現地のいまを知る

モデルにしたい支援のカタチ。竹田ベースキャンプ①

2016.08.15

5月1日、大分県竹田市に、ひとつの支援中継基地が誕生した。
南阿蘇支援ボランティア 竹田ベースキャンプ』(以下、竹田ベースキャンプ)
7月31日には閉所してしまったが、その意義と成果は非常に大きく、これからの被災地支援のために、そして今後起こりうる災害への対策のために、ぜひ全国の人たちに、この画期的な取り組みを知っておいていただきたい

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竹田ベースキャンプの建物は旧萩町役場。取り壊し予定のため使用されていなかったところを一時利用して拠点に

『竹田ベースキャンプ』の拠点は熊本県との県境近く。2005年に竹田市と合併した旧萩町の役場跡を利用していた。運営は、27団体で構成された『南阿蘇支援ボランティア 竹田ベースキャンプ運営協議会』、会長・事務長・運営総括を竹田市社会福祉協議会(以下、竹田市社協)が務めていた。ここにひとつ、画期的な点がある。竹田市社協が、他地域、しかも県外地域の支援活動のためのベースキャンプの設立・運営に尽力したということだ。

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毎朝行われる朝礼の様子。竹田市社協、民生委員、ボランティア連絡協議会など、さまざまな団体から運営スタッフが参加していた。なお、南阿蘇村でのボランティア活動時間をできるだけ長く確保するために、運営スタッフは毎朝6時台から集合し、準備。7時に受付を開始して、7時30分には南阿蘇村へ向けてボランティア参加者の第一陣を送り出す

社会福祉協議会とは通常、それぞれの都道府県、市町村で、地域の人々が住み慣れた町で安心して生活することができる「福祉のまちづくり」の実現を目指し、さまざまな活動を行う民間組織である。熊本地震の被害は竹田市にもおよんでおり、竹田市と竹田市社協は17ヶ所に避難所を設置するなど地域住民の安全を守るための活動を展開していた13日間で受け入れた避難者はのべ665世帯以上、1,114人以上にのぼるという。全ての避難所が閉鎖されたのは4月28日、本来であれば再び竹田市での活動に注力するところだが、竹田市社協は行政区域を越えたエリア(県外)の支援をすることを決めたのだ。

その時の状況について、竹田市社協の事務局長で『竹田ベースキャンプ』事務長を務める児玉誠三さんに話を聞いた。
「当時、大分方面から被害が甚大だった熊本県南阿蘇村へ向かう場合、竹田市と隣接の高森町を経由していくルートしかないという状況で、人・物資の支援は緊急を要していました。また、竹田市は平成24年九州北部豪雨による水害の際に、ボランティアを受け入れたことで災害支援の経験値を持っていたこと、そして阿蘇支援の前線基地となることに多くの団体から熱心な要請があり、協力してもらえる団体も多数あったことで“私たちがやらなければいけない!”という気持ちになっていました」と振り返る。避難所を閉鎖した4月28日の午後には『竹田ベースキャンプ』の第1回運営委員会を開催。その迅速な対応にも驚きだ。

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『竹田ベースキャンプ』の事務長・児玉誠三さん

そして、この画期的な取り組みは、大きな成果へとつながっていく。
「約1万世帯が暮らす竹田市で、のべ1,991人のボランティアを受け入れました。参加者の内訳は、県内:県外の割合が4:6、県外者は災害ボランティアの経験者が多く、東京・京都・名古屋・岡山・広島・山口・福岡・愛媛など41都道府県にまたがります」と竹田市社協の水野匡也さん。まさに全国から人を集め、数多くのボランティアを南阿蘇村へ送ることができたのだ。

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「“また来たい”と言って、リピーターになるボランティア参加者の方が多いですね」と水野匡也さん

多くの人が集った理由は、さまざまあるが、今回は特に大きなポイントとなった2点を挙げておきたい。
ひとつは“HUB(ハブ)”という役割だ。これは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災で、岩手県沿岸部の被災者を支援するべく結成されたNPO法人『遠野まごころネット』が行った支援方法のひとつ。当初から“長期的な支援”を見据え、あえて被災地の中ではなく、車で1時間ほど離れた岩手県遠野市に支援拠点を設置したのである。今回、竹田市社協は『遠野まごころネット』からのアドバイスも受け、『竹田ベースキャンプ』の設立や運営に臨んだという。
南阿蘇村と『竹田ベースキャンプ』は、車で1時間ほど離れた距離。参加者は『竹田ベースキャンプ』から用意された送迎車で移動し、ボランティア活動に参加。帰りも送迎があるので、行き帰りの車中で十分な休養を取ることができる土地勘がない人、山道の運転に不慣れな人も安心だ。さらに、竹田市は比較的被害が少ないため生活するのにも不便さがなく、無料宿泊所が用意されているので宿泊先や費用面を心配する必要がない

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南阿蘇村から帰ってきたボランティア参加者。左のバスが送迎車

もうひとつの理由は、地域の熱心な協力。例えば、『竹田ベースキャンプ』には毎日、地域の方からの差し入れが寄せられていた。さらに、ボランティア参加者には近隣地域179店舗で利用できるクーポン券が配布(1日1枚、300円分)され、ボランティア参加者ワッペンを提携する温泉施設で見せると入浴料が割引になるサービスも地域経済の活性化と参加者の経済的な支援の両方を満たす、みんなに嬉しいアイデアだ。

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クーポン券は8月31日まで利用できるので、再度ボランティアに参加したくなるキッカケのひとつにも

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ボランティア活動後の温泉は格別。参加者の気持ちを考えた、地域ぐるみの応援だ

ボランティアを集めるためには、呼びかけだけでは限界がある。やはりアイデアや戦略が必要だということを、『竹田ベースキャンプ』を取材して痛感した。ボランティア参加者が多ければ多いほど、支援の手は広く届く。復興は加速する。長期的な支援が必要だからこそ、ボランティアの受け入れ側も、長期にわたって来てもらえる方法も今一度考えていく必要があるのではないだろうか。状況は刻々と変わっているはずだ。
そして参加者も、ボランティアセンターをはじめとした、さまざまなボランティアの受け入れ先に巡ってみてはどうだろう。それぞれで運営のやり方や活動内容、参加者へのサポート内容は異なるはず。その目で見て、体験して、いま必要なことを確かめてほしい

次回は竹田ベースキャンプの1日に密着取材。
たくさんの工夫と心遣いにあふれた運営方法について紹介する。

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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