現地のいまを知る

アーティストが見た益城町と、いまできること

2016.11.18

秋晴れの益城町に、美しい歌声とアコーディオンの音色が響いた。

11月5日(土)、益城町の惣領地区にある『益城復興市場・屋台村』。その特設ステージで、東京在住のシンガーソングライター・半崎美子さんと、福岡在住のアコーディオン奏者・新井武人さんによる無料ライブが行われた。

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この日は4曲を披露。美しい歌声と音色に手拍子が重なり、すばらしいライブとなった

小さな子どもから年配の方まで幅広い人たちが集い、屋台の飲食店のご主人も心地良いリズムに体を揺らしている。笑顔を見せる人、そして時おり涙を見せる人も。半崎さんと新井さんの音楽は、確実に被災地へ温もりを届けていた。

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北海道出身、現在は東京を拠点に全国でライブ活動を続けている半崎美子さん

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ソロで、バンドで、セッションで。アコーディオンと音楽の可能性を広げ続けている新井武人さん。楽しくて温かいライブと人柄にファンも多い

ライブ後、地域の人たちと気さくに交流を楽しむ2人。
その表情はアーティストのそれではなく、気の良いお兄ちゃん、お姉ちゃんといった感じだ。
「何で来てくれたんですか?」
小さな女の子が質問をした。
「みんなに会いに来たの。音楽でみんなが楽しくなってくれるかなと思って」と新井さん。その言葉に、すべての気持ちが凝縮されているように思えた。
「私も歌うのが好き!」
「音楽が好きで、器楽部に入っています」
子どもたちの笑顔が弾けた。

全国を舞台に活動している新井さん。熊本との縁も深く、何度もライブを行って来た。今年4月には、御船町にある平成音楽大学の講師に就任。それからすぐに熊本地震が発生した。とはいえ、新井さんはこれからも“今まで通り”熊本でのライブ活動を行っていくことが大事だと考えている。
「僕の音楽の原点は“楽しさ”。音楽の楽しさをたくさんの人に届けたいという気持ちで演奏しています。災害が起こると、最初の段階で大切なのは水や食糧などです。音楽での支援は、生活がある程度落ち着いてからだと思います。でも、音楽の出番は必ず来ます。東日本大震災で被災した東北地域にも何回か行って実感しました。だから最初は福岡でチャリティーイベントを行って支援金を贈りつつ、熊本の友人に連絡して“行けそうな雰囲気になったら行くよ”と伝えていました。震災があったからライブに行くのではなく、今までと同じように熊本に音楽の楽しさを届けに行くという気持ちで活動しています」と思いを語ってくれた。

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昨年、あるライブで一緒になったという新井さんと半崎さん。「半崎さんの歌や彼女の音楽へ取り組む姿勢を見て、いま熊本に来てほしいアーティストだと思ったんです」と新井さん。熊本で地元誌編集者をしている友人に協力してもらい、『益城復興市場・屋台村』でのライブが実現した

「特別なことをしている」と思えば、心にも生活にも負担がのしかかってくるだろう。筆者は以前から新井さんのライブを何度も見ているが、今日のライブもいつも通りの自然体で、楽しさあふれるものだった。被災地だからと身構えるのではなく、普段やっていることを、自分にできることをやるそんな心持ちが息の長い支援を実現するためには重要だと感じた

一方、半崎さんは今回初めて益城町を訪れたという。実際に被災地を見て、言葉が出なかったと語る。
東京では、熊本地震の話題はだいぶ減っています。でも、今回自分の目で被災地を見て、改めて何かお手伝いがしたいと思いました。私は歌う時、心の新陳代謝を促すというか、泣いたり、笑ったり、安心したりと、聴く人が感情を表に出せたり、自分が抱えていた感情に気付くキッカケになればいいなと思っています。いろんな気持ちを抱えている被災地の方々にとって、心の新陳代謝はきっと必要なはず。私の歌が少しでも役に立てばと思います」。

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「必ずまた歌いに来ます!」と半崎さん

最後に、2人に「いまできること」を聞いてみた。
「まずは知ること。今の状況を知って、それから行動に移すことが大事。私も実際に来てみて、いろんなことを知りました。東京に戻ったら、そのことを発信していきたいと思います」と半崎さん。
「僕も伝えることが大事だと思います。“知る”で終わるのではなく、“伝える”ことが大事」と新井さん。

地震発生から7ヵ月が過ぎ、報道もどんどん減っている現在。
実は、『益城復興市場・屋台村』は開店してしばらくは盛況が続いたが、最近ではお客さんが減っているというそういったことも、現地を訪れたり、詳しい人に話を聞いてみないと分からない被災地の状況は、少しずつ変化している

『益城復興市場・屋台村』の活性化にも貢献した今回のライブ。地域の人を元気にすることはもちろん、人がこの場所へ来ることのキッカケを作るという面でも、大きな意味があったはずだ。

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町の大動脈となっている県道28号沿いにある『益城復興市場・屋台村』。休業中のスーパー駐車場に張った大型テントに、熊本地震で被災した同町の飲食店や商店をはじめとした15店舗、21業者が入居し、営業している

誰もが、いまできること。それは、知って、伝えること
支援の輪をいま一度強く、広くしていくために、まずはそこから始めてほしい。

 

いまできること取材班
文章・撮影:高野正通

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