現地のいまを知る

仮設住宅での生活期。必要となる新たな支援

2016.09.15

仮設住宅の整備が進んでいる9月14日の熊本県の発表によると、県内の応急仮設住宅の工事において、整備戸数4,272件に対し、工事完了戸数は3,597件。被害の大きかった益城町では、整備戸数1,562件に対し、工事完了戸数は1,285件となっている。

生活の拠点は整いつつある。しかし、手放しでよろこぶことはできない。長期の復旧・復興期となったいま、新しい問題が見え始めているからだ。益城町役場から東へ15分ほどの場所にある津森仮設団地を取材し、住民自治へのサポート体制が必要であると痛感した

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高台にある津森仮設団地

7月29日、津森仮設団地を訪れた。ここは6月17日に工事が完了、戸数は全73戸ある。自治会長を務めるのは、澤田稔さん。すぐ近くの小谷(おやつ)地区で50年以上暮らし、奥さまは自宅兼店舗で理容店を営んでいたという。
「前震では大きな被害がなかったけん、4月15日は妻はふたりで自宅で寝とりました。そしたら本震が起きて。天井が落ちてきたばってん、幸いにも神棚に天井板が引っかかって、わずかな隙間ができて、私たちは助かりました。神棚がなかったら、私たちはぺしゃんこでした」と、澤田さんは当日の緊迫した状況を教えてくれた。

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自治会長の澤田稔さん

それからは、所有していた農業倉庫で寝泊まりをしていたという澤田さん。津森仮設住居への入居を申し込み、抽選に当たって、新たな生活拠点を確保した。その後、町議らの打診で、自治会長を務めることになったという。
引き受けたばってん、私は自治会に携わった経験はありません。それに、長くこの地に住んどりますが、熊本市の会社に務めとったけん、地元の方との交流は、それほど多くはありませんでした。いろんな地区からも来とらすけん、知らない人が多いんです。ここには73家族が入居していますが、私が知っているのは3、4家族ぐらい誰がどこに住んでいるかも分からない状態なので、役場に入居者名簿がほしいとお願いしとります」。

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昼間は特に人気が無くなるという。「入居者になかなか声もかけられない状態です」と澤田さん

自治会の経験がなく、運営方法についての指導やアドバイスもないまま、自治会長になったという澤田さん。隣保組を作って、組長との連携を図ろうとするも、現時点ではまったく進んでいないという。
「昼間は仕事で、仮設住宅にはあまり人がおりません。集まりもできていない状況です。また、入居しているのは高齢者が多く、お手伝いをお願いしたくても頼みづらい入居者名簿がないので、広く声をかけることもできませんし、家族構成も分からないので、何をサポートしていいかも分からん自治会活動や困ったことなどをサポートしてくれたり、相談できる場所があれば助かるとばってん。今は何か問題があっても、役場に対応してもらうのは忙しいからなかなか難しい」。

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集会所としての役割も持つ談話室。最初の集会では50〜60人が集まったが、以降はなかなか集まりができていないという

仮設住宅での生活は、これからしばらく続いていくことになる。心身ともに元気で過ごすためには、快適な生活環境が必須で、そのためには住民自治がしっかりと機能していることが重要となる。だからこそ、住民自治へのサポート体制が必要だと痛感した。

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入居が決まっても、仮設住宅へ生活の拠点を移していない人は多いという。「お風呂とトイレは仮設住宅で済ませ、大半の時間は片付け作業がある自宅で過ごすという人も多い。私もそのひとりです。仮設住宅には、まだ家電もありませんから」と澤田さん

例えば、全国から自治会運営のノウハウがある人を募り、ボランティアで仮設団地の自治を手伝うというシステムを確立してはどうだろうか。地域おこしやまちづくりなどに携わってきた人も、いいかもしれない。経験者にしか分からないこと、伝えられないことが、きっとあるはずだ。それに、仮設団地によっては、高齢者が多くの割合を占めているところもある。若いチカラも必要だ。ソーシャルデザインやコミュニティーづくりについて学んでいる学生も、きっとチカラになれることがあるはずだ。

「“仮設ができて良かった”と思ったばってん、今からがまた大変。まだまだ、これからです」という澤田さんの言葉が、心に刺さった。被災地は、新たな局面を迎えている。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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