現地のいまを知る

学習支援で子どもたちの「いま」と「未来」をサポート

2016.07.27

災害は、それまで“当たり前”だった、たくさんのことを奪っていく子どもたちが勉強する場所や時間も、そのひとつだ。

益城町の中心部から車で約10分、田畑が広がるのどかな場所に、益城中央小学校はある。隣接する木山中学校と、近隣の町立第5保育所が大きな被害を受けたため、現在は園児、中学生も同校舎で過ごしている。
学校での授業は行われているものの、子どもたちの住まいは知人・親戚宅であったり、避難所だったりと、暮らしの状況はさまざま。これまでは普通だった「家で勉強をする」ということが、ままならない。

益城中央小学校の校舎

益城中央小学校の校舎

そんな状況を少しでも改善しようと、活動しているのが『NPOカタリバ』。2001年の設立以来、主に高校生へのキャリア学習支援を行ってきた教育NPOで、東日本大震災が発生した2011年より被災地での放課後学校『コラボ・スクール』を展開している。活動を始めたキッカケは「被災した子どもたちが安心して学べる場をつくることで、これからの東北復興を担うリーダーを育てたい」という想いだ。熊本での活動は5月中旬からスタートし、当初は朝と昼休みに、取材をした6月には昼休みと放課後に、木山中学校の生徒を対象とした学習支援を行っていた。常駐スタッフ2名と、熊本市内の大学生を中心としたボランティアスタッフ30名ほどで活動している。常駐スタッフの井下友梨花さんに、子どもたちの様子を聞いた。

『NPOカタリバ』の井下友梨花さん

『NPOカタリバ』の井下友梨花さん

「当初、子どもたちは地震のことを話題にすることがなく、そのことには触れたくないという雰囲気を感じました。少し落ち着きがなかったようにも思います。ですが、最近は少しずつ地震のことが話題にのぼるように。自分の状況を話せるようになってきたようです。現段階では、学習支援によって学力的な成果を出すことより、勉強を通してストレスの緩和や、通常の心持ちを取り戻してもらうことを重視しています。震災直後に比べ、子どもたちは笑顔が増え、心も開いてきたように思います」。

放課後の教室では、自習をメインとした学習支援が行われていた。子どもたちは分からない問題などを、気軽にボランティアスタッフへ質問。その様子に、“先生と生徒”というよりは、“先輩と後輩”のような親近感を覚えた
「親や先生と子どもの関係は“縦”です。一方で、『NPOカタリバ』は“斜めの関係性”を大事にしています。生徒とボランティアスタッフは年齢が近いので、“お兄ちゃん”“お姉ちゃん”的な存在ですね。言いたい事は言い合う、そんな対話の関係を大事にしています」と井下さん。今後は受験指導にも力を入れ、避難所や仮設住宅の学習スペースの整備にも取り組んで行きたいと、展望を教えてくれた。

指導の様子。時にはニックネームで呼ぶなど、フレンドリーな雰囲気

指導の様子。時にはニックネームで呼ぶなど、フレンドリーな雰囲気

指導するボランティアスタッフ

指導するボランティアスタッフ

被災地を復興させ、次の世代へバトンタッチする義務が、私たち大人にはあるはずだ。そして、さらにすばらしい場所へと育てて行くのは、きっと今の子どもたちだろう。学習支援によって子どもたちの心をケアすること、そして学びの時間を確保することは、「被災地の未来を創ること」そのものだと感じた。

この日、初めて『コラボ・スクール』活動に参加した大学生の泉田悠馬さん、益城中央小学校、木山中学校の卒業生でもある。「まさか自分の母校がこんなことになるとは思ってもみませんでした。実際に来て思ったことは、子どもたちが思っていたよりも活発だったということ。正直、元気がないのかなと思っていました。離れたところから見てイメージしていたことと、実際に来てから見たことでは、大きな違いがあります。だからこそ、全国の人たちにこの状況を見てほしい、知ってほしいと思います」

この日が初参加だった大学生の泉田悠馬さんは、益城中央小学校、木山中学校の卒業生。「子どもたちは元気がないかなと思っていましたが、とても活発。外から見て抱くイメージと、実際に来て見ることには、大きな違いがあると感じました。たくさんの人に今の状況を見てほしい、知ってほしいと思います」

カタリバが開設した『熊本地震子ども応援募金』では、安心して勉強できる場所を失ってしまった子どもたちを、「学習機会」と「居場所」の提供を通してサポートする寄付を募集中。一日も早い、学びの場の復興を祈って。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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