現地のいまを知る

被災地とボランティア、両方に寄り添うHUB(ハブ)支援拠点という考え方

2016.08.03

NPO法人『遠野まごころネット』をご存知だろうか?
平成23年3月11日に発生した東日本大震災で、岩手県沿岸部の被災者を支援するべく結成された団体である。最大の特長は、当初から“長期的な支援”を見据えていたこと、そして拠点の置き方。あえて被災地の中ではなく、車で1時間ほど離れた岩手県遠野市に支援拠点を設置したのだ。「盛岡・花巻・北上・奥州・一関などの東北自動車道や東北新幹線沿いの内陸地域」と「宮古・山田・大槌・釜石・大船渡・陸前高田などの沿岸地域」との中間地点に位置するという地の利を活かし、物や人や情報が集まって行き交うHUB(ハブ)としての役割を担った(※1)のである。

その経験とノウハウが、いま熊本でも生かされている。同NPO法人が運営する『菊池市災害支援ネットワーク菊池市七城町をHUB拠点として、支援活動を展開中だ。コーディネーターの西岡公明さんに話を聞いた。

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東北でも支援活動を行っていた西岡さん

「ここは九州自動車道の植木インターから5kmぐらい離れた場所で、県外からのアクセスも便利。後方支援の基地にベストな立地だと思い、拠点を置きました。あまり報道はされていませんが、菊池市も地震で被害を受けています。そのような中でも、菊池市には私たちの想いに共感をしていただき、協力いただいています」。
事務所があるのは、菊池市が所有する『木の研修施設』内。宿泊設備や自炊設備も備えており、ボランティア参加者は無料で利用できる。さらに、すぐ近くにある温泉施設も入湯無料行政の協力により、参加しやすい環境が整えられているのだ。

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ボランティア参加者の宿泊所は、女性には2段ベッドの相部屋を、男性には大広間を用意

しかし、現状は厳しい。ボランティア参加者が思ったほど集まっていないという。「東北支援の際は被災者のニーズを調査し、それに合わせた活動を行っていましたが、今回は人数が少なく、そこまで細やかな活動ができていません。そこで、いま重点を置いているのは“こどもみらいきゃんぷ”という活動。被災地の子どもたちをこの施設に招待し、プールと温泉に入って、バーベキューを楽しんでもらい、心のケアにつなげています」と西岡さん。被災地から離れ、のびのびと遊べる時間は、子どもたちにとって何よりのリフレッシュタイム。こぼれる笑顔に、西岡さんは活動の大きな意義を感じている。

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施設内にあるプール。「楽しさ」を感じる拠点の雰囲気は、息の長い活動を行っていくうえでも重要なポイントになる

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ある日のこどもみらいきゃんぷの参加者たち

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こども未来キャンプは7月2日からスタートしており、全19回の実施を予定。被害の大きかった益城町、西原村、阿蘇市の小学校に案内をしている

宿泊施設や温泉施設を備えている市町村は数多くあるはずだ。菊池市と『遠野まごころネット』の協力体制は、災害支援の型として、とても重要なものに思えてならない自治体と支援団体が協力して、ボランティアの受け入れ環境を整備し、HUB拠点を確立していく。それは災害に強い地域づくりにつながっていくはずだ。

最後に、西岡さんに「いまできること」を聞いた。
「とにかくボランティアの手がほしい。私たちの目から見れば、ニーズはまだまだあります。被災された方々から丁寧にお話を聞き、お手伝いできることを明確にしていく“ご用聞き”が必要です。それと、特に地元で立ち上がったNPOへの応援もお願いしたい。地元の力で復興していくことがいちばんだと思います」。

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支援拠点となっている菊池市七城町の『木の研修施設』

ボランティアを受け入れる体制は整っている。
「何をしていいか分からない」「宿泊地を確保できない」といった不安から、一歩が踏み出せなかった人たち。まずは『菊池市災害支援ネットワーク』にお問い合わせを。動き出すのは、いまだ。

※1:内陸地域と沿岸地域は100kmほど離れているため、内陸、または県外から高速道路もしくは新幹線を利用して訪れる人には、日帰りでのボランティア活動は、時間的にも身体的にも負担が大きい。しかし、遠野からであれば沿岸地域まで片道約40km、朝出発してボランティア活動を行い、暗くなる前に遠野に帰ってくることができる。また、遠野市内はライフラインに問題がなく、商店なども営業しており、ボランティア参加者が生活をするうえで不自由なく過ごすことができ、さらに宿泊所も用意したことで参加しやすい環境が整い、多くのボランティアが集うに至ったのである。現在も同NPOは、まちづくりなど多岐にわたり、被災地と遠野市を支援し続けている。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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