはほとんどが開いていた。右側にあるのが喫茶スペース。ここでお茶をするのが楽しみのひとつという入所者も多い

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子どもたちから要望があり、設置したという学習スペース

これまで見てきた避難所には、「不便な生活をおくっている」という空気感があったように思う。居住スペースのカーテンは閉められたままで、静かな雰囲気に包まれていた。しかし、ここで感じたのは、「暮らしの改善に努めている」という明るい空気感だった。

支援団体の人が話していた「リーダー的存在の女性」に会うことができた。吉村静代さん、平成4年に地域おこしの団体を立ち上げ、益城町と住民のためにさまざまな取り組みを行ってきた人物だ。とはいえ、当の本人は「私がこの避難所の代表というわけではありません」と笑う。驚いたことに、この避難所では特に役割分担などは決められていないという。

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まちづくりをはじめ、さまざまな活動に取り組んできた吉村さん。その縁で県内はもとより、県外にも多くの仲間がおり、たくさんの物資を支援してくれたという

“できる人”が自主的にやる。ただ、それだけです。例えば、掃除は朝ご飯が終わってからみんなで行います。お花は好きな人が生けているんですよ。当番制よりも、自主性を尊重する方が周りも手伝うようになります。その支え合う雰囲気が、この避難所にはあるのです」と吉村さんは教えてくれた。

とはいえ、最初に吉村さんが体育館へ来たときは、避難者はマットや毛布を敷いて雑魚寝している状態だったという。それから吉村さんのアイデアで避難通路をつくることになり、それにより居住スペースが区画分けされ、避難所の整備が進み始めた
「体育館へ来た途端に“ここが私の住む家だ”と心に強く思いました。せっかく数ヶ月は住まなければいけないと覚悟を決めて来たのですから、良い環境じゃないと、私自身がイヤだったんです(笑)。避難所といえば涙のイメージしかなかったので、楽しい避難所にしたいと思いました心が元気にならないと、次のステップに行けませんから」と吉村さんは微笑む。一緒に避難生活をおくっている人は、「大家族で暮らしているみたいです」と笑っていた。仕事へ行く人には「いってらっしゃい」、帰ってきたら「おかえり」と声をかける。夜は大勢で一緒にごはんを食べることも多く、にぎやかになるのだという。

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取材は喫茶スペースにて、避難している方々と一緒に。「失ったものは多いですが、友だちという新しい財産を手にしました」という言葉に、みなさんがうなずいていた

「ここに来て、本当に良かった」。
避難者が口を揃える益城中央小学校体育館の避難所だが、8月18日に閉所することが決定していた。そして、吉村さんはすでに先の生活を見据えていた。
「いずれ仮設住宅へ移らないといけないことは分かっていましたから、仮設住宅での暮らしがどんなものか、気になって仕方がなかったんです。そこで、6月に福島県へ仮設住宅の視察に行きました。入居者を抽選で決めたところと、行政区ごとで決めたところとでは、暮らしている人たちの雰囲気が大きく異なりました。行政区ごとに入居しているところは、コミュニティーがきちんとできていたのです。私たちも前向きに復興していくために、この避難所で仲良くなった人たちは、できるだけ仮設住宅を近くにしてもらうように益城町役場にお願いをしました。私たちはこれからも益城町に住みたい。だから、みんなで一緒に、元気にやっていきたくて」。そんな吉村さんの言葉が心に響いた。

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吉村さんは仮設住宅へ移ってからも連絡が取りやすいようにと、パソコンの使い方を希望者に教えているという。「すでにパソコン4台を手配済みです。仮設住宅の談話室などに置いて、自由に使ってもらえたらと思っています」

地域づくりの経験を積んでいたこと、そして東北の被災地を視察したことで、吉村さんは入所者と一緒に避難所の環境を整え、コミュニティーをつくり、新たに始まる仮設住宅での生活に一手を打つことができた。
いつ何時、災害が起こるかは分からない。
いまできることは、より良い対策を取るためにも、経験と知識を積み重ねておくことだ。そのためにも、被災地で起こったこと、参考にすべき好例にはアンテナを張ってほしい。益城中央小学校体育館の避難所については、フェイスブックにて運営についての詳細が紹介されているので、ぜひチェックを。
そして、実際に被災地を訪れること、支援することも重要な経験となるはずだ

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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