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隠れた被災地だった御船町に、感謝と感動を届けた復興祭

2016.10.31

熊本地震からちょうど半年が過ぎた10月16日。この日、上益城郡御船町(かみましきぐんみふねまち)では、震災後初の復興プロジェクトとして、「がんばろう!御船!~心に響け~感動祭」が開催された。この町は、このたびの地震で甚大な被害を受けた益城町の隣に位置し、県内でも被害が大きかった地域だ。しかしながら、報道で取り上げられることはほとんどなく、“隠れた被災地”として、いまもなお、震災の爪痕が町中に残っている。
そんな中で実施されたこの復興祭は、商工会、観光協会、文化協会、婦人会、ライオンズクラブ、大学など、さまざまな団体が一丸となり企画された、町としても初の試みだ。

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メイン会場となった御船川河川敷では、朝10時から夜21時までさまざまなイベントが繰り広げられ、多くの観客でにぎわった

 

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「御船ギネス」に挑戦したカッパ巻き。総勢227名が参加し、90mのカッパ巻が完成。町のギネス記録に無事、認定!

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祭りのフィナーレでは、町民が作った約1200個の三角灯篭と、「みずあかり」が会場をやさしく照らす中、70社協賛の花火も夜空をうつくしく染めた

よさこいで御船町に元気を届けたい! その思いが会場をつつんだ日

雨の予報を見事にくつがえし、秋晴れの中での開催となったお祭り当日。メイン会場とサブ会場に分かれた2つの会場では、商工会主催のイベントのほか、飲食や物販ブースの出店、よさこいチームの演舞、みずあかり点灯、花火大会など、終日さまざまなイベントが企画され、大盛り上がりの一日となった。
県内外から集まったよさこいチームは、37団体、総勢約500名。元気いっぱいのパフォーマンスで、会場を盛り上げる中、ホスト役を務めたのが、御船町を拠点に活動する「小巻組」。そのメンバーのひとり、丸山美奈子さんに話を聞いた。

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よさこい37チームのホスト役を務めた地元・御船町の「小巻組」のステージ。見るものを魅了する、その力強い演舞に多くの拍手が沸き起こった

地震直後、報道各社が被害の大きかった益城町や南阿蘇村の現状を伝える中、御船町も混乱を極めていた。当然、小巻組のメンバーらも被災し、これまで毎週のように行っていた練習は中断。そのとき手を差し伸べてくれたのが、近隣地域をはじめ、他県に住むよさこいの仲間たちだったそうだ。
「“隠れた被災地”といわれたこの町に、多くの仲間が避難物資を届けてくれ、温かく支援してくれました。なかには、『よさこいで御船町を元気にしたい、御船町に踊りにいきたい』といってくれた仲間もいましたね。ですが当時、町全体が自粛ムードでしたから。すぐに実現というわけにはいきませんでした」。
地震から時間だけが経過していき、数カ月が経っても避難所での生活を余儀なくされる人がいる現状。「こんなときだからこそ、よさこいの元気と笑顔がこの町には必要だと感じました」と話す丸山さん。積極的に各団体へ働きかけを行い、ようやく整った本日の舞台。よさこいで笑顔の輪を伝染させたいという、丸山さんたち小巻組は、これからも被災地にたくさんの元気を届けてくれるだろう。

震災直前の4月に発足したばかりの「平成音大よさこいチーム」の初舞台

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総勢15名のメンバーのうち、5名が参加した「平成音大よさこいチーム」。ありったけの思いを込め、初舞台をふんだ

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平成音大よさこいチームの松岡さん、讃井さん、永松さん、水町さん、久保山さん。ステージ終了後の弾ける笑顔に達成感がみなぎっていた

緊張の面持ちでよさこいの初舞台に臨んだのは、同町にキャンパスを構える平成音楽大学「平成音大よさこいチーム」のメンバーたち。校舎の8割が被害を受け、いまもプレハブの仮設校舎で授業が行われているそうだ。
実はこのチーム、今年の4月に発足したばかり。さあこれから盛り上がっていこう、というときに被災し、活動ができないままの状態のところに、この復興祭の話が舞い込んだ。わずか2週間の練習で参加を決意。「まだ正式なチーム名もありませんが、今日は御船町の復興祭。この町が少しでも盛り上がっていくために、せいいっぱい笑顔を届けたい」と副リーダーの松岡さん。自分たちでオリジナルの曲をつくり、参加するという夢こそかなわなかったが、たった2週間の練習で、堂々たるステージに臨んた彼女たちの初舞台は、きっと多くの町民の記憶に残ったはずだ。

「がんばろう!御船!~心に響け~感動祭」の思い出フォト

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心に響け感動祭の実行委員長を務めた永本さん。「地震から半年が経ち、今日はオール御船で迎えた、復興へ向かう大事な一歩。今日を迎えられたことに感謝し、地震で経験したことを次世代にもつなげていきたいです」

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震災直後から長期にわたってボランティア活動をおこなってきた一般社団法人「TSUNAGARI」(宮城県)の代表・勝又さん(左)。写真は、感謝状授与のあと感謝の言葉を述べる藤木町長。同団体の支援活動は、186日間にも及んだそうだ

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「TSUNAGARI」のボランティア活動に参加していた地元の高校生・渡邊さん。「震災後、町はブルーシート一色になり、家にいるのもこわくなり、ボランティア活動に参加するようになりました。活動を通してたくさんのつながりができました」

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御船町在住の若手を中心に活動する「しあわせ日和」のブースでは、御船復興Tシャツ(4色展開)とトートバッグを販売。益金は町の復興に当てられる。購入についての問い合わせは、御船町観光協会(TEL096-200-3965)へ

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三角灯篭づくりのワークショップに参加していた渡邊さん親子と、田代さん。「地震後は遊び場もなくなっていたので、今日は子どもたちと一緒に参加できてうれしいです」

この日、御船町のイベント会場には、たくさんの住民たちの笑顔がかがやいていた。地震から半年が経ち、まだ復旧・復興の道のりは遠いかもしれない。だが、これまで各々で動いてきた団体が力を合わせ、オール御船で臨んで実現した初のお祭り。そこには、町民たちの復興への意気込みが感じられた。「自分たちで前に進む」、その思いこそ、この町を震災前よりもっと元気にする、原動力となるだろう。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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