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住民参加の復興まちづくり。「くまもと新町古町復興プロジェクト」が視察報告会×フューチャーミーティングを開催

2017.09.20

「ジョンソン・エンド・ジョンソン」と「日本財団」の支援を受け、住民参加の復興まちづくりに取り組んでいる「くまもと新町古町復興プロジェクト」。同プロジェクトが活動をおこなっている古町と新町の2つの地区は、約400年前に加藤清正公が熊本城を築いたときにできた城下町で、町屋が並ぶ風情ある町並みが多くの県民に愛されている魅力的なエリアである。

城下町の風情を残す新町古町地区

昨年4月に発生した熊本地震では、300棟ほどあった町屋の約9割が被害を受けたそうだ。町屋の保存や存続の課題を残しているこの地区で、地震からの復興をバックアップする目的で立ち上がったのが、このプロジェクトだ。

熊本地震では多くの町屋が被害を受けた

7月中旬、プロジェクトのメンバーが、宮城県石巻市・滋賀県長浜市・京都府京都市・広島県尾道市を視察。それを受け、自分たちの目で見て、肌で感じ、学んできたことを、今後の町づくりに活かそうと、9月初旬、地域住民を交えた視察報告会と意見交換会がおこなわれた。

会場となった五福公民館には、地域住民ら多くの参加者が集まった

「視察報告会×フューチャーミーティング」と題した意見交換会

宮城県石巻市での視察について、報告をおこなった事務局長の吉野さん。
「視察の中で、『町をひらく、人をひらく、空間をひらく、外とつながる、町をつくる人をつくる』という印象的なことばに出合いました。新町と古町の復興に取り組むうえで大事なのは、町に興味関心を持ってもらうこと。そのための情報発信や仲間づくりの必要性を強く感じました」。

宮城県石巻市での視察報告をおこなった吉野さん

滋賀県長浜市での視察について、報告をおこなった三浦さん。
「普段は、古町地区の町案内人として活動をしています。その観点から視察をしたなかで、同じ城下町であり、古い建物が有効活用されているなど、いくつかの共通点が見えてくるのと同時に、長浜市においては30年という長い町づくりの実績があり、行政と民間が一緒に取り組んでいることや、町づくりの拠点をしっかりと持っていることなど、相違点もありました。今後は見えてきた課題に取り組みながら、町案内人としてできることをしっかりとやっていきたい」。

滋賀県長浜市での視察報告をおこなった三浦さん

京都府京都市での視察について、報告をおこなった宮本さん。
『城下町を活かした魅力あるビジネスが成功するためのヒント』を探るため、京都市を訪問してきました。海外からの観光客が増え、町屋を活かしたゲストハウスが年々増加している現状や、スターバックスコーヒーやエルメスなど有名店の町屋活用事例、地元銀行が町屋ローンをつくりサポートする体制など、京都市の現状に刺激を受けました。今回の視察をヒントに、私たちも城下町ということを武器に、まだまだやれることはあると感じました。町屋を活用しながら、城下町のイメージである古い町並みや商い、人情味を発展させて、新しい城下町をつくっていければと思います」。

京都府京都市での視察報告をおこなった宮本さん

広島県尾道市での視察について、報告をおこなった田上さん。
「尾道では、空き家再生プロジェクトの視察をおこないました。そこでは、建築・環境・コミュニティ・観光・アートという5つの柱で活動をされていました。他のエリアの視察でもそうですが、全体を通してアートを活用した取り組みが印象的でした。6年ほど前から私も熊本県内のアートの活性化やアーティスト支援団体を立ち上げる取り組みをおこなっています。われわれの地区でもアートの力を引き出しながら、町づくりに活かしていければと思います」。

広島県尾道市での視察報告をおこなった田上さん

今回の視察で見えてきた、復興町づくりにおける7つのテーマ

視察報告会のあと実施されたフューチャーミーティングでは、地域住民らも交え、熱い意見交換会が繰り広げられた。

意見を述べる参加者ら

くまもと新町古町復興プロジェクトの支援コーディネーターを務める山本さんの話では、今回の視察を受け、見えてきたのは7つの視点だという。その7つが、どんな町づくりをしていくかという「ビジョン」、復興に関わる「人づくり」、地域にある「資源の活用」、その他に「内外とのコラボ」、「アートの力」、「事業の仕組みや資金調達」、「組織のあり方」。

このテーマは、古町新町地区に限らず、全国各地の町づくりにおいて、重要なキーワードといえるだろう。

今回のプロジェクトの支援をおこなっている山本さん

参加者からの声を7つの視点ごとにわけたホワイトボード。熱い意見であふれている

最後に、ミーティングを終えて、プロジェクト事務局長の吉野さんに話を聞いた。
「地震から1年5カ月が経つなか、僕らのプロジェクトもさまざまな活動をおこなってきました。最初は思うようにものごとが進まず、すごく苦しいスタートでした。その時にいつもメンバーと言っていたのが、『未来のことを話したいね』ということ。今日は、これからの新町古町の未来について、皆さんと話をできたことがうれしかったです。活動はこれからがはじまり。皆さんと仲間になって、地震前よりも発展するような、新しい町づくり、面白い町づくりをしていきたいですね」と、意気込みが返ってきた。

今後、復興プロジェクトでは、9月21日夜に勉強会、11月12日復興音楽会、11月23日日本財団主催のクロージングフォーラムが予定されている。

今回のプロジェクトに関わっているメンバー

復興には欠かせない、人の力。ここ新町古町地区には、城下町としての誇りを持ち、そして自分たちのふるさとを愛するたくさんの人々がいる。復興プロジェクトとして、まだ始まったばかりのこの取り組みが、新町古町地区をこれまで以上に魅力的な町にしていくに違いない。

いまできること取材班
文章:稲積清子
撮影:長谷和仁

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