
「勉強にはなるけど、病院薬剤師の給料って安すぎじゃない?給料を上げる方法ってないのかな?」
病院薬剤師として働いていると、大変な割に安月給なのはすごく気になりますよね。
「仕事内容に魅力を感じて病院薬剤師を選んだけれど、調剤やドラッグストアに就職した同期の給料を聞いて、正直ガッカリしている」こんな方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、『病院薬剤師の給料は安すぎるのかとその理由』について説明します。
さらに、病院薬剤師の給料を上げる方法も取り上げているので、ぜひ参考にしてください!
病院薬剤師の平均年収は521.7万円!これって安すぎ?
マイナビ薬剤師の調査によると、病院薬剤師の平均年収は521.7万円。
この数値は、北海道から沖縄までのフルタイムで働く病院薬剤師(平均年齢42.1歳)を対象にした調査によるものです。
この平均年収を見て「そんなに悪くないかも?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、この平均年収は薬剤主任や薬剤部長クラスまで含めた金額。
役職のない方や、若手の病院薬剤師の方はもっと年収が安いのが普通です。
医師や看護師と一緒にチームで働けるけれど、責任も重い病院薬剤師。
実際は「責任のわりに給料が安い」「このままの給料で家族を養うのは厳しい」という方も珍しくありません。
病院薬剤師の仕事量や責任を考えると、この521.7万円の平均年収は決して充分な金額では無いといえるでしょう。
病院薬剤師の給料安すぎ問題が嘘じゃない理由!割に合わない?
ここからは、病院薬剤師の給料は本当に安いのかを以下の2点から検証します。
- 薬剤師の他業種との比較
- 薬剤師以外の大卒者との比較
実際の平均年収を比較することで、病院薬剤師の給料の実態をより客観的に把握できます。
という事で、さっそく見ていきましょう!
病院薬剤師は他職種の薬剤師と比較すると年収が低いから
結論から言うと、病院薬剤師の給料は他業種の薬剤師に比べて安いです。
まずは、病院薬剤師の平均年収を、他業種の薬剤師と比較してみましょう。
業種別の薬剤師平均年収は、以下のとおりです。
病院薬剤師 | 521.7万円 (401.4~542.2万円) |
調剤薬局 | 428.7~596.3万円 |
ドラッグストア | 446.5~594.3万円 |
製薬会社 | 431.1~664.4万円 |
データ引用:マイナビ薬剤師
ちなみに厚生労働省の調査によると、薬剤師全体での平均年収は582.5万円。
厚生労働省の調査結果からも、病院薬剤師は、他の業種と比べて年収が低いことが分かります。
製薬会社の薬剤師は、研究職・学術職・管理薬剤師・MRなど。
数値の達成目標が求められますが、業績が給与に反映されるため高年収を得やすい傾向があります。
また、調剤薬局やドラッグストアの平均年収も、病院薬剤師より高い結果となりました。
調剤薬局やドラッグストアは、「薬剤師がいないと店舗を運営できない」「調剤併設ドラッグストアの増加により薬剤師の不足が続いている」などの理由から、年収が高めとなっています。
とはいえ、業種全体の平均値では、40代や50代の人も含めた年収なのでちょっと分かりづらいですよね。
そこで、業界大手の調剤薬局とドラッグストアの初任給を見てみましょう。
基本月額(基本給) | 手当 | |
アイン薬局・全国転勤あり | 195,000円 | 薬剤師手当 55,000円
社員区分手当 100,000円 |
アイン薬局・自宅通勤 | 195,000円 | 薬剤師手当 55,000円
社員区分手当 15,000円 |
ツルハドラッグ
(東京・神奈川、北海道の一部地域を除く) |
230,000円 | 薬剤師手当 60,000円
店舗薬剤師手当 10,000円 薬剤師地区手当 35,000円 |
データ出典:アイン薬局募集要項・ツルハドラッグ募集要項
病院薬剤師と違って夜勤手当はありませんが、薬剤師手当などの諸手当が手厚いことが分かります。
同じくらいの基本給でも、手当が違えば病院薬剤師と他業種の手取り給料は大きく異なるんです。
結果として病院薬剤師と他の職種では大きく年収に差がつき、「病院薬剤師の給料は安すぎる」状況となります。
6年大学卒の病院薬剤師の年収が大卒の平均年収よりも大幅に低いから
薬剤師どうしで比べると病院薬剤師の給料が低いことは分かりましたが、一般的な大卒者と比べた場合はどうでしょうか。
実は、病院薬剤師の給料は他の大卒者に比べても低いんです。
大卒者の正社員の平均年収と病院薬剤師の平均年収を比較した表は、以下のとおりです。
大卒・正社員の平均年収 | 595.8万円 |
病院薬剤師・正社員 | 521.7万円 |
データ出典:令和4年賃金構造基本統計調査・マイナビ薬剤師
両者を比較すると、病院薬剤師の年収は一般の大卒者の年収を74.1万円も下回ることが分かります。
現在の薬学部は6年制。通常の4年制大学卒業者よりも長期間勉強しているわけです。
学費にすると1200万程はかかっていることでしょう。
しかし、2年多く大学で学んでいるにもかかわらず、病院薬剤師の年収は他の大卒者平均を下回ります。
少し乱暴な言い方ですが、長く学んでいるのに給料が安いのは割に合わないですよね。
よって、「病院薬剤師の給料は安すぎる」という説は、決して嘘では無いと言えるでしょう。
病院薬剤師の給料はなぜ安すぎるのか?
当直や休日出勤もあり、責任も重い病院薬剤師。
過酷な業務なのに、なぜその給料は安すぎるのでしょうか。
結論から言うと、以下4点の理由があげられます。
- 薬剤師として経験を積める病院は給料が低くても人が集まるから
- 配置できる管理職薬剤師の数に制限があり昇格しづらいから
- 病院は医師や看護師等有資格者が多いから
- 非営利目的の医療機関はドラッグストアや製薬会社に勝てないから
大変な仕事なのに、給料が安いのはやり切れませんよね。
というわけで、順番に見ていきましょう!
薬剤師として経験を積める病院は給料が低くても人が集まるから
病院でしか得られないスキルや経験が多いため、高年収を提示しなくても病院には薬剤師が集まります。
2022年度の新卒薬剤師が、病院に就職した割合は以下のとおりです。
東京薬科大学 | 男子:15.8%
女子:28.1% |
岐阜薬科大学 | 25% |
明治薬科大学 | 男子:14.8%
女子:28.2% |
名城大学 | 41.3% |
データ出典:東京薬科大学・岐阜薬科大学・明治薬科大学・名城大学
大学により差はありますが、毎年多くの新卒薬剤師が病院に就職していることが分かります。
病院薬剤師を目指す理由は、以下のような例があげられます。
- 最新の治療法や高度な医療を学べる
- チーム医療の一員として、医師や看護師と肩を並べて働ける
- 患者さんとの距離が近く、患者さんの役に立ちたい
- 症例研究や学会発表をしやすい
また、「医療について学びたい」という考えから大学病院や国立病院にレジデントとして入る方もいますが、その給料は激安。
病院薬剤師の平均年収を下げる1つの理由となっています。
病院薬剤師を目指す方は給料よりも「学び」や「経験」、「やりがい」を重視する方が多いため、給料が安くても人気の職場となっているのです。
配置できる管理職薬剤師の数に制限があり昇格しづらいから
病院は管理職のポストが少なく、昇格しづらいことも給料が上がらない理由の1つです。
多くの店舗を持つドラッグストアや調剤薬局では、店舗の数だけ薬局長・管理薬剤師のポストがあります。
しかし、病院薬剤師の場合、薬局長のポストはたった1つ。
長く勤めている薬局長がいる限り、トップになることは難しいでしょう。
外来診療部門、入院部門それぞれに管理職として薬剤師のトップを置く病院もありますが、病院次第。
どちらにせよ、ポストがあかないと自分がそのポストに付くことは難しいですよね。
結果として、病院は管理職のポスト自体が少ないため、昇格による給料アップが難しいと言えるでしょう。
病院は医師や看護師等有資格者が多いから
病院は医師・看護師といった他の有資格者をたくさん抱えているため、薬剤師の待遇は二の次になりがちです。
医師・看護師の不足は病院の運営に直接影響するため、薬剤師の不足よりも重大な問題となります。
病院の採用区分も「医師」「看護師」「コメディカル」と、薬剤師は他の医療技術職とひとくくりにされることも珍しくありません。
先ほど説明したように、薬剤師は病院でしか学べない知識を求めて給料が安くても人が集まります。
しかし、医師・看護師は人員を病院どうしで取り合うため、高い給料を提示しないと人が集まらないんです。
なお、2022年10月に看護師の給料を月12,000円引き上げるための「看護職員処遇改善評価料」が新設されましたが、薬剤師向けの処遇改善措置は設けられていません。
薬剤師のおかげで取れる加算もありますが、それ以上に病院では医師・看護師の確保に力やお金を入れざるを得ないのが現状です。
非営利目的の医療機関はドラッグストアや製薬会社に勝てないから
医療法により営利目的での病院開設は禁止されているため、病院のお金儲けには制限があります。
医療法人の病院が行える業務は厚生労働省によって指定されており、許可なしにその他の業務で利益を得ると、行政指導の対象になってしまうんです。
医療法人の病院が行える業務の例を、いくつかご紹介します。
- 医療関係者の養成または再教育
- 保健衛生に関する業務(薬局・居宅生活支援・リハビリテーションなど)
- 有料老人ホームの設置
介護分野やリハビリ施設を手がける病院は、既定の範囲内で事業を運営しています。
また、2022年に日本病院協会が行った調査によると、医業利益が赤字の病院は全体の74.4%。
新型コロナウイルス関連の補助金により赤字は補填されたものの、多くの病院が補助金なしでは赤字です。
病院の年間医業利益の平均は4年連続赤字で、2021年度の1病院あたりの赤字額は5億2960万円。
病院経営がいかに厳しいものであるか分かります。
年間5億もの赤字が続いていたら、一般企業なら経営が成り立ちません。
結果として、病院は経営状況が厳しいため、営利企業のドラッグストアや製薬会社に比べて薬剤師の待遇が悪いのも仕方ないと言えるでしょう。
病院薬剤師の給料はどうやったら上がるのか?
給料が上がらない理由が分かったとしても、給料が上がらないのは困ってしまいますよね。
結論から言うと、病院薬剤師の給料を上げる方法は主に4つです。
- 認定薬剤師・専門薬剤師など新たな資格を取得する
- 今の病院で出世できるように積極的に仕事をする
- 夜勤手当や当直手当・残業代で給料を増やす
- 薬剤師転職に強いサイトを利用して年収のいい病院へ転職する
やりがいがあっても、給料が上がらないと生活できない方もいることでしょう。
というわけで、一緒に見ていきましょう!
認定薬剤師・専門薬剤師など新たな資格を取得する
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取ると、給料が上がりやすくなります。
そこで、病院薬剤師におすすめの資格を下に紹介します。
<認定薬剤師>
- 日病薬病院薬学認定薬剤師
- 認定実務実習指導薬剤師
<専門薬剤師>
- がん薬物療法認定薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
- 精神科薬物療法認定薬剤師
- 妊婦・授乳婦専門薬剤師
- HIV感染症薬物療法認定薬剤師
- 栄養サポートチーム(NST)専門療法士
専門薬剤師の資格は調剤薬局やドラッグストアでは取得しづらいため、他の業種の薬剤師と差をつけやすいポイントです。
将来のために、症例を集めやすい病院薬剤師の方は資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
資格取得が直接の給与アップにつながらないこともありますが、正確な知識とスキルは医療チームのなかで重宝されます。
しかし、資格取得には、実務経験だけでなく症例報告や研修会・学会への参加が求められます。
忙しさの中で確実に資格を取れるよう、計画的に勉強を進めましょう。
今の病院で出世できるように積極的に仕事をする
今の病院で出世できるよう、積極的に仕事をするのも1つの方法です。
先ほど説明したように、管理職ポストが限られるため、病院内での出世は簡単ではありません。
しかし、積極的に仕事をして成果を出すことで、ボーナスの査定で良い評価が得られたり、少しずつ出世への道が見えてきたりします。
病院薬剤師の場合、以下の取り組みが高評価につながります。
- 病院の収入向上につながる取り組み
- 病院のコスト削減につながる取り組み
病院のために自分ができることが無いか、考えてみましょう。
また、国公立病院は定期昇給が手厚いため、長く勤めるとかなりの基本給に達する方も珍しくありません。
出世や定期昇給により見込まれる給料を試算し、将来のキャリアプランを考えることをおすすめします。
夜勤手当や当直手当・残業代で給料を増やす
夜勤や当直に入る回数を増やす、残業を積極的に引き受けることで、時間外手当を増やす方法もあります。
救急搬送・急変患者の薬剤払い出し、パート職員が帰った後の残務処理、薬学部実習生の対応、在庫管理など、病院薬剤師は定時に仕事が終わらないことも珍しくありません。
時間外手当を増やしたい場合は、通常業務に支障のない範囲で残業や当直・夜勤の代わりを引き受けてみてはいかがでしょうか。
薬剤師転職に強いサイトを利用して年収のいい病院へ転職する
今の病院に見切りをつけ、年収のいい病院に転職して給料を上げる方法もあります。
定期昇給の良い国公立病院、病院ごとに待遇が異なる民間病院など、病院薬剤師の給料は病院によって大きな差があります。
住宅手当や独身寮の充実した病院を選べば、生活コストを大幅に下げることも可能です。
また、病院の待遇は病院の規模や種類によって差があり、一般的には都市部よりも地方の方がよい待遇を得やすい傾向があります。
細かな待遇や病院の給与体系・手当の仕組みを自分で調べるのは難しいため、専任のエージェントのサポートを受けられる薬剤師転職サイトを利用することをおすすめします。
おすすめの薬剤師転職に強いサイトは、以下の3つです。
- 薬キャリ
- マイナビ薬剤師
- ヤクマッチ
どのサイトも薬剤師は無料で利用でき、以下のようなサービスを受けられます。
- 個人に合った求人の検索
- 年収交渉
- 履歴書の添削・面接対策
- 入職日の調整
「資格手当がつく病院がいい」「引っ越してもいいから、とにかく給料のいい病院がいい」「サービス残業がなく、残業代が1分単位でつく病院がいい」など、人によって転職先に求める内容は異なります。
薬剤師転職に強い転職サイトは薬剤師転職のスペシャリストが対応するため、自分で病院の求人票を1つずつチェックするよりも効率よく、条件の良い病院を探せます。
転職を考える際は、薬剤師転職に強い転職サイトを必ず利用しましょう。
まとめ
今回は『病院薬剤師の給料は安すぎるのかとその理由・対処法』についてお話ししました。
病院薬剤師は学びややりがいの多い素晴らしい仕事ですが、平均年収は521.7万円。
薬剤師の他業種や大卒者の平均年収に届かない、安すぎる年収です。
病院薬剤師の給料が上がらない理由は、以下をご紹介しました。
- 薬剤師として経験を積める病院は給料が低くても人が集まるから
- 配置できる管理職薬剤師の数に制限があり昇格しづらいから
- 病院は医師や看護師等有資格者が多いから
- 非営利目的の医療機関はドラッグストアや製薬会社に勝てないから
病院の特徴を考えると仕方ない面もありますが、やりきれない気持ちは残りますよね。
「このままの給料ではやっていけない」と思った場合、病院薬剤師の給料を上げる方法は以下をご紹介しました。
- 認定薬剤師・専門薬剤師など新たな資格を取得する
- 今の病院で出世できるように積極的に仕事をする
- 夜勤手当や当直手当・残業代で給料を増やす
- 薬剤師転職に強いサイトを利用して年収のいい病院へ転職する
このままでは給料が上がる見込みが無い場合は、今回ご紹介した何かしらの手段の実行をおすすめします。
転職を考えるなら、今回ご紹介した転職サイトの利用をぜひ検討してみてください!