現地のいまを知る

全国からの応援を励みに、災害復旧をめざす「阿蘇神社」のいま

2017.04.26

昨年4月の熊本地震から一年。「阿蘇神社」(阿蘇市一の宮町)のシンボルでもあった楼門(国指定重要文化財)が完全に倒壊した姿は、まだ記憶にあたらしい。昨年8月から徐々に復旧工事がスタートしている神社の近況をうかがうべく、約一年ぶりに現地を訪れた。

昨年6月に訪問した際の「楼門」の姿

 

復旧工事に向けて、シートで完全に覆われた楼門(今年3月末撮影)

案内してくれたのは、権禰宜の池浦秀隆さん。大きく倒壊した楼門は、シートですっぽりと覆われ、安全対策上の理由から、中の様子を見ることはできなかった。池浦さんによると、現在は倒壊した部材を一つひとつ運び出し、どこのパーツなのか判定と記録を行っている段階だそうだ。楼門の奥にあった拝殿(同じく全壊)は、昨年11月に解体工事が実施され、その姿はすっかりなくなり更地に。その代わり、これまで拝殿の奥にあった3つの神殿が姿を現し、神社内の光景が一年前に比べ、ずいぶん様変わりして見えた。
3つ並んだ神殿をこうやってはっきりと見られる機会は、地震がなければなかったことですからね。とても貴重だと思います」。この日も雨の中、次々と参拝客が訪れ、静かに手を合わせていた。

「阿蘇神社」権禰宜の池浦秀隆さん

写真左が「一の神殿」、右奥が「二の神殿」。写真からは確認できないが、この2つの神殿の間に「三の神殿」が並ぶ。いずれも部分解体修理の予定

阿蘇神社の災害復旧工事は、重要文化財である建造物6棟(3つの神殿、楼門、神幸門、還御門)は、国県市の補助による工事のため、総事業費(概算)9億3000万円の95%が公費でまかなわれる。すでに第1期工事がスタートし、この工事は平成34年度まで続く見込みだ。
一方、拝殿・翼廊・神饌所など、その他の建造物については、自費で修復しなければならず、その予算は(概算)8億円。この復旧工事は、「熊本地震復旧寄附金制度」の対象事業として実施されることが決まり、寄附金を募集中だという。その目標額は4億円。平成32年1月末まで3年間にわたり、寄附金を受け付ける。なお、寄附金は税制上の優遇措置が受けられるため、詳しくは神社のホームページで確認を。

全国から届いた千羽鶴やメッセージも多数飾られていた

現状の課題について池浦さんは、「神社という場所は、自然神をまつるところ。神社にとって、災害復旧がどうあるべきか、多くの方にどう理解を得るか、といった点で、モデルケースがなく、復旧工事を進めるにあたっても慎重にならざるを得ませんね。まずは、現状を知っていただくこと。そのために正しく情報を発信していくことが大事だと感じています」と話す。
国の文化財であり、神をまつる場でもある阿蘇神社の災害復旧には、まだ課題が多く残されている。とはいえ、神社の文化的な役割を果たしていくためにも、お祭りを絶やさずやっていくことが重要であり、古来より続いてきた農耕祭事も地震の影響がある中、しっかりと守り継がれている。
地震直後に比べると、阿蘇方面の道路事情も少しずつ改善され、県外や海外からの観光客の姿も見かけるようになった。それに伴い、昨年11月から駐車場の一角にガイドの待機所が設けられ、阿蘇神社の被害状況や周辺の観光などについて、ボランティアガイドが案内をおこなっているそうだ。

阿蘇神社でボランティアガイドを務めている「阿蘇ジオパークガイド協会」の会長・児玉さん(右)と佐藤さん。毎日10時~15時の間で担当のガイドが待機中

楼門前の駐車場の一角。この案内板が目印

災害復旧工事が始まって間もない阿蘇神社。同じ神社内に、国指定重要文化財の復旧と、自費事業による復旧が混在していることで課題も多いというが、これまで地元の人の心のよりどころであり、阿蘇観光の人気スポットでもあった神社が、災害から復旧していく姿は、阿蘇に暮らす人だけでなく、阿蘇を愛するすべての人たちに明るい話題となる。引き続き、支援の輪が全国に広がることを願いたい。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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