現地のいまを知る

避難所生活の先にある、生活再建期への一歩。日本財団が聞き取り調査を実施

2016.08.08

熊本地震発生から3カ月が過ぎた7月下旬。日本財団の主催により、まだ多くの避難者が残る益城町総合体育館で、「熊本地震避難所在住者調査」が行われた。この調査は、町内の各避難所に8月1日以降も残る全世帯を対象に実施されたもので、今後の生活の見通しや避難所生活の現状などについて、調査員が聞き取りを行った。

_MG_8008

ボランティア調査員が二人一組になり、一世帯ごとにていねいなヒアリングを実施

_MG_8007

5日間の日程で、総合体育館をはじめ、益城町の各避難所で調査が実施された

7月29日(金)から8月2日(火)の5日間にわたり実施された、益城町の避難所在住者調査。
ここでは、のべ80人ほどのボランティアや、町の職員による調査員が、避難者と直接対面し、ヒアリングを行った。主催した日本財団・伊知地さんにお話をうかがうと「今回の調査の目的は、まだ避難所生活を余儀なくされている方が数多くいらっしゃる益城町で、生活の見通しがどこまでできているのかの実態を把握し、今後の支援につなげていくのが狙いです。そのために、住まいのこと、仕事のこと、健康面など、被災者の現状や課題を細かに調べる必要があると考え、調査を企画しました」。

_MG_7865

日本財団の伊知地亮さん

熊本地震で最大震度7を二度にわたり記録した益城町。8月半ばには小学校などに設置された避難所が閉鎖される予定で、それにともない、益城町総合体育館一カ所に避難者が集約されるという。そこだけ話を聞くと、避難者の数もずいぶんと減り、復興が進んできた印象を受ける。
だが、伊知地さんは現状についてこう話す。「避難所運営がいつまでになるか、実際のところ、めどはたっていません。熊本地震では、仮設住宅への入居開始は、東日本大震災のときよりも早かったんですね。ですが、二次募集のあと、230戸ほどが不足していると判明。避難所生活が長引く理由のひとつに、そのことも挙げられるのですが…。不足分の住まいが完成したからといって、すぐに避難所閉鎖とはいかないのです。被災者のなかには、高齢者のひとり暮らしや、体が不自由な方もいらっしゃる。その実態を把握し、生活再建へ向けてどんなケアやサポートが必要なのかを明確化して動かないと、強引に推し進めた先には、孤独死や震災関連死といった問題が起きる可能性もある。避難所は、設置や運営のときも大変ですが、それ以上に、閉鎖するのが容易ではないんです。今回、聞き取り調査をしっかりと行ったうえで、今後の支援策を打ち出す必要があります」。

調査員としてボランティアに参加した人たちの声

_MG_8036

▶福岡県から参加の小幡順子さん(写真右):「避難所に残っていらっしゃる方の中には、ライフラインの復旧がまだで自宅へ戻れない人、仮設住宅への入居がまだ決まっていない人も。今回の聞き取りで、報道では耳に入って来ない、被災者の深刻な現状を知りました」 ▶熊本市から参加の中山友博さん(写真左):「避難所での食生活は、から揚げ、幕の内などコンビニエンスストアの冷たいお弁当ばかりと聞きました。またマナー違反の声も聞かれ、避難所生活の大変さを目の当たりにしました」

_MG_8047

▶福岡県から参加の藤田豪太郎さん(写真左):「避難所生活が長く続き、大変な状況だと思います。中には地震をきっかけに新しいコミュニティができたことをプラスに感じている方もいて、前向きな姿が印象的でした。今回の調査で、お一人お一人、状況が違うこと、そして考え方、要望の違いを感じました」 ▶熊本市から参加の池松美香さん(写真右):「家が全壊し、いまも避難所生活をされている方に話を聞きました。不満の言葉は一切口にせず、感謝の言葉だけを話される姿に胸が熱くなりました」

_MG_8023

福岡県から参加の西濱宏さん(写真左):「仮設住宅への入居が決まった方に話を聞きました。入居は決まったものの、間取りが分からないため、必要な道具をそろえられず、引っ越し準備に数週間からひと月ほどかかりそうだと不安を吐露されました。仮設への引っ越しが容易ではないことが分かりました」

_MG_7996

日本財団のスタッフから説明を受けるボランティア調査員

避難所生活に区切りをつけ、生活再建へ向けて進みだす被災者がいる中で、今回の調査では、避難所に残る世帯の深刻な実態が浮き彫りに。「仮設住宅へ入りたくても入れない人」「自分のペースで引っ越し準備をやりたいが、車がなく避難所を出るのが容易ではない高齢者」「つい最近まで車中泊をしていて、避難所へ移動して来たばかりの人」など、その状況はさまざまだった。避難所の数がゼロになることは、被災者の自立を意味するが、それは容易に解決できる問題ではない。
今回、調査員が拾い上げた声が、被災者のケアやサポートにつながる重要な支援策のきっかけとなる。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

現地のいまを知る