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モデルにしたい支援のカタチ。竹田ベースキャンプ②

2016.08.18

8月15日の記事『モデルにしたい支援のカタチ。竹田ベースキャンプ①』の続きとして、今回は南阿蘇支援ボランティア 竹田ベースキャンプ』(以下、竹田ベースキャンプ)の1日を紹介。その運営にはさまざまな工夫があり、すべてはボランティア活動を円滑に行うため、そしてボランティア参加者に“また来たい”と思ってもらうためのものだった。

朝6時30分。竹田市の旧萩町役場を利用した『竹田ベースキャンプ』には、すでに運営スタッフが集まっていた。竹田市社会福祉協議会や竹田市民生委員児童委員協議会、竹田市ボランティア連絡協議会など、さまざまな団体がボランティアで運営を行っており、始めて参加するというスタッフが毎日数名はいるのだとか。毎朝7時に必ずミーティングを行い、業務の細かな説明を行われる

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初めて参加するスタッフのために、毎朝のミーティングでは運営について丁寧な説明が行われる

その後、ボランティア参加者の受付をスタート。建物入口に並んでもらい、時間になったら事務所へ誘導。名前確認、資料渡しなどが段取りよく進められる。「どれだけ早く受付業務を終了できるか、やりながら改善し、工夫してきました」と竹田市社会福祉協議会の水野匡也さん。試行錯誤しながら、たどり着いたのが現在のカタチなのだという。

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参加者を誘導する『竹田ベースキャンプ』事務長の児玉誠三さん。右側の壁にはワッペンの貼り方や注意事項などが貼り出されており、受付を待つ間に参加者が確認できるようになっている

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屋内に入ると、流れ作業で名前の確認、ワッペンや受付表のは配布などが行われる

それから、ボランティア参加者は用意されたペットボトル飲料などを受け取り、送迎車へ。車が満員になったら、南阿蘇村役場へ向けて出発だ。この日、第1陣の出発は7時半。その迅速な対応に驚いた

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用意された飲料水や飴など。手書きポップに、温かいもてなしの気持ちを感じる

この出発の際に、名物となっているものがある。運営スタッフによる“お見送り”だ。出発する送迎車を、たくさんの運営スタッフが「いってらっしゃい!」の声とともに手を振って見送るというもの。「参加者の皆様にとても喜んでいただいています。“元気づけられた”“勇気づけられた”という声を多くいただきました。ボランティア参加者の方々にも不安はあります。それを少しでも解消できているのであれば、うれしいですね」と水野さんは微笑む。

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『竹田ベースキャンプ』名物のお見送り。送迎車の中の参加者も笑顔で手を振っていた

約1時間、山道を車で走ると『南阿蘇村ボランティアセンター』へ到着。出発前に『竹田ベースキャンプ』から送り出した人数を連絡することで、到着までの間にマッチングの準備が進行していた。時間を無駄にしない連携プレーである

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南阿蘇村ボランティアセンターでのマッチングの様子

その後、ボランティア参加者は活動内容ごとにグループ分けされ、それぞれの活動場所へ移動する。取材班は家屋の片付けを担当した後藤さんたちのグループに同行した。後藤さんは今回、5人でボランティア活動に参加。みなさん、竹田市の教職員だという。活動場所は、『南阿蘇村ボランティアセンター』から車で10分ほどの場所にある商店兼住まい。お手伝いは、廃棄する家具などを処分場へと運ぶ作業だった。

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被災家屋で廃棄する家具などを運び出すボランティア参加者たち

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「2012年の九州北部豪雨のときにたくさんの方に助けていただいたので、何かお手伝いをしたいと思いました」と、参加のキッカケを教えてくれた後藤さん

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ボランティアへの参加は5回目という方も。「熊本県は隣県ですから、つながりがあります。何かしたいと思って、参加しました。南阿蘇村へひとりで行くのは大変ですが、『竹田ベースキャンプ』があることで、とても助かっています」

活動は夕方4時前まで行われた。終了後、『竹田ベースキャンプ』への帰路につく。約1時間の移動時間は、疲れた身体を休めるのにちょうどいい時間だ。到着すると、運営スタッフからの「お疲れ様。どうぞ!」の声とともに、冷たいおしぼりと飲み物の差し入れが。この日はスイカも用意されていた。温かい出迎えに、ボランティア参加者の表情もほぐれる。このときにボランティアクーポン券も配布され(1日1枚、300円分)、ボランティア参加者に配られるステッカーを温泉施設で見せると割引になるサービスについてもアナウンスされた。「温泉行ってきます」そういって家路につく参加者も多く見かけた。

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この日は地域の方からスイカの差し入れが。「婦人会の方など、地元のいろんな方々が率先して差し入れをしてくださいます。“参加者の方がおいしいと言ってましたよ”と伝えると、また張り切っていろいろと準備してくださって(笑)。参加者の皆さんにとって楽しみのひとつになっています。地域の皆さんが『竹田ベースキャンプ』を支えてくださっているのです」と事務長の児玉さん

なお、『竹田ベースキャンプ』は無料宿泊所も設置している。5月1日〜6月12日までは旧南部中学校体育館を男性用に、その分館を女性用として開放。6月1日〜は竹田市内のアパート1室を女性用に、6月12日〜は旧呉服店を男性用として新たに設置した。

「夜ごはんの時間になると体育館の真ん中にみんなが集まって、“今日はどこに行った?”“出身はどちらですか?”なんて話をしながら、食事したりお酒を飲んだりしているようです。いつの間にかコミュニティーができていて、驚きましたこれはすごく大事なことで、ここが中継基地だからできたことだと思います。被災地で長期に活動をすると、メンタル面がとても疲労します。だからこそ、気持ちをリセットできる時間を設けることがとても重要なのです」と『竹田ベースキャンプ』事務長であり竹田市社会福祉協議会局長の児玉誠三さんは、ボランティア活動以外の時間の過ごし方の重要性を指摘する。

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『竹田ベースキャンプ』事務長の児玉誠三さん

『竹田ベースキャンプ』の1日を取材して強く感じたのは、被災地へはもちろんのこと、ボランティアへ参加する人たちへも寄り添う気持ちがとても大きいということだった。それが、さまざまな“おもてなし”につながっていた。

「参加者の中には、これまで数多くのボランティア活動に参加してきた、いわば熟練の人たちも多くいらっしゃいました。その方々から“こんなもてなしは初めて。とてもありがたい”と言っていただきました。また参加したい、そう思っていただけるために、全力でサポートをしています」と事務長の児玉さんは目を輝かせる。

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児玉さんと親しげに談笑するボランティア参加者。温かい空気が、この中継基地には満ちあふれており、リピーターが多いというのもうなずける

ある参加者は、「『竹田ベースキャンプ』のおかげで、ボランティアへ参加する1歩が踏み出せた」と話してくれた。しかし、残念ながら7月31日で『竹田ベースキャンプ』は閉所となった。高齢化が顕著な竹田市、残念ながら運営を引き継いでくれるNPOなどの団体が見つからなかったせっかくの好例も、次につながらなければもったいない。全国の人たちに知っていただき、次につなげていくことが重要だ
なお、竹田市社会福祉協議会では、スタッフを南阿蘇村に派遣し、引き続き支援を継続していくという。

ボランティアに参加すること、その受け入れ団体をサポートすること、そして効果的だった支援方法を共有すること。長期的な支援のためには、この3つを忘れてはならない

いまできること取材班
文章:高野正通
撮影:長谷和仁

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